移動
ヴンシュさんは私たちが来るのを扉の向こうで待っていてこちらをチラッと見ると踵を返して歩き出す。
ここに連れてこられた時は夕方で廊下はオレンジ色に輝いていたがいまはすっかり日が沈み月の光とランプの光が廊下を照らす。
「………」
「………」
「………」
誰も口を開かずただただ足音だけが廊下に響く、長い廊下を渡り階段を下りまた長い廊下を歩く、沢山の扉が並ぶ廊下を抜けると広い庭がある場所に抜ける、暗くてよく見えないが花園なのかな?の中にある道をしばらく歩くと背の高い木に隠れるようにある館のような建物が見えてくる。
「あそこがお前に与えられた屋敷だ、まぁ何年も召喚に失敗してたからあの屋敷をきちんと整備されてるかどうか知らんがな」
ヴンシュさんが吐き捨てるように言う、周りを見渡せばさっきまで整備された花壇はなくなり生垣は伸び放題だし植えられていたであろう花々は手入れされておらず雑草に埋もれながらのびのびと咲いているし、石畳の間からも雑草が生え歩きずらいことこの上ない。
・・・確実に手入れはされてないね。
敷地内に入ると屋敷の窓の明かりがついていて時折人の影がせわしなく動いてるのが見える。
ヴンシュさんは玄関の扉をノックもせずに開くと明かりに照らされた玄関ホールが目に入る、そしてホールの中央でメイドさんたちに指示を出している執事風な男の人がこちらに気づき慌てて近づいてくる。
「リオシュテリアさま!申し訳ございません、屋敷内の清掃がまだ終わっておらず・・・」
「全部はいい、残りは明日にすればいいだろ、聖女の寝室は終わっているんだろ?」
「ええ寝室の方はあらかた終わっております」
「じゃぁ通せ」
ヴンシュさんは執事さんにたんたんと言う、確かに今日はもう遅い、腕時計の時刻を見れば夜の9時を過ぎている、いつもだいたい10時頃には寝てるからさっさと部屋に行きたいですはい。
「承知いたしました、では聖女様をお迎えに・・・」
「ああ、それは必要ない連れてきたからな」
ヴンシュさんが体を横にずらしたので私の姿が執事さんの前に出る。
「・・・・・聖、女、さま?」
うんですよね!