これって、デート?
第五部、ありがとうございます。
あたり長くはないと思いますが、ゆっくりしていってください。
眠い。眠い。眠すぎる。
今日はアイツと出かける日だというのに。
前日の夜はなぜか寝付けず結局3時まで起きててしまった。眠い。
だが起きるしかない。ただでさえ寝坊しているのだ。まあ時間は間に合うだろうが…。
とりあえず着替えるとする。持ち服は少ないので、だいたいいつも同じ格好。ラフな桃色のパーカーに、足首より少し上がったジーンズ。それにスニーカーと、今度こそ普段使いのリュックだ。寒いので、猫のワッペンのマフラーは欠かせない。いとあたたかし。
朝ごはんは適当に部屋に置いてある補助食で済ます。一階に降り歯磨きをして寝癖を直すと、またも弟が抱きついてきた。
『おでかけするの?』
「ちょっとね。」
『きをつけてね!』
「ありがとう。」
弟は私の唯一の癒し。いつか反抗期が来るなんて…。
やばい、時間が迫っている。だが、やはり冬にしてはこの格好は少し肌寒いだろうか…。寒くては嫌なので、部屋から紺色の軽めのジャケットを取り出してきて羽織った。これなら悪くない。
ドアを開けると、酷く冷えた風が吹いていた。恐ろしい。おしるこが愛しい…。
とりあえず待ち合わせている駅まで歩く。スニーカーとジーンズの間が寒い。
見つけた…。
自動販売機だ!!
おしるこー!!!
ガゴッ、ガラガラ
「あったかい…。」
やはりおしるこ神。あたたかいし美味しい。
『ぶっ…。』
笑われた。絶対笑われた。絶対アイツだ。
「…なんだよ。」
『出かけてもおしるこかよ、さすがだな。』
「うるさいな。おしるこ馬鹿にしたらバチ当たるよ。」
『はいはい。』
彼は意外な格好をしていた。
やはりコイツも寒かったのか、黄色いようなオレンジのような色のダッフルコートに、黒いジーンズ。首元には赤いマフラーをしており、斜めがけのショルダーバッグを肩にかけ、スニーカーを履いていた。
パーカーにジーンズなどシンプルな格好をしてくると思っていたが、意外ときちんとしていた。
『俺、姉ちゃんがいてさ、出かける時はいつも服決められんだよね。』
「便利じゃん。」
『まあ好みとかないし良いけどな。似合ってる?』
「私そういうのあまり分からないけれど、悪くはないと思う。」
『よかったー。お前もなかなか似合ってるよ。』
「こんなもんしか服持ってないからさ。」
それにしてもおしるこが美味しい…。おしるこほんと良い…。
『幸せそうに飲むなあ。』
「おしるこは私の至福…。」
『お、電車きた。やっぱ混んでるなー。』
「待って、おしるこ飲み干すから。」
『はよしろ。行っちゃうだろ。』
「よしおっけ!」
急ぎ気味に電車に駆け込むと、さすが週末の午前中と言って良いだろうか、通勤ラッシュとまではいかないが、かなり混んでいた。
一つ席が空いていた。彼は私をそこまで誘導すると、座らせてくれた。
「良いの?」
『一応病み上がりだろ。ばあちゃんとかじいちゃんがいたら変われば良いんだ。』
「ん。ありがと。」
私の目の前に、つり革を握りながら彼は立っている。いつもあまり見ないからわからなかったけれど、彼はたくましかった。なんだか、自分の存在が酷く小さく思えた。なぜこんなみんなの人気者である人と2人で出掛けているのだろう?とても不思議になった。
その時、電車に軽くブレーキがかかった。
「わっ…。」
ぼーっとしていた私は、隣のおじさんにぶつかりそうになってしまった。
『危ない危ない。』
彼は手を私の左肩のあたりにおいて、隣のおじさんとの接触を避けてくれた。
「あ、ありがとう。」
『なぁにぼーっとしてんだって。』
「いてっ。」
軽いでこぴんが飛んできた。結構痛かったし。ちょっと恨む。
『よし、降りるぞ〜。立てるか?』
「そ、そこまで貧弱じゃないから!」
『わかってるって。まったく本気にしすぎ。』
「ぬ、…ぬぅ…。」
『やっと綺麗な空気が吸えるな。』
「あータバコ臭かった…。」
『俺も思った。』
その時、幸せそうに手を繋ぐ1組のカップルを見た。ふと、私は思った。
「ねぇ、これってデート?」
『え、違うの?』
「なんだ。なら、スカート履いてきたら良かったな。」
『えっ…。』
「ん?」
『い、いや。次はスカート履いてこいよ?』
「まあ気が向いたらね。」
私はデートのつもりではなかったから、少し驚いたけれど。もう少し服装に気を使えば良かっただろう。あまりにもラフすぎた。
また次があるのならば、もう少し良い格好をしていこう。なんだか嬉しい。
『まあー、とりあえずゲーセンでも行きますか?』
「行く。」
今日はまだまだこれから。
思う存分、楽しみたいな。
最後までありがとうございました。
まだまだ続きます。第六部もよろしくおねがいします。