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第50話 決着

「はい。すでに殿下は異能に関してご存じでしょう。あの光りは、血の盟約を交した魔女が、あなたが王位に就くことを認めたという証拠でございます」

「認めた」

「はい。この国は、大戦を乗り切るため、この国の南にある湖に住む魔女と取り引きをいたしました。彼女の力を受け継ぐ代わりに、この国を平和なものにする。それが契約条件でした。それに見合わないものには、たとえ王族であっても異能は、魔女の力は発動しないことも、その条件の中に含まれていました。貴方様が看破されたとおり、シャルル殿下に王の器はなかった。だから異能がその身に宿ることはなかったように、です」

 そう言ってパウロは、未だ倒れているシャルルを見る。その目には、同情の色は一切なかった。

 初めから切り捨てられる者。そう言っているようで、俺の心はざわっとざわめく。だが、今はまだパウロから聞き出すべきことがある。

「俺はどうなのだ?」

 今まで異能は身体強化だけ発動されていたらしい。これに関して、この事件を裏から手引きした王宮神官長はどう考えているのか。

「はい。貴方様には初めから、取り引きをした王と同格の能力が内在しておりました。しかし、貴方様の政治手腕では、この国を平和に導くことに不安があった。いや、下手をすること、今回私が起こしたことのように、この国を二分する事態に陥る。それを魔女は見抜かれておりました。ゆえに、あなたの力は身体強化を残して出て来れなくなっていたのです」

「なっ」

 俺は思わずぐっと拳を握る。もしも王宮神官長が引き金を引かなければ、自分がこの国を乱す大罪人になっていたというのか。しかし、それは廃嫡騒動からここまでのことで、よく解っている。自分には視点が足りなかったのだ。

「ラオドールの不正だけが悪いというわけではないんだな」

 俺は唇を噛み締めながら、そう確認する。

「ええ。政治は清いだけでは駄目なのです。人間は、いえ、どんな生物でも、あまりに清らかな場所では生きていけません。それは、ここにいる者たちと旅する中で、ご理解いただけたのではないでしょうか」

 パウロはそこでじっと俺を見る。

 俺はパウロを見て、次にシャルルを見た。

 確かに、この世界は綺麗事だけでは生きていけないのだ。

 自分が逃げたら丸く解決するなんていう、そんな生易しい考えさえ通用しないほどに。

「こいつらからは学んでいない。お前らからだよ」

 だから、俺はそう訂正していた。それにパウロは驚くかと思ったが、満足げに笑っている。

 まったく、この王宮神官長は食えない存在だ。

「お前の後任はいるのか?」

 そんなパウロに、俺はそう問い掛ける。もちろん、この問いにも驚いた様子は見せなかった。

「そこにおられる、修道女様がよろしいでしょう」

「えっ?」

「私?」

 そして、逆に俺が驚かされる。マリナは自分を指差してきょとんとしている。

「私の目は誤魔化せませんよ。あなたは、この国の王が取り引きした魔女の系譜に連なる方ですね」

 パウロはそんなマリナに向けて、確信を込めて訊ねる。

「系譜に連なるなんて、そんな恐れ多いことはないわ。ちょっとお世話になっただけよ」

 マリナはふんっと鼻を鳴らしてパウロを睨む。しかし、全く知らない仲ではないということだ。

「南の湖って、あの濁っている湖か」

 俺は魔女について知りたくて、マリナにそう確認する。

「ええ。濁っているのはあそこに住む魔女が魔法を仕掛けているからよ。あの奥底に住んでいるんですもの。見えちゃ困るわ」

 マリナは仕方がないわねとばかりに教えてくれるが、これにはパウロの登場に驚かなかったシモンやキキもあんぐりと口を開けている。なんと、あの湖が濁っていたのは、何も土砂が流入しているだけではなかったのだ。どうりで水が湧き出ているのに浄化されないはずである。

「というわけですので、後任には彼女がいます」

 パウロは面白い人たちですねと苦笑して、話を元に戻した。自分が切り捨てられることもまた、騒動の中に織り込み済みだったから、これは問題ない。

「マリナ、承諾できるか?」

 しかし、マリナの意向を無視して決められないと、俺は確認を取る。するとマリナは

「仕方ないじゃない。あなたに出会ってしまったのが運の尽きよ。魔女様のお導きと考えて、納得するしかないわ」

 とひねくれた答えがあった。要するに断ることはないというわけだ。

「ふむ。では、パウロ。王宮に戻る手筈を整えてくれ。沙汰はその後だ」

「解りました」

「アンドレ、先に戻って、ラオドールの不正の証拠を陛下から貰ってきてくれ。ここにシャルルがいることが見逃されているのならば、すでに書類は陛下が用意されているはずだ」

「承知いたしました」

 今までとは違い、騎士団としての振る舞いを見せてアンドレは頷く。

 予想外の形での一気に解決へと向っているが、ここで気を抜くわけにはいかない。俺はまだ倒れているシャルルの元へと向った。すると、すぐにシュリが俺の横に駆けつけてくる。


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