表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/53

第35話 無自覚だよ!

「なるほどね。神官長なんて役職だし、不思議能力があったとしても不思議じゃないか。ああ、だから俺には異能力者の扱いを教えなかったのか。自分が不利になるから」

 俺が一人で納得しているので、アンドレは苦笑してしまう。確かに、自分のことに関して洞察力は上手く働かないものなのかもしれない。

「何にせよ、廃嫡問題の裏にあるのがレオの洞察力であることは間違いないわけだ」

 シモンはどうすると、刻一刻と変わりつつある状況も踏まえて相談に入る。宰相がどうしても俺を殺したい理由は、同じく洞察力にあるのだろう。ということは、戦争も止まらないし、責任をレオナールに擦り付けようとするはずだ。

「だろうね。レンジャー部隊なんて寄越したのも、誰かに秘密を漏らされる前にという焦りからだったんだろうし、宰相を何とかしなきゃいけないんじゃない?」

 アンドレもこのまま逃げていいのと俺を見る。しかし、俺は肩を竦めることしか出来ない。

「俺の洞察力が邪魔だって言われても、俺は王宮内の不正を正しく掴んでいるわけじゃない。書類はいくつか跳ね返したが、それだけだぞ」

 だが、俺からすれば、唐突な廃嫡の理由が解ったところで、そこまでのことをしている自覚もなく、また、宰相に食って掛かるだけの証拠も持っていない。やはり逃げる以外に方法はないように思えた。

「そっか。王子様は宰相の弱みを握ってないのか」

 アンドレはもうちょっと危機意識を持っていれば良かったねと、軽く言ってくれる。

「そうなると、逃げる以外にないっていうレオの主張も真っ当だな」

 シモンも、そこから王宮内部を切り崩すのは無理なのかと肩を竦めた。

「悪かったな。何もかも無自覚でよ!」

 そんな反応の二人に、俺はますますむくれるしかない。

「でも、そういう王子様だから、追放されたはずなのに、みんながやっぱり間違いだったかもって思えるのよね」

 そこに、戻って来たマリナがくすくすと笑って付け足してきた。俺は反応に困り、近くにあった枕をぼすぼすと叩くしかない。

「まあ、そうだよな。普通、追放して、しかも廃嫡の決定まで出したんだったら、レオのことを気に掛ける意味はねえよ。もう過去の人で、なんならいなかったくらいのノリになってて普通だし」

 ピーターもそれは同意とマリナの意見に乗っかってくれる。俺はますます枕に八つ当たりだ。

「そう。不可解なのは廃嫡までが早かったってことだよね。いくら宰相の悪巧みとはいえ、そしてシャルルが乗っかったとはいえ、これは不可解だよ。それも、次の後継がシャルルだと確定していたわけじゃないっていうのも妙な話」

 アンドレはどうなっているんだろうと、千里眼でも見通せない事情の部分が解らずに首を傾げる。

「さあな。俺が知るか」

 しかし、俺はこの話題に関して考えたくないのでそっぽを向く。

 廃嫡され、牢屋に放り込まれ、さらにはぼろぼろの状態にされて村まで運ばれた。

 この悔しさに勝るものはなく、また、それにシャルルが全面的に加担しているという事実が、俺の心をとことん頑ななものにする。

 もう二度と、関わり合いたくない!

 両親のこととか、婚約者のこととか、本当は気になることが一杯ある。でも、もう二度と、あんな目には遭いたくない。

「ともかく、明日の朝早くにはこの町を立ちましょう。メルロさんが後は全部処理してくれるって言ってるし」

 俺が何を考えているか、千里眼なんてなくても気づくマリナが、早めに移動しましょうと言ってその場はお開きになったのだった。




 王宮神官長が姿を消したせいで、国境付近の軍事力が減った。それを確認したドロイヤ王国の騎士団長、ドナルドは面白いことが起こっているなと笑ってしまう。

「このまま戦争になっても良かったんだが、廃嫡されたレオナール殿下には、王宮神官長が味方しているってことみたいです」

 リチャードに報告しながらも、おかしな話だと笑ってしまった。

「あそこの宰相は優秀だという話だったが、詰めが甘いな」

 くすくすと笑うドナルドを注意することなく、むしろリチャードも笑いながら話し合いを続けてしまう。ハッブル王国という巨大な国が演じる茶番劇に、乗ってしまったというのも笑えてきた。

「ええ。どうやら廃嫡騒動の真の目的はあの宰相に関わること、みたいですね。そうなると、ますますレオナール殿下を押えることが重要になります」

 ドナルドは如何いたしましょうと、そこでようやく真剣な顔になった。国境付近での小競り合いは続けるとして、他にも手を打つべきではないかというわけだ。

「ああ、もちろん、他の国に掠め取られる前にレオナール殿下をここにお連れせねばならん。どうやらミッドランドもオーロランドも同じ事を考えているようだからな。何とかせねばならん問題だ」

 リチャードは打つ手があるのかとドナルドを見る。

「そうですね。前回の失敗を踏まえると、上手く誘導するのが一番なんでしょうね」

 ドナルドは兵士が全滅させられた地点を自ら捜査している。そこで得た答えは、レオナールと一緒に動いている人間が複数いること。そいつらがなかなかの強敵であるらしいことだ。

「誘導か。力業ではまた同じ結果を生むというわけだな」

「はい。どのみち、レオナール殿下と護衛の者たちは国内を目立たないように移動する以外に、追っ手の手を逃れる方法はありません。他の国が身柄を確保できていない以上、ハッブルから出ていないのも確実です。となれば、どうにかドロイヤ国内に誘導できれば、勝機はあると思います」

 とはいえ、かなりの難問だがと、ドナルドはあれこれと思案することになるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ