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第49話 王の器

「くっ」

 まさしく、異能が正しく発動された状態だ。それにシャルルは悔しさに唇を噛む。

「ふざけやがって。外道使いが!」

 そして、多くの国で異能者がぶつけられる言葉を俺に向けて吐き出す。

「異能は外道じゃない」

 さすがにそれには俺も言い返す。しかし、シャルルはようやく俺の感情を乱せたのが嬉しいのか、今までに見たことがない、暗い笑みを浮かべる。

「外道だよ。この国は呪われているんだ! 俺が正してやる!」

 シャルルはぐわっと牙を剥くように叫ぶと、再び俺に突っ込んでくる。俺はそれを難なく躱しつつ、このまま何一つ元に戻らないまま別れるしかないのかと、悲しくなっていた。

 王位を譲れいうのならば、俺はシャルルに譲っただろう。そのままいなくなれというのならば、それも承諾した。廃嫡通知を突きつけられ、ほっとしたのは事実だからだ。

 だから、ぎりぎりの段階まで、俺は逃げることしか考えていなかった。

 しかし、事態はそれ以上にややこしくなり、シャルルは俺を恨むばかりで、もう修復不可能な場所にまで来てしまった。

 総ては自分の身に異能があるから。

 この国は、異能に支配されていたから。

 たしかに、この国は呪われているのかもしれない。

 しかし、それを言い訳に逃げていいわけじゃない。

 王族という立場にいる以上、自分のことだけを考えていて済むわけじゃないのだ。

「この国を、守るという立場にあるんだから」

 俺はそう言うと、シャルルの剣を真正面から受け止めた。シャルルは驚いた顔をしたが、チャンスとばかりに剣に力を込める。

「過去に、先祖が魔女と血の盟約を結んだという話を聞いたとき、俺だってびっくりしたしぞっとした」

「ああ。禁忌を犯したんだ」

「でも、その時、それ以外に民を救う方法がないとなれば、俺は、躊躇わずに魔女と取り引きするだろう」

「あ?」

 シャルルは何を言っていやがると、不可解だという顔をする。

「その時、多くの民が死ぬかもしれないという状況だったら、俺は魔女に魂を売ることも厭わないと言っているんだ。シャルル、お前は、少しでも民のことを考えているのか?」

 王位や王族という立場にある以上、それに見合うだけの重責がのし掛かる。そのことを、シャルルはちゃんと考えているのか。

 もしも考えていたら、こうやって俺を殺そうとする以外に取る手段があったはずだ。

 そう、呪われた王族を総て切り捨て、新たに異能を持たない王族による支配を組み立てる。

 簡単な構造改革で、何もかもが丸く収まったはずなのだ。

 それを、シャルルは見落としている。

 今、こうやって対決して、シャルルには決定的に欠けているものがあるのだと気づいた。

 だから、失策が続き、結局は自分に王位が戻ってくることになったのだ。

「お前は、王の器じゃない。俺が次の王だ!」

 俺がそう宣言した時、かっと俺の身体が光り始める。それに驚いたのは、俺もシャルルも同じだ。

「なっ」

 どんっと身体に衝撃が走り、光りは収まった。俺はその衝撃に膝を突く。が、攻撃に備えて剣を手放すことはなかった。しかし、シャルルからの攻撃はない。

「大丈夫?」

 そこで隠れていたマリナが飛び出してきたことで、戦いそのものは終わったのだと気づいた。見ると、シャルルはうつ伏せに倒れている。

「シャ、シャルルは大丈夫なのか?」

 俺は動かないシャルルに、死んでしまったのかと不安になるが

「大丈夫だよ」

 ぴょんっと隠れていた茂みから出てきたキキが確認してくれた。気絶しているだけだという。

「でも、ええっと」

 あの光りは何だったんだと、俺はようやく自分の身体に目を向ける。特に変わった様子はない。しかし、身体の中から何かが湧き上がってくるような感覚がある。

「その問いには私が答えましょう」

「えっ」

 ぶわっと風が起こり、魔法陣が現われたかと思うと、オーロランドに亡命しているはずのパウロが姿を現した。

「パウロ、ど、どうして」

 俺はええっと驚いてしまうが、他のメンバーは驚いた様子はない。むしろ、隠れていた場所から出て来て、平然としている。

「お久しぶりです、レオナール殿下」

 パウロはまだ動揺する俺にそう言って頭を下げる。俺はそれだけでぴしっと姿勢を正していた。やはり、身についた仕草というのは、場面に合わせてすぐに出てくるものであるらしい。

「パウロ、これはどういうことだ?」

 だから、普段は仲間に向けて使わない横柄な言い方も、すぐに出てきた。顔も自然と引き締まり、支配者としての表情になる。


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