王子様に運ばれたい
一日置きですいませんでした。
前回、「熱い」を「暑い」と打ってしまいました、ごめんなさい。
第四部?かな?ありがとうございます。
ゆっくりしていってください。
翌日目が覚めると、からだがいつも以上にだるかった。頭もぼーっとしている。だが今日休んでしまっては、あのケバ女たちに負けましたとでも言っているようだ。何が何でも学校に行く。
家を出る前に、小2の弟に抱きつかれた。朝ごはんをなかなか食べ終われなくて母親に叱られたらしい。可愛いやつめ。なでなで。
『いってらっしゃぁい』
「いってきます」
アイツに借りたマフラーはリュックにしまい、紺色の生地に猫のワッペンが着けてあるマフラーをした。少しほこりくさかったが、寒さには変えられん。
音楽を聴きながら、通学路を歩いた。なんだか人目が気になる。まあ気のせいだろう、私にはそういう自意識過剰なところがある。
校門まで辿り着くと、生徒指導はいなかった。なんだ、わざわざリュック背負ってくる必要なかったのか。
ガラガラガラ
教室の扉を開け、中に入る。誰が来たのかとクラスメート達が振り向くと、全員が全員、冷めきった顔をしていた。私はそこまで顔面凶器なのだろうか。ショックだ。
『お、おま…』
「ん?なに?」
『なんで、なんで』
まだ人が私を見ている。顔面凶器は人を別の意味で釘付けにしてしまうのか。
その途端ヤツが笑いをこらえた顔をした。そんなに変な顔だろうか。
『お前なんでランドセル背負ってんの!?』
「…は?」
何を言っているんだコイツは。私は普段使いのリュックを…
リュック…
クローゼットから出したっけ…?
背中に背負っていたそれは…
小学生時代使っていたローズピンクのランドセル…
『『『ぶっはははははは!!!』』』
嘘だろ。まじかよ。私、ランドセル背負って来たのかよ…。
「うわぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
世界が回る。目の焦点が合わない。よくある気絶というやつであろうか。今のでかなり興奮してしまい心臓が高鳴っている。このまま倒れて王子様に運ばれるのだろうか?それなら嬉しい。
頭部に衝撃が走る。音は聞こえない
。眠い。多分死にはしない。黙って倒れていれば大丈夫なはず…。
どうしてこんなつまらないことしか起きないのだろう。
もう一度最初から
・・・・・・
やり直したい。
友達?ばかみたい
『ウソ。ほんとは仲良くできる人が欲しい』
家族とか、きもいし
『もっと愛されて育ちたかった』
勉強とかだるい
『昔からちゃんと勉強しとけばよかった』
スポーツとか疲れるだけでしょ
『憧れてたバスケがずっとしたかった』
かったりー。どうせなにもできないし
『どうして努力しても報われないのだろう』
ずっと寝てたい
『楽しく生きたい』
うるさい、誰だよお前
『私はお前』
黙れ、なにも知らないくせに
『なにも知らないのはお前のほう』
うるさい
『自信が欲しい』
うるさい!
『優しくされたい』
うるさい!!
『たすけ…
ガバッ
「っは、は、はぁ…っげほげほ、は、は…。」
気持ち悪い夢を見た…。
『怖い夢でも見たのか?』
ビクッ
体が奥底から震えた
「だれっ…、」
ヤツだ。
「あ…。」
『苦しいか?』
「いや、…。」
『随分寝てたなぁ。もう昼休みだよ。』
「えっ!?」
『なんでわざわざ体調悪いのに来たんだよ?』
「そ、それは…、」
ケバ女たちに負けたくないなんて口が裂けても言えん…。嫌だ…。
『…。体調悪いままじゃ焼きそばクリームパン食べれられないぞ。』
「そっ、それは嫌だ!!」
『じゃあ早く治せ。』
「はい…。」
『今日は5限で終わりだろ。たまたま部活ないんだ、心配だから送ってくよ。』
「そ、そんな悪いよ。」
『黙って送られろって。5限まで寝てていいからさ。』
「わかった…。」
ますますブレスレット代が請求し辛くなる…いや違う。今はそれじゃない。
『おとなしく寝てるんだぞ。5限終わったらまたくるからな。』
「うんっ。」
アイツは出て行った。なんてお人好しなのだろう。とりあえずもう一眠りするか…。もう嫌な夢見ないといいな…。
コン、コン
『失礼します。』
扉を開ける音と共に、彼の声が聞こえた。驚かせてやろう。まだ起きない。
『起きてるかー?』
くっくっく、私の狸寝入りはバッチリだ。
『なんだ、まだ寝てんのか?』
よし、今だ、起き…
ふさっ
…ん!?
なでなでなで
…頭撫でられてる…。
…なんでだよ!?
何も言葉を発しないし!?
ぽんぽん
『おい、おきろ?』
「んー…。」
ゆさゆさゆさ
「おきるおきる…。」
『帰るぞ。』
その時のヤツの顔は
なんだか寂しそうで。
「あれ、私の…ランド…セル…。」
『ああ、この袋に入れといたよ。あのままじゃ恥ずかしいだろ?』
「わ、笑いこらえながら言うな!」
『ランドセル…くっくっ…。』
「このっ…、」
『ほら、帰るぞ。』
「クソ野郎…。」
『今日の物理はクッソ眠かったぞ。』
「いつもでしょ。あのおやじ声小さいし。」
『眠かったっつーか寝たけどな。』
「起きてる人いるんだ。」
『お前が寝すぎなだけ。』
「眠いもん。」
『だからわかんねーんだぞ。』
「絶対必要無いって。」
『数学得意だからってずるいわー。』
「ざまあ。」
猫のワッペンのマフラー。やはりこれは暖かい。あ、そういえば。
「これ、昨日のマフラー。」
『お、さんきゅー。』
「ありがとねー。」
『もう学校に忘れんなよ?』
「忘れませんです。」
昨日送ってもらった曲がり角についた。今日もここまででいいだろう。
『今日もここまででいいか?』
「いいよ、ありがとう。」
『気を付けて帰れよ。』
「ありがと。部活休んでまで来てくれて。」
『なんだ、分かってたのかよ。』
「バレバレだよ。」
『…やっぱ、家まで送ってくわ。』
「え?でも…、」
『部活休んでここ来たんだ。送らせて?』
「う、うん。」
また、一緒に歩き出した。
さっきより、距離が縮まっている気がする。
『あのブレスレット悪かったな。』
「え?」
あのブレスレットとは…ケバ女にぶんどられた月のブレスレットのことだろうか?
『ほら、俺の、元カノが…。お前のやつ、とったんだろ?』
「と、とったっていうか…盗んだって言われて…。」
『悪かった。あいつちゃんと自分の持ってんのに…気に食わなかったんだってよ。同じの持ってるやつが。』
「でも、ゲーセンでたまたま取れたやつだし…別に良いよ?」
『申し訳ないよ。』
「いやいや!」
『だから週末、出かけない?』
展開が早い。早すぎる。なんだこいつは。
「…へ?」
『ブレスレットの分、返すからさ!その辺、出かけようぜ!』
「あ、う、はいっ。」
『よし、じゃあちょうど家だし!』
「ありがと!」
『またなー!』
今日も小さく手を振った。ちなみに私の家は向かいなのだが。週末は彼と出かけるのか。早く寝よう。
ありがとうございました。
まだまだ続きます。
お楽しみに!