第45話 陰謀の裏側
「そういう情報が得られるってことは、もう秘密にはしていないってことよね」
そしてそうシュリに確認してくれた。シュリは大きく頷くと
「ええ。むしろ、異能を持っているかどうかが、ハッブルの王位を継ぐ正統性の証明になるという話が流れているわ。現在の国王陛下が落馬事故から見事に復活されたのも、異能のおかげだという話よ」
町で仕入れてきた情報を教えてくれる。
「えっ。そんな」
しかし、俺には衝撃的な内容が続き、どう反応していいのか解らない。思わず、マリナの手をぎゅっと握り返していた。
「レオが三週間の劣悪な護送から生き残った理由もそれね」
だが、そのマリナがびっくりすることを言う。俺はもう心臓がバクバク鳴っていて、さっき食べたパンを吐き出しそうな勢いだ。
「そう。王族の異能の一番は肉体が強化されることだそうよ。そして、三週間無事に生き残ったレオは、間接的だけど、異能を持っていることを証明したとされているの」
「なっ」
俺はもう口をぱくぱくとさせることしか出来ない。
「ははあ。あれって試されていたわけか。廃嫡騒動を起こすのは勝手だけど、こいつは異能を持ってるぜってことね」
ピーターはすっきりしたという顔をするが、俺はすっきりしない。それに、同じく今の内容が初耳のはずのシモンもマリナも驚いていなくて、どういうことかと戸惑ってしまう。
「ごめんね。あなたに異能があることは解っていたの。ついでに、異能がある王族がいるってことは、きっと何かあるだろうなと思ってたわ」
マリナがごめんねと、俺があまり深刻に受け止めないようにと軽い調子で言う。が、俺はさらなる衝撃を与えられたようなものだ。
「ず、ずっと、なんか、思わせぶりだったのって」
俺はマリナとアンドレを交互に指差しながら、衝撃が収まらない中、必死に確認してしまう。
「うん。何かあるって思ってたから」
「廃嫡騒動そのものが手際良すぎるよ。なのに王子様は生きているし、後からレンジャー部隊送って殺そうとするし、ちょっと杜撰だもんね」
マリナとアンドレが、それぞれに疑う余地しかないじゃんと言ってくれる。
「くう。って、それってラオドールの仕業じゃないよな」
が、衝撃もでかすぎると脳みそは急に冷静になるものらしい。俺ははっと気づいた。
「そうね。ラオドールもまた利用されたってことでしょ」
シュリは政治家ってねちっこいからねえと苦笑している。
「えっ。でも、誰が?」
「それに関しては私が掴んでいるわ。王宮神官長のパウロ。彼、今、オーロランドに亡命中なのよ」
キキが元気よく教えてくれ、俺はますます口をあんぐりと開けるしかないのだった。
結局のところ、俺には異能がある。そしてそのことを自覚しなかったことが、今回の廃嫡騒動の裏側にあるのではということだった。
「レオって本当に自分に異能があるって気づいていないわけ?」
翌朝。タオルで顔を拭きながらピーターが確認してくる。
昨日の情報交換は色々な衝撃を含んでいたが、やはり一番気になるのはこれというわけだ。
「全くないな。っていうか、ピーターは? どうして自分に異能があるって気づいたんだ?」
しかし、俺からすると異能ってどう自覚するものなのと疑問である。寝袋を畳みながら、どうなんですかと率直に訊ねた。
「いや、自覚も何も、勝手に手から炎とか光りとか出たからなあ。小さい頃は自分でコントロール出来なかったね。で、危うく殺されそうになったところをマリナに救われた」
ぷすっと頬を膨らませてピーターが過去を教えてくれる。それに、俺は悪かったと頭をがしがしと撫でた。十七歳という若者であるが、すでに異能で苦労しているわけだ。
「止めろよっ。まあ、異能が忌み嫌われるのは身に染みているってところだな。まさかこの国では王族がその異能を持っているなんて・・・・・・見えねえけど」
ピーターは俺の手を払い除けると、今度はまじまじと見つめてくれる。
「だよなあ。俺も手から炎が出た経験ないし」
俺は寝袋を畳み終え、ふんっと腕に力を込めてみる。が、もりっと力こぶが出来ただけだ。
「おおっ。筋肉が付いてる」
「いや、今それ重要じゃねえから。ってか、こんな生活してたら、普通につくから」
ピーターの冷静なツッコミを受けつつ、俺はまずこの異能問題をどうにかしなきゃなあと溜め息を吐くのだった。




