やる気のない天気
第八部、ありがとうございます!
今回やっと本題でしょうか?
ゆっくりしていってください!
『おっ、おはよ!』
朝から満面の笑みで話しかけてくる。なぜこいつの笑顔はこんなにも眩しいんだ。ちょっとうざい。
「おはよう。」
『今日はリュックなんだな。』
「まあね。」
そういえば倒れた日、ゴミ箱からバッグが姿を消していた。朝早く来て始末するのは簡単なことだろう。あのケバ女たちのことだ。他のクラスメートを従わせるなんて容易いに違いない。
「はぁ…。」
バッグには折りたたみ傘くらいしか入れていなかったから幸い。だが、パッと見たときにかなりボロボロにされていたはずだ。全くあほらしい。ああいう顔に合わないメイクをするようなやつは、やはり頭が悪いのか。関わりたくない。
「やる気のない天気だな…。」
空は青く綺麗なのに、どす黒く染まった雲がそれを邪魔している。なのに、なぜか太陽だけを避けて雲は動く。不思議なものだ。まあ要するに、そういうことだろう。きっとどこの世界でも同じものは同じなのだ。
『ねぇ、ちょっと。』
「…なに?」
ケバ女たちが話しかけてきた。バッグのことだろうか?
『昨日、アンタの鞄が捨てられてたでしょ。』
「うん。」
お前らがやったんだろと言いたいところだが、ここは少し抑えよう。何が言いたいのか聞きたい。
『あれ、アタシ達のせいにしようとしてアンタがやったわけ?』
「はっ?」
正気だろうか?こいつらがやったんじゃないのか?
「あんたらじゃないの?」
『違うわよ!』
「じゃあ誰なの?」
『知らないから聞いてんのよ。アンタがアタシ達をおとしめようとしたんでしょ!?いい加減にしてよ!』
「いやいや、いい加減にしてはこっちの台詞だよ。まだ私のこと懲らしめ足りないの?」
『アタシ達はやってないわよ!』
「じゃあ一体誰なの?それを始末したのは?」
『わから…、』
『おいどうした?もうホームルーム始まるぞ?』
割り込んできて私の肩を引くアイツ。うるさい。邪魔だ。
「ほっといてよっ!」
ハッとした。
「あっ…。」
思い切りヤツの手を振り払ってしまった。
きっとすごく嫌な表情だったはずだ。
ヤツはヤツなりに堪えているんだろうが、それができていないようだ。
口を軽く結んで、目を垂らしている。驚き悲しそうな表情だ。
私はそんな表情を長くは見ていられなかった。
『ごめん…。』
私の目を見ずに振り返り遠ざかる背中に、何も言えなかった意気地なし。苦しい。なぜこんな気持ちになるのだろう。
いつの間にか、ホームルームは終わっていた。放心状態だったのだろうか。何も覚えていない。なぜこうなってしまったのだろう。
昔から、怒りが募ると周りが見えなくなるのが短所だった。だが、あまり人に対して怒ることがなくそこまで気にしていなかった。
それがここで出てしまうとは。それに彼に謝らせてしまった。苦しい。ここの空気は酷く乾いていて、私の喉を鋭く刺してくる。
嫌だ。どうしてこうなった。
全て…やり直してしまえればいいのに。最初からやり直せれば…。私は頭を抱え、机に頭を打ち付けた。
目が覚めると、布団にいた。布団?おかしい。私は彼を怒らせてしまって、絶望していたはずだ。
時刻は?
6時30分
いつも起きる時間だ。
日にちは?
12月14日
彼を怒らせたその日だ。
どういうことだ?全ては夢だったのか?服装もパジャマのままだ。意味がわからない…。頭がおかしくなっているのだろうか…。今が夢なのか?分からない…。
とりあえずいつも通り制服に着替え学校へ行く。これが今日ならば、同じことが起こるはずだ。
教室に入る。酷く鼓動が早い。今にも口から心臓が飛び出そうだ。
『おっ、おはよ!』
眩しく少しうざい満面の笑みは、さっきと変わらなかった。
「お、おはよう。」
動揺を見せてはならない。コイツは変なところだけ勘がいい。
『今日はリュックなんだな。』
「そうだよ。」
多分こんな会話だった。そしてこのあと、やる気のない天気に心が沈む。
…はずなのだが。
席に着くと、空は快晴だ。雲ひとつない。なぜだ?疑問が多すぎる。
『ねぇ、ちょっと。』
来た、ケバ女だ。
「なに?」
『昨日、アンタの鞄が捨てられてたでしょ。』
「うん。」
『あれ、アタシ達のせいにしようとしてアンタがやったわけ?』
「何言ってるの?私はやってない。あなた達じゃないの?」
もうこいつらが言いたいことは分かっている。どんどん突っ込んでやろう。
『違うわよ!』
「じゃあ誰なの?」
『知らないから聞いてんのよ。アンタがアタシ達をおとしめようとしたんでしょ!?いい加減にしてよ!』
「こっちの台詞だよ!どうせあなた達がやったんでしょ?」
『アタシ達はやってないわよ!』
「じゃあ一体誰なの?それを始末したのは?」
『わから…、』
『ホームルーム始めるぞ〜。ほら早く席着け〜。今日は短縮日課だぞ。』
…あれ?ヤツが間に入ってこなかった。確かさっきは担任が少し遅れて入ってきたはずだ。
変わってきている。少しずつ。未来を変えて痛い目に合うのはお決まりのパターンだ。怖い。
『以上ーっ。あとは授業までに準備しとけよ〜。』
『ふぁ〜あ。化学めんどくせーなあ。』
ヤツは眠そうにあくびをかましながら私にそう言う。
「そ、そうだね。」
『ん、どした?』
「いや…まだ眠気覚めてなくて。」
『だよなぁ〜。1限目から寝ちまうよ〜。』
不思議だ、どうしてこうなっている?いや、これでいいのだ。むしろこれが望ましいのだ。
怖いが、こんな力を操れたら便利すぎるだろう。
使いこなせれば…。
最後までありがとうございます!
第九部もよろしくお願いします!