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第8話 ゴットフリートとエルフ騎士Ⅰ

この題名だけ見ると、非常にかっこよく見えるのはなぜだろう。


※イルマの外見年齢を明確にしました。

 ゲッツの転生前で言えば桜なのだろうか、似た様なピンク色の花を咲かせた木が良く見えるちいさな丘にたどり着き、ゲッツ達は休止を挟んだ。遠くに森や山が見え、ゲッツが出発したペーベルははるか彼方に存在する。既にかの町を出発してから3日は経っているからだ。


 ゲッツは久しぶりの大地を踏みしめた事に安堵を感じた。長時間バスに乗っていた様な感覚だ。

「ぅん〜〜っと!」


 横を見るとユリアも外に出て来て伸びをしている。旅慣れた彼女も疲れたのだろう。しかし彼女は休憩をとらずに、帰って来た斥候と打ち合わせをしている。


 ゲッツがここまでで見て来た景色はまるでよくある中世ファンタジーのように、細いあぜ道と周りは草原で覆われていた。唯一違和感があるのは、ところどころにある小さな街灯くらいのものであろう。街灯は今は朝なので何も光っていないが、夜になるとあたりをぼんやりと映す。


「モンスターはいないのか」


 ゲッツはふと、そう言葉を漏らしていた。そういえば、モンスターは見当たらない。


「モンスターは基本魔素濃度が高い森に生息しているのです。でも草原地帯にも飛竜などが来るかも知れないので気をつけてください」


 そう答えを返したのはこの隊唯一のエルフの守衛だった。今まで騎士の様な無骨な格好をしていたので気がつかなかったが、彼女は金髪碧眼のスラッとした美人さんだった。ペーベルは寒い地方なのでか、肌がより白く感じる。耳は横に長く、髪は邪魔なのか後ろで束ねている。


年は18歳程だろうか。ゲッツには外見年齢では判断しかねる。


「あー、モンスターはいるんだ。それにしても詳しいね」


「ええ、私たちエルフ系の種族の多くはまだ部族単位で森に暮らしている者がいますからね。森や山などの過酷な環境下で生きる者達には生きる知識は必要なのです。ってちょっとゴットフリート様には早かったでしょうか?」


 エルフの守衛さんは不安そうにこちらを伺ってくる。

 ゲッツは普段から読む本でエルフには博識が多いと学んでいたのだが、それにしてもエルフ娘と自然に会話出来た事に感激していた。この点は生まれでた家族に感謝である。


(俺、普通に会話できてる? 元ボッチでも慣れればなんとかなるんだな)


「っと、ごめんごめん。理解できてるよ」


「へぇ〜、お坊っ様は博識ですにゃぁ」


「うん?」


 とそこに猫娘の商人がゲッツに向かって話しかけて来た。こちらは美人というより可愛いトいった感じだ。髪の毛の上に耳がぴょこんと立っており、茶髪のショートカットの男の子らしさとのギャップを生んでいる。猫の獣人の特徴とも言える。

 服も青のオーバーオールと白いシャツ、金の刺繍がはいったネイビーのベレーという公式商会の制服をしていた。しっぽはゲッツからでは見えない。


「君は?」


「あたしは、アーレ商会のカミラにゃね。領主のお坊っ様に覚えられるなんて感激だにゃ!」


 猫獣人独特の発音がゲッツには新鮮に感じられた。

 ふとゲッツはエルフの守衛も名前を聞いてなかったことを思い出す。


「そういえば、お姉さんの名前は?」


「わ、私ですか? 私などの名前を知っても……」


 エルフの守衛は主従関係にあるのか、エルフ族になにかしらあるのか、なかなか答えてはくれない。


「うん! 僕はお姉さんの名前がしりたい!」


(うっ……、また俺の黒歴史が。だがここは聞かねば)


 彼は場の空気感から、子供っぽくおねだりしてみた。遠くではユリアとエルフさんの同僚が微笑ましく見ていた。


「は、はい。わかりました。私の名前はイルマ。イルマ=カトゥカといいます」


「イルマさんにカミラさんね。おぼえたよ」


 言葉だけ見ると軟派な幼稚園児に聞こえるのだが、彼は至ってまじめにコミュ力をあげようとしているのだ。


 しかし、ゲッツには気になった事がある。


「イルマさんの名前って、響き的にここの国の名前じゃないよね?」


「あ、はい。私は北のヴァーラ侯国からの元難民ですから」


「へー、イルマも外国人だったのにゃ? あたしもハルト王国人だにゃ。国籍はまだ残ってるから、あたしは歴とした外国人だけどね」


 そう言って苦笑いをするカミラは腕を頭の後ろで組んだ。

 ゲッツには2人とも外国人という事に少し驚いた。


「カミラさんも外国出身だったの?」


「あたしらだけじゃなくて、この国は結構な外国人がいるはずだにゃ。最近では貴族様もいるらしいにゃ」


(ってことは、この国は多民族で多部族、多種族且つ多国籍な国ってことか! ひぇーー!)

 

 ゲッツは転生前は現代日本で生きていたため、この外国人が身近に何人もいる感覚が理解できなかった。この国のダイバーシティは大変なことになっているようだ。


「それじゃあ、出発しましょう! 夜になる前に村に行った方がいいみたい。この辺りに飛竜が確認されたらしいわ」


 そうこうしていると、ユリアが斥候からの情報を確認したのかそう叫んだ。街道や街などにはモンスターが嫌う成分を街灯につかっているようだが、飛竜などの空を飛ぶモンスターは例外も存在するようだ。


「ユリア義姉さん、飛竜と結構遭遇するもんなの?」


 ユリアとゲッツが馬車に入った後、ゲッツは不安になってそう尋ねた。


「安心して、ゲッツ。ここら辺に出た飛竜はそんなに危険度は高くないのよ。ただ、そうね。飛竜は臆病だから人を襲う事はあまり多くないわ」


「そうなんだ」


「それに竜っていっても様々いるけど、本当に強いのは領空を侵犯されない限り襲ってこないわ」

 この国にある空船は基本その間を縫うようにして飛んでいるようだ。ゲッツは一度も見た事がないが。




 結局その日は村に時間通りにつく事ができた。ここから駅のある街、リーツまであと半日もあればつくらしい。その村は質素だが、街に近いためか寂れている様子はうかがえない。


 村内に「宿屋ギルド支部運営の宿屋」というものがあり、一際大きな建物が目立つ。大型チェーンのホテルみたいなものか。


 そしてゲッツ達のような貴族だけではなく、商人や旅人も泊まる事が可能のようだ。だが安全面を考慮されて1等室から3等室と部屋のランク分けはされている。


 ゲッツともう一人以外のメンバーはここの会議室みたいな場所を借りて、明日の旅の予定の打ち合わせをしている。ゲッツは5歳である事から、この会は不参加だ。



「イルマ。なんで君がいるの? まあうれしいけど」


「はっ。わ、わかりません」


 もう一人とはエルフ娘のイルマだった。なぜか彼女はユリアに信用され、あの会話の後からイレーネの変わり役をまかされていた。


 仕方ないのでゲッツはイルマと部屋で雑談をしていた。やましい事はしていない、はずだ。


クリスタの女の魅力の不足感は悔やまれます。


イルマは最初、名無しのモブエルフさんだったのに......。どうしてこうなった。

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