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第31話 ゴットフリートと騒動の予感

「これは……?」


 ゲッツは2人が出て行ったことを確認すると、その本を開けてみる。内容は全くよめない。

 なぜならば、この国の言語とは違う言語の本である為だ。


 英語の様なアルファベット体で書かれている為、この国の言語であるケッセルリング語に似てはいる。同じ意味の単語もいくつかあるようだ。


 ゲッツはエアハート語かと疑ってみるが、読めない。一応母親のアポローニアから、いくつか習っていたが、その言語とも違うことがわかった。


「今から200年前に書かれた本だよ。題名はない。この本を書いた人物すら分からないといった有様でな」


 確かに、この本の表紙には何も書かれていない。ただの黒い本である。


「外国語で書かれている様だけど」


「ですな。それを私が一部翻訳しておいた。これだよ」


 そういうとブルーノは紙切れをゲッツに渡す。


「ブルーノさんはこの本を読めるの?」


「もちろん。この言語を私が読めるというのは、この本がここより南の国、ハルト王国で書かれたものだからだよ。もっとも、200年程前の言語だから少々難しい言い回しをしていたり、死語があったりするがね。私にしてみれば簡単なことだ」


 この万能研究者は、ハルト王国の出身であった。ハルト王国というのは、この国ヴィルヘルムス連合王国から南に位置する王国だ。


 この大陸は南の方が細くなっており、ハルト王国は両端を海で囲まれた大国である。そのため、ブルーノいわく他国の情報も多く入ってくる国なのだという。


「『その魔法を初めて私が見た時、魔法を導く属性なのだと感じた。それは魔導師の純粋種に通ずる魔法。白魔法に次ぐ、新しい属性と言ってもいいのかもしれない。だから私はその魔法属性を無ではなく、導と名付けた。ただ問題なのはその属性に目覚める人間が極端に少ないことか。私はこれまでに2人の導魔法使用者をーー』」


 ゲッツは渡された翻訳を声に出して読んでみた。ブルーノは目を閉じて聞いている。


 ゲッツの予想だが、この本の著者はあの判定紙を編纂した人物に違いない。導属性の名付け親であり、その属性の適正者が少ないことも分かっていたようである。


「無属性って?」


 ゲッツはひとつ疑問点を感じて質問した。


「おお。そういえばまだ、ゲッツ様は無属性を習っておらんかったな。無属性というものはいわゆる特殊魔術というものだ。基本7属性以外の魔術は基本この無属性になる。無だからといって魔法が使えなくなることではなくて、例えばゲッツ様の母君はこの属性になるな」


「ああ、なるほどね」


 基本7属性魔法以外である、魔術をゲッツはこれまでいくつか見て来た。

 例えばアポローニアの召喚魔法。

 彼女はその召喚魔法でもかなり上位の魔法を使う一族の出で、その一族の中でも特に優秀だったと聞いている。


 もう1つは、国王陛下の付加魔術。これはゲッツが直接はお目にかかったことがないが、彼が襲撃者を己の拳で倒したのはこの魔術のおかげだという。


 ちなみにイルマやジークフリートが使っていた様な『性質変化』魔法は、基本7属性の応用バージョンであるが、ここではそれまで。



「要するに、この導属性は本来『特殊魔術』である無属性に分類してもよいものなのだが、判定紙を編纂した人物が何を思ったか『基本魔法』に分類してしまったのが原因であるな」


「うーん。でも仮に特殊魔術としても、この属性をどう使っていいかわからないな」


「そこが、私の出番である」


 そう言うと、ブルーノはもう一枚の翻訳した紙をゲッツに渡す。


「なになに『この本を読んでいる者で導属性に開花した者がいたら、是非実践してほしいことがある。それは、他人の魔法を受けることだ。どういう意味なのかは自分で考えると良い。だが、この属性は魔法を導く属性でもあるが、君自身を導く属性であることも忘れてはならない』だって」


「そうであるな。ゲッツ様は一度魔法を使ったことがあるのだとか」


「ああ。そういえば、フード男が母上を襲撃して来たときがあったな。うん? まてよ。導くということは、今までの……」


 そこまで言ってゲッツは固まった。ゲッツはこれまで3回程、この魔術に助けられていたと自覚したからである。


 最初は、義姉であるユリアや護衛のイルマ達とある村に泊まった時である。

 あの時は赤色魔素に犯された、オーク族が襲撃してきたのであった。なぜかそのオークの敵意が、気配が、見てもいないのにわかったのである。


 もう1つは母親のアポローニアのと一緒に園遊会から返る時。

 その時は敵の攻撃を数秒先を読み取ることができた。さらには謎の声が頭に響いたと思うと、敵の魔法と同じ様な魔法が、数倍になって繰り出されたのだ。


 最後はゲッツがアルベルト一党に襲われた時。

 これは今までに比べるとわずかのみであった。だが戦闘なれしているとはいえないゲッツが、上級生2人を相手に互角以上の闘いをしていたのだ。


「ゲッツ様よ。どうかしたのだ?」


「い、いや。今まで何となく発揮していた不思議な力の正体がようやく掴めた気がしたよ」


 ゲッツはブルーノ言われて、思考の海から復帰する。


「そうか。だが、この属性は訓練の仕方がいまいち掴めんのであるな。どうも受けに回る必要がありそうだ」


「うん。でもその正体が分かれば、一応訓練はできると思う。相手役を友達にでも頼んでみるよ」


 ただ、魔法が使えるようになるのは1年の後半から2年くらいのときである。それにゲッツはまだ、【触媒】も手に入れていないことに気がつく。


「そういえば、ブルーノさん。僕は【触媒】の方もまだ選べていないんだよ」


「む。そうだな。ゲッツ様の導属性は無属性に近いことから、【触媒】も普通のではいくまい。ここにいくつかーー」


「ーーっ!?」


 ブルーノがゲッツに答える前に、ゲッツは早速虫の知らせの様な現象に見舞われた。


 

 

「ブルーノさんっ! 大変だ、妹が! ベティーが何者かにさらわれてしまった!」


 突如、このドアを大きな音を立てて入って来たのは顔を真っ青にさせたアルノーであった。その様子は、これまでの余裕を感じるものではなく、事態の重さを物語る。


「彼女はどこで最後に会ったのだ? アルノー」


「さ、最後に会ったのは街のカフェだよ! 俺が歩き飲みをする為にカフェで買っていた所でベティーがいなくなったんだ!」


 慌てるアルノーに対し、冷静に分析するブルーノ。


「彼女がいなくなるのはまずいのである。これは調べる必要があるな。ゲッツ様は少し待っていてくれーー」


「いや、人数は多い方が助かる! ゴットフリート君も一緒に探してくれないか!? 報酬は出す!」


「あ、ああ」


 鬼気迫る程に詰め寄るアルノーにゲッツは思わず頷く。


「ゲッツ様も行くのであるな。手分けして行きたい所であるが、ゲッツ様はここの地理に疎い。私に付いて来てくれたまえ。捜索魔術をつかうのでな」


「じゃあ。オレはここからカフェ付近から探す! た、頼んだ2人とも!」


 ゲッツとブルーノは互いに頷くと、急いでブルーノの大学研究室へと向かった。


 ゲッツの【触媒】取得はまた後になりそうであった。

急展開にならないように書いてますがムズカしい。

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