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異世界に希望なんてない  作者: 紅月遥香
始まりに希望なんて望めない
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選ばれるべきではないもの

今日から新しいお話を書いていく作者です。

書くことに少し慣れてきたので異世界ジャンルに挑戦しようと思います。


皆さんは異世界に夢を求めますか?

私はこうやって書くので求めますが実際はどうなんでしょう。

そんなことを思って読んでいただけると嬉しいです。

主人公の描写を大事にしていこうと思います!

では始まりです!

『人生の勝ち組』

その中に含まれる人というのはほんの一握りしかいない。

自分の夢を叶えることができて、幸せな家庭を築くことができて、特に大きな事件がなく、不自由なくこの世を去っていく。そんな人生を送った人を指すのだろう。

しかし、勘違いしてはいけない。彼らだって努力はもちろんしている。いや、普通の人の何十倍努力をしているかもしれない、、、、。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「私も、夏瑠亜(かるあ)とずっと一緒にいたい。お願いします!」

一人の女性が向かいに立つ男性の手を取った。


夜景の綺麗な夜の海辺。

煌薙(きらなぎ) 夏瑠亜と奈良坂 琴葉は今この場で婚約をした。

両者からこぼれ落ちる笑顔。

それと同時に音を上げて煌めき消えていく花火。まるでささやかな祝砲のように。

それは二人の幸せを暗示しているかのように思われるものだった。





煌薙 夏瑠亜は人生の勝ち組の路線を進んでいた。

小さいときからスポーツ万能、容姿も申し分ないもの。

リーダー性や積極性もありクラス、学年の注目の的だった。

勉強はどちらかというと苦手だったが、父と同じ会社に勤めることが夢だったので諦めず必死に努力した。その結果、近所では1番成績の良い高校に、大学は日本の中で3本の指には入るところに入学した。

そして大学を卒業し、親のコネがあるわけでなく、自身の力で父親と同じ会社に採用された。そこで順調な1年を送り、生活が安定してきたところで今日、彼は初恋の相手、奈良坂 琴葉にプロポーズをしたのだった。




その日の夜のこと、、、、、


「ただいまー。」

夏瑠亜は自宅のマンションに帰宅する。彼は一人暮らし。誰もいないが”ただいま”と言ってしまうのは癖である。

琴葉とは花火が終わった後に別れた。今日は琴葉の母の誕生日であって、彼女は母との約束があったのだ。夏瑠亜はもう少し一緒に時を過ごしたかったがしょうがない。代わりに夏瑠亜は琴葉からそれはそれは長いキスをもらった。彼はそれで十分だった。


夏瑠亜はベランダに出る。ここは10階。景色はそこそこ良い。

今は夜。多くの電灯が明かりとなり、夜の町を可憐に仕上げている。

缶ビール片手に彼はその景色を堪能する。

なんとなくここまでの自分の人生を振り返る。

いろいろな人と出会って、自分が恵まれていると感じたこともあるが、ここまでの道のりのほとんどは努力で自負してきたと彼は感じていた。

そしてこれからの生活。琴葉と婚約し、楽しい未来が自分を待っているのだろうと想像する。希望を抱く。不幸なことなんて何1つ考えなかった。

「よく頑張った、自分。そしてこれからも頑張れ、自分!」

月に向かって心の中でそうつぶやき部屋に戻る。

片付けや風呂などを済ませ、彼は就寝するのだった、、、、。






彼は、またこの地球で目覚めるはずだった。

素晴らしい生活が待っているはずだった、、、、、、、、。






***********************************



「おっはよー!!夏瑠亜さん早く起きて!朝だよ!朝だよ!グッドモーニング!!!」


俺はうるさく、そして甲高いわめき声を耳から聞きとった。

目を開ける。まだ視界はぼやけている。


「ほら!起きた起きた!!早くそこの椅子に座りなさい!!!」


また小鳥のような声が耳をくすぐる。

だんだんと視界はハッキリとし、頭の中もスッキリとしてくる。


「ここは、、、、、、。」


あたりは真っ黒。果ては見えない。でも頭上からは光が差し込んでいる。

そしてそのちょうど真下。白い椅子に座り白い服を着た羽の生えた人、おそらく天使がいた。

「目覚めが悪いーー!!君は幼稚園児か!早く私の前にある黒い椅子に座りなさい!!」


天使はステッキのようなものを振り回しながら俺に指図する。

久しぶりに変な夢を見たものだ、、、。

俺はそう思いながら命令に従いピーピーうるさい目覚まし天使を止めたのだった。

目と目が合う。天使には動物のようなかわいさがあった。


「夏瑠亜さんおっはよう~~~~~!!!」


”おかあさんといっしょ”のお姉さんみたいな張りで挨拶される。


「おはよう、、、。」


流れにのる。


「今日はね、夏瑠亜さんに良いお知らせを届けに来たんだ!!!

気になる~~~~???」


天使は100度くらい首をかしげる。面白いなと鼻で笑う。


「はい、、、、。」


「だよねだよねーー!!!」


天使は瞬間的に俺の前に現れ、顔を近づけながらそう言った。瞬神の術だった。

俺はだんだんと違和感を感じる。夢ではない気がしてくる。あまりにも情景が鮮明だから。

天使は椅子に戻って座り直し、俺の目を見て言った。


「なんと、君を今から異世界に連れて行きまーす!いえーい!!!!!70億分の1。夏瑠亜さんって本当に運が良いね!!!!!」


紙吹雪が宙から舞い落ちる。キラキラと煌めきながら。

俺はその言葉に対して咄嗟に言葉を発していた。


「行きたくありません。」


その言葉は紙吹雪を一瞬にして止める。それから天使の表情を完全なる無に変える。

天使は狂ったように立ち上がり言葉を羅列し始める。


「どうして~~~~!!異世界に行けば力が手に入るんだよ!!努力次第で最強になるち・か・ら・が!!!それも最初に私が力を君に施すんだよ!!こんないい話あるわけないんだよ~~~!!!!!」


「別にいりません。俺は今の生活に満足しているんで。今の世界の方が好きです。」


俺は真面目に答えた。夢でないような気がするのでしっかりと威勢も保って答えた。

天使は青ざめる。顔を下に向ける。そしてちょこんと椅子に座り直す。

そのまま話し始める。


「こんな人もいるんだー。君の世界ではTwitter、youtube、インスタ、テレビなどなどで有名になりたいと思っている人ばかりで、でも実際にはなれないから力や名声や容姿を求めている人ばかりだと思っていたのにー。」


数秒の間が空いた。そして急に冷たい風が吹き始める。紫煙が立ちこめる。天使の後ろの暗闇、何かの赤い目がキラキラとちらつく。不気味な笑い声が聞こえてくる。


「異世界に行くのが嫌だって、、、、、、。」


天使はゆっくりと顔を上げる。

俺は若干恐怖を感じ始めていた。手が震える。足が笑う。


「あり得ない、、人として、、、。」


天使の声は冷静さを取り戻したかのように低くなる。まるで今までのが裏声であったかのように。

顔もキリッとしたような表情に変わる。まるで子供から大人になったかのように。

服は白から黒へ変色する。黒色が白色をむさぼっていく。

白い羽は風に吹き飛ばされ黒い羽が表に飛び出す。

天使は立ち上がり手に持っていたステッキで何やら宙に描き始める。赤色の光でできた文字が宙にとどまる。


「何をする気だ、おまえ。」


今は恐怖はなかった。それよりも、今から何が起こるのかの不安でいっぱいだった。


「なにって、、、。」


天使は嘲るような笑みを浮かべて俺に言った。


「君を異世界に送ろうかなって!!行きたくない人を送るのも楽しいかなって思ってさ!”帰りたい”って叫ぶのだとか、”恋人に会いたい”って泣き叫ぶ君を想像すると興奮で震えが止まらないのー!!」


明らかに別人だった。

俺はその台詞にむかつく。椅子から立ち上がり天使を殴ろうと歩み寄る。

しかし、得体の知れない何本もの黒い触手が俺の体を拘束する。身動きが取れなくなる。


「残念ー!!人間風情が私に逆らえるわけないでしょー!!」


もうすでに天使は宙に魔方陣を書き上げようとしていた。


「放せ!俺以外の人を連れて行けばいいだろ!!もっと人生に困っている人を!なんで俺なんだよ!異世界ってそういう人を救う場所じゃないのかよ!」


俺は自身の考えを天使にぶつけた。幸せじゃない人なんてたくさんいる。


「わめくな、うるせー。」


赤い目で鋭く睨まれる。


「おまえはわかってないな。地球でさえ成功できない人が異世界で成功できるはずがないだろ!今から送るのは魔法のある世界、力があるものが頂点に立つ存在。おまえの世界よりもよっぽど弱肉強食で生き抜くのさえ難しい。そんな場所に困っている人を送っても困ったままだ。そんなもんさ。おまえら人間が描いている異世界の戯れ言とは言うまでもなくかけ離れている。現実はな!!!!!!」


その言葉を言い終わった直後、俺は左手で頬を掴まれる。


「帰ってこれるといいな、愛する人の元に、幸せな今の世界に!!」


「放せ、、やめろー!!!!!!」


うまく話せない中、俺は必死に叫んだ。

しかし、赤い文字は強く発光し俺の体を包んでいった。

最後に目に映ったのは、高笑いする残酷な天使であった、、。








      誰よりも望まない異世界転移生活が始まるのだった、、、。






最後まで読んでいただきありがとうございます。

新しいお話を書くと、タイプが進みます。



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