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第41話 悩み

 泊まることが出来るようになった船宿は、それなりに賑やかな宿だった。

「ここ、大丈夫かな」

 俺はわいわいと賑わう一階部分の酒場に入りつつ、ちょっとドキドキしてしまう。

「大丈夫だよ。吟遊詩人」

「うっ」

 またしてもアンドレの帽子を借りている俺は、からかってくるシモンにむっとしてしまう。

「それに、ここは荷物を運ぶ目的の奴らが多いからな。大丈夫だって」

 シモンはそう言うと、すぐに親父にビールを三つ頼む。

 ちなみにシュリはどこかに出かけてしまい、マリナは修道女なので酒場は遠慮するとやって来なかった。ピーターはそんなマリナに捕まり、今回も夜は酒場に入ることが出来ないでいる。キキは早々にベッドでいびきを掻いていた。

「おう。随分とバラエティー豊かなメンツだな」

 親父は俺たちに酒を配りながら、どういう関係だよと不思議そうだ。

「旅の途中で連れ合いになったんだよ。吟遊詩人さんはあちこち歩くのが仕事だし、こっちの男は傭兵をやっている。俺は大工だ」

 シモンが慣れた調子で説明すると

「なるほどねえ。って、あんた。傭兵ってことは、この間まであそこの要塞に詰めていたのか?」

 酒場の親父はアンドレを見てそう訊いてきた。

「いや、俺は呼ばれなかったが、結構な人数が呼ばれたみたいだな」

 アンドレは動揺することなく、あっさりとそう切り返す。

「そうそう。あそこで戦争があるかもって多くの奴が行ったもんだが、結局、何もなくて解散って感じだったらしいよ。あんた、行かなくて正解だな」

「へえ」

 それは初耳の情報で、アンドレはどういうことだろうと顎を擦っている。俺もビールをちびちびと飲みながら首を捻った。

 つい一か月前まで、戦争がすぐに起きるだなんだと話していたのに、これはどういうことだろうか。

「どうしてか、誰かから聞いたかい?」

 シモンはすぐに親父にそう質問をする。

「いや。詳しくは知らねえよ。そもそも、なんで戦争なんだってそこから不思議だったし」

「へえ」

 どうやらこの辺りには、王子様云々という噂は伝わっていなかったようだ。しかし、兵士が通ったり、また物資が要塞に運ばれたことから、何かあるのだろうとは解っていたということらしい。

「なんにせよ、平和が一番だよねえ。ごたごたはごめんだよ」

 親父はそう付け加えて、他のテーブルへと向かった。それに、三人はどういうことだろうと顔を突き合わせる。

「これはもう、一度王宮の情報をちゃんと掴むべきだよ」

 アンドレが俺に向けてそう言う。それに俺も

「まあ、ピリピリとしていないのならば、どこかで情報は得たいかな。あと」

 平和が一番。親父が何気なく口にしたことを、俺も旅を通じて痛感していた。だから、何とか俺たち兄弟のことも平和に解決したいと思っていた。




 この国が平和であるためには、やっぱり政権が安定していなければらない。

 万が一、シャルルがそのまま王太子になるのだとしても、やっぱり、すぐに戦争が起こるような状況にはならないようにしたい。

「それはずっと考えているんだけど、俺が出て行っても殺されるだけだし、悩ましいよなあ」

 二階の部屋に入ってから、どう思うとアンドレたちに意見を求める。彼らは俺のワガママに付き合ってくれているようなものなのだ。今後の方針はしっかり相談すべきだろう。

「王子様が納得する形が一番じゃないの? 俺たちはどこでも生きていけるから、どういう状況になっても大丈夫だし」

 ねっ、とアンドレが部屋に集まっているシモンとマリナ、そしてシュリに向けて同意を求めた。ちなみにキキはまだ爆睡中、ピーターも寝てしまっていた。

「確かにそのとおりよ。最終的に船に乗って遠くに行くってなってもオッケーだし、レオが王宮に戻るってなってもオッケーよ」

 マリナが指で丸を作りながら、にこっと笑ってくれる。

「ううん。王宮に戻ることが可能なのかは解らないけど、ともかく、宰相に関して何とかしたい。それは考えているんだ。たぶん、シャルルが俺を追放しようって思ったのも宰相のラオドールの入れ知恵だろうし、話をややこしくしている大元だと思う」

 俺はあいつだけはぎゃふんと言わせないと気が済まない気分になっていると、正直に打ち明けた。

 ぶっちゃけ、ショックの大部分は信じていた弟のシャルルが先陣切って俺を廃嫡に追い込んだという点だ。それ以外について、旅をしながら考えていくと、ラオドールは許せんという気分になった。


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