救出
「あなたは、幻なのでしょうか」
とどろは目の前に座る少女に尋ねた。頭の中に浮かぶ疑問をそのまま投げかけた。
とどろは見知らぬ金髪碧眼の美少女がいて、見知らぬ花畑にいて、傷の痛みやらと美少女に触れられた感覚だけがやけに鮮明なこの状況で、現実か幻か、判断ができなかった。こんなのは、生まれて初めてだった。
金髪の少女は、首を傾げて答える。
「何を言っているの。それより傷の手当てを。大丈夫。必ず助けます」
金髪の少女は、とどろの傷を心配してくれていた。
しかし、とどろはこれだけは確認しておかなくては我慢ならなかった。
「お願いです。教えてください。ここは幻ですか。これは俺が死ぬ前に見せている夢なのでしょうか」
金髪の少女は神妙な面持ちでとどろを見て、答える。
「いいえ。私は幻じゃないと思うわ。私にはちゃんと両親がいて、実在の人物です。そして、あなたは、今にも死にそうな酷い傷をしている。だから、私があなたを必ず助ける」
とどろは、今にも消えそうな意識の中で、ありがとうと感謝の念だけを金髪の少女に口にして、意識を失った。
少女は、ただ驚いた。青年に幻だと伝えたら、そうかと笑って素直に自分の死を受け入れてしまうほど、穏やかで冷静さが青年の喋り方にはあった。
少女は思った。精霊がこの青年を連れてきた。それはつまり精霊の加護がこの青年にあるということ。加護がある限り、この青年は死なせてはいけない。
精霊にはいつだって、人間以上に深い意図がある。
この花畑を含めた山を所有する、祖父は治癒系の魔術に長けた人だ。祖父に見て貰えば、この青年は十分に助かる可能性がある。
少女は青年を担いで、祖父のいる麓の家を目指す。
少女は、自身が唯一努力して勝ち得た魔術、自己強化で、青年の肩を持つ。
神経伝達が早くなり、運動能力を著しく向上させる。
少女は、脱兎のごとく祖父の元に駆ける。
山道の根を踏みしめ、踏破していく。
祖父の家が見える頃には、花畑からわずか10分足らずだった。行きは、普通に歩いて2時間かかったのに。
「おじいちゃん、いる?」
少女は家の玄関から祖父を呼ぶ。
なんじゃ、と答え白い顎髭をたずさえた老人が居間からでてきた。




