ある夜の出来事
「手の内は見せていないだろうね。言質を読まれて裏をかかれたら面倒だからね」
フードを被った一人が、口を開く。女性の声だ。
暗がりの部屋。フードを被った二人が、テーブルを囲んで、話し合っていた。
「問題ないかと。嘘もつかず、真実も言わない、どちらとも取れるように、あの店の新しい主人には言えたかと」
もう一人のフードを被った者が呟く。男性の声だ。
そうかと女性は頷く。
「どうだい。あの店の新しい主人は手強そうかい」
「いえ。人を真っ直ぐに信じてしまう嫌いがありますね。姐さんみたいな騙し会いが得意な手合いには耐性がまだないでしょう。なにせ年端もいかない少女だ」
フードの女性は笑う。
「あの子もついてないね。あの年で、あんな沈みかけの船を渡されちゃって。私だったら、逃げるけど」
フードの女性は気の毒そうにぼやく。コップの水を口に運ぶ。
「姐さん、時々、情に流されて手加減するから、こちらもいたいけな少女が相手だからって手加減しないでくださいよ」
フードの女性はまた笑う
「馬鹿野郎お前。こっちも信用が命だ。それにあそこには、あれがある。こちらも目的がはっきりしているんだ。絶対にものにするよ」