ノベルズワールド
初めて描きます
拙いところも多いと思いますが
お読み頂けると嬉しいです
ノベルズワールドというオンラインゲームがある
パソコンゲームとして配信されて以降瞬く間に登録者を増やし
今や人口の100人に1人はプレイしていると言われる超巨大コンテンツだ
剣と魔法とモンスターあふれる世界を自分の身体1つで冒険し、無限の可能性に溢れた世界を巡るファンタジーゲーム
ここまで聞くとありふれた内容に聞こえるが、このゲームには特筆すべき点があった
それは「タイピングマジック」というもの
これは使いたい魔法にあらかじめ設定してある呪文を自分の手でタイピングするというものだ
制限時間は30秒でより早く呪文を完成させた方から発動する
要するにタイピングゲームをそのままMMORPGの世界に取り込んだのだ
ちなみにワードを口に出す音声入力もあるが実際に使用しているプレイヤーは少ない
(恥ずかしいというのが大半だか旭はあまり抵抗が無い)
初めは批判も少なく無かったこの魔法のシステムだが
斬新な攻撃方法、タイピング能力の強化に繋がるなどで注目され始め
いまやノベルズワールドだけでは無く、他のタイトルにも導入され初めて来ている
現在ノベルズワールドは先行αテスト版が配信されており、ユーザーからのフィードバックを行いながらゲームクオリティを上げていっているのが現状である
そして話題のゲームをプレイするユーザーの1人
鶴谷 旭
暗い部屋で黙々とパソコンに頭をもたげている彼女は
忙しなくキーボードを叩いていた
「火よ、槍を象り突き穿て。っと」
素早くブラインドタッチでテキストを打ち込む
エンターキーを押すとノベルズワールドのAIによりテキストが精査されて
その呪文に設定された魔法が発動する
«ジャベリン»
1小節で行われるごく単純な呪文の1つで初手に置ける牽制や速度を求める攻撃の際に使われるポピュラーな魔法だ
呪文が承認されるとゲームの画面では
旭が操作するキャラクターの身体の周りから炎が溢れた
それは段々と身体の右側に集まっていき、見た目は火のままに十字槍の形を取った
続けてキャラクターを操作すると火の槍を握ったキャラクターは見事な足さばきで目の前のスケルトンと呼ばれるモンスターに切迫していき
スケルトンが振りかぶった長剣を槍の柄で受け流し
石突で腹部を殴ってたたらを踏ませると
返す刃で左肩から斬り裂いた
するとスケルトンは骨を断たれて身を崩し、落下した頭部を踏み潰されて絶命した
スケルトンの身体からは黒い煙のような物が吹き出してやがて身体は消え去った
「んーやっぱジャベリンがいまのとこ最速かなぁ。
3秒あれば形成まで持って行けるし、一撃使うと消えちゃうのがネックだけどまぁそんな物よね」
「次は音声入力もやってみよ。火よ、槍を象り突き穿て!」
旭はそう1人ごちるとズレた眼鏡をかけ直し背筋を伸ばした
髪は首で切りそろえて細身の眼鏡をかけ、身体は華奢だか凹凸はあり
少し垂れた目は愛らしさを醸している
彼女は大学の夏休みに入ってからというものしばらくの間
寝ても醒めてもノベルズワールドの世界を堪能していた
「うーんやっぱタイピングより2秒くらい遅いかな」
「さて、レベルアップに必要な経験値はあとどれくらいだったかな」
画面に向き直りステータス画面を開く
キャラクター名:サン
レベル:28/30
タイピングマジック:5/5
装備
頭:なし
腕:マジックサークル(魔法詠唱に必要な杖のようなもの)
身体:月光のローブ«一式»
髪型は旭と同じく肩で揃えた黒髪、但し目は赤く全身を黒を基調とし所々に紫色の装飾をあしらった最上級の装備で包んでいる
サンと言う名前は旭を朝日、太陽と文字ったものをつけた
「んーあとゲージ1本くらいかぁ」
ステータス画面をとじてマップを開きどの辺りで経験値を稼ぐか目星をつける
ノベルズワールドにはファストトラベル昨日があり、訪れた街や世界の所々にある旅人の石碑と呼ばれる水晶で作られた石碑に触れることで
1度訪れた場所に遠く離れた場所からもテレポート出来るようになる
現在解放されているのはプレイヤーが一番最初に訪れる始まりの街
«センディ王国:王都マエキエ»
その北にある工業の街
«センディ王国:北都ミィズ»
東にある観光の街
«センディ王国:東都ミナト»
西にある商業の街
«センディ王国:西都マギヤ»
南にある冒険者の街
«センディ王国:フーリ»
この5箇所だ
いま現在αテスト版のノベルズワールドで解放されている王都の全ての旅人の石碑を解放してある
既にαテスト版ではやることも無くなる勢いでゲームを進めた旭は
今現在レア装備を探す旅をしていた
「そう言えばマエキエの近くにレアボスが沸くってタレコミがあったんだっけ」
ノベルズワールドではクエスト以外にも時折
マップ上にボスが湧くことがある
インスタントモンスターと呼ばれるもので
通常のモンスターより強くソロで倒すには多大な労力を払うが
その分レア装備を落としやすい傾向にあるのだ
「お、月光装備落とすのか!武器欲しいし行ってみよ!」
マップ上で王都マエキエの旅人の石碑を選択しファストトラベルを開始する
画面がロード画面に切り替わりしばらくすると
王都マエキエの旅人の石碑の前にサンが現れる
少し小高い丘から振り向くと整備された街道を行き来するNPC達がいる
その街道の向こうには外堀を水で囲った城壁があり、街道に掛かる橋の上にも人が行き交い
出入口の左右に監視所の衛兵が立っている
「よし、一旦攻略サイトでインスタントドロップの時間見てみるか」
ノベルズワールドを開いたままパソコンの別モニターで攻略サイトを検索する
「あちゃー、4時間後かぁ」
そこには現実の時間で約4時間後にドロップするだろうとの予測が書かれていた
「することも無いし仮眠するかなぁ」
ちらりと画面下の時計を見ると午前3:00を記していた
「うん、ゲームは開いたまま軽くご飯食べて寝よーっと」
旭は画面の前から腰を上げて足元のダンボールからカップ麺を取り出し
台所へお湯を沸かしに部屋を出た
数秒後、一瞬画面に走ったノイズに気づくものはそこにはいなかった




