トンネルを抜けると
トンネルの天井が土砂の勢いに耐え切れず、均衡は破られる。
トンネルの天井が崩落し、大量の瓦礫が、上から襲いかかってくる。中にいた車は、炎と黒煙を吹き上げ、地獄絵図だった。
とどろは、バス車内の後ろの座席にいた。
バスも崩落の影響で大破し、とどろは頭部と腹部を酷く痛めていた。
「なんなんだ。一体」
車内は、黒煙に満ちている。
とどろは、前の座席にいた老夫婦を思い出す。
周辺を見ると、老夫婦が横になっているのに、気づく。とどろは体に鞭を打って動き出す。
「大丈夫ですか」
とどろは声をかける。老夫婦の婦人が、とどろを見ると、「助けてください。主人が」婦人は悲痛な声でとどろに助けを求めた。
婦人の視線の先を見ると、旦那の足が瓦礫に挟まれていた。
とどろは、瓦礫に手をかけて、旦那を救出しようと試みる。
幸い、瓦礫がなんとか、少しだけ浮かす事が出来た。
とどろは、瓦礫を浮かせている間に、婦人に旦那を引かせて、救出に成功した。
「とにかく、旦那さんを連れてここから離れましょう。ここは、煙が酷い」
バス車内は、煙が充満していて、呼吸するのが、辛かった。
婦人は頷いたので、とどろは旦那をおぶさって、バスから出た。
外に出ると、人の集まりがあった。
とどろは、老夫婦をそこに連れて行くと、集まりの中で、医療に心得のある人がいてくれて、旦那を介抱してくれた。
婦人から、感謝の言葉を何度も言っていただき、それからとどろは老夫婦と別れた。
「何が起きているんだ。周辺を調べるべきか。救助を待つべきか」
とどろは、情報が命を分けると考えていた。
煙が充満しているが、窒息死してしまうほどでもない。ひょっとしたら、人が抜け出せるくらいの隙間がトンネルの出口にあるかもしれないと推測した。
とどろは、動いた。
とどろは一人で出口を調べに行った。
出口への道がまだあるなら、自力で先ほどいた人たちが外に出られる。
とどろは、体を引きずりながら、歩いた。
体が痛い。しかし、アドレナリンが出ていて、この痛みすら気にはならなかった。
絶対に生き残る。とどろの生存本能がそう言っていた。
歩いていると、たくさんの人たちと出会った。
中には、帰らぬ人もいた。
とどろは、出口を目指した。
すると、トンネルを突き破った土砂の山を見つけた。
ここが行き止まりだった。
しかし、土砂の上部分に隙間があった。
とどろはよじのぼると、ちょうど人一人分の隙間が確認出来た。
そこを抜けると、また、道が続いていたのだが、
とどろは、頭の痛みが限界に達していた。
意識が朦朧とする。
頭から流れる血と汗を拭い、もう一踏ん張りしようと思ったが、力が入らない。
とどろは倒れてしまった。
ここで、終わるのか。
とどろはそう思った。
何も成し遂げられずに朽ちていく。それがとどろは一番嫌だった。
しかし、それも運命なら仕方がないか、ととどろは思った。
しかし、これで、万が一生き延びることがあるのなら、この運命を敷いた神様があとで後悔するくらい、運命に抗ってやる。
とどろはそう思った。
とどろの視界はだんだん真っ暗になっていった。
気がつくと、とどろはお花畑にいた。
やっぱり駄目だったか。とどろはそう思った。
臨死体験でよく聞くお花畑だろう
しかし、なぜか、
そこに、金髪碧眼の女性がいた。
とびきり美人だ。
とどろは思わず目を奪われた。
女性が近付いてくる。美人を見れて、死ねるなら悪くないな。とどろはそう思った。
よく見ると顔立ちが幼かった。年頃は高橋さんくらいかな。
「大丈夫」
美少女の手がとどろに触れる。
その手があまりにも暖かすぎて、とどろは目を見張る。
「は?」
五感があまりにもはっきりしすぎている。
この子の手の温もりや、花の香り。
ここは臨死体験で見せる幻なのか。
とどろは美少女の顔を見ると、
美少女はニコリと笑った。




