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第25話 隣国

 その夜は、最終的に小鳥と鳩の焼き鳥となった。前回好評だった甘ダレと、今回は塩胡椒での味付けの二種類を堪能する。

「ああっ、美味い。鳥サイコー」

 俺は塩胡椒も間違いないよねと、小鳥の丸焼きに齧りつく。

 王宮だったら観賞用の鳥も、この生活では貴重な食料。それに思うところはあるが、美味いものは美味い。

「すっかりワイルドになっちゃって」

 そんな俺をアンドレがからかってくるが、無視だ。

「湖に到着したら、久しぶりに干し魚じゃない魚だな」

 ピーターは鳩に齧り付きながら、魚も美味いのが食べたいぞと訴えてくる。

「あそこって美味しい魚いたっけ?」

 それにシュリが頬に手を当てて首を傾げる。

「泥臭いやつが多いよね」

 マリナは食べた経験があるのか、そんなに美味しくないと主張。

「飯を食いながら別の飯の話をするなよ」

 シモンが呆れるが

「大事だよ」

「うんうん」

「他の味も知りたい」

 マリナ、シュリ、俺に主張されて負けましたと手を挙げる。

「まあいいか。いいのか」

 シモンはここから緊張感が増すはずなのになあと、ご飯に夢中な俺を見て呆れるのだった。




 さて、俺には一切緊張感がなかろうと、周囲の状況は刻一刻と緊張状態になっていた。

「そのうち戦争になるかもしれないだってよ」

「マジかよ」

 王宮内だけでなく、王宮のすぐ傍の町でもこんな噂が囁かれるようになっていた。

「何でもレオナール殿下のご乱心が原因とか」

「俺は弟のシャルル殿下がご乱心だって聞いたけど」

「まあ、どっちにしろ、王子様のワガママってことか」

「困るよねえ」

 そんな話が、民衆の間でちらほらと交されるようになっていたのだった。




「愚かだな」

「ええ」

 そんな状況を把握するオーロランド公国のジョゼフは、隣国のミッドランド連邦国の盟主・トーマス=エディナと会談中だった。こちらはローラから内情を完璧に把握しているため、王子たちが戦争を起こそうとしているという噂が、故意に流されたものだと知っている。だから、余計に冷めた目を向けていた。

「総ては宰相のラオードルの策略だという。それを許してしまった不甲斐なさを国王も痛感しているところだ。そこで、助けを求めるだけでなく、重要な秘密を打ち明けてくれた」

 ジョゼフはただハッブルを助けるだけでなく、大きな利益があるぞとトーマスに囁く。

「ほう。重大な秘密。確かにあそこは大きな力を持つ国ですからね。何があるんです?」

 それに対し、トーマスも何かと戦争をちらつかせるドロイヤ王国と手を組むよりはオーロランド公国と手を組みたいのにで、身を乗り出した。

「異能だよ」

「異能。あの忌避すべき力ですか」

「ああ。かつて、ハッブルは周辺諸国から一気に攻め込まれ、滅亡の危機に陥った。そこで、王族の一人が魔女と取り引きしたそうだ。どういう取り引きだったかまでは明かされていないが、それにより、当時の国王は異能力者となった。それからというもの、王族の中には異能力者が生まれるようになったという」

「なんと」

 過去にあった大戦争、その長期化をもたらしたのが異能だというのに、ハッブルはその異能者と取り引きしていた。これは驚くべき事だ。

「それだけではない。ハッブルの正統な王位継承者は、この救国の祖と同じく異能が扱えることが条件とされているそうだ。しかし、それは今までトップシークレットとされ、国王以外は王宮神官長とその直属の者しか知らない事実だったという」

「ははあ。それは徹底した箝口令ですな。ということは、問題の宰相は」

「それを知らなかったんだろうな。そして、シャルルが王太子になることを認められていないのは」

「異能がないから、ですか。なるほどなるほど」

 随分と解りやすくなりましたと、トーマスは大きく頷いた。普通ならば短期の政変で終わっただろうことが、いつしか他国と戦争するかもしれないという状況になっていることは、実に不可解なことだったのだ。

「レオナール殿下以外にハッブル王国の王位の正統性は認められない。そして、殿下は異能を駆使して生き残っておられる。早く救援して差し上げるべきだろう」

 納得したトーマスに、ジョゼフはここぞとばかりにそう言って決断を促す。トーマスとすれば、ハッブルに恩を売っておくことは利益が大きいので頷く。

「もちろんですとも。ですが、万が一にもレオナール殿下が死去する事態となれば」

「そこは我らの手で、新たな道を探りましょう」

「ええ。そうですね。ハッブルの現在の王妃様はあなたの娘だ」

「ふふっ。話が早くて助かります。ああそうそう、ハッブル流には国后と言うんですよ。これもまた、異能を生んだ魔女に関係するのでしょうね」

「へえ。お隣の国でも王族のしきたりとなると、知らないことが多いものですね」

 と、不穏な空気を含むものの、レオナールは知らないうちに、隣国二カ国の助力を得ることになっていたのだった。


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