そして好きになる
第19部、ありがとうございます!
ゆっくりしていってください!
私は一度、母に聞いたことがある。
「どうして眞凛の眞は、真実の真にしなかったの?こっちの方が、かっこいいと思ったんだけどな。」
『あんまり綺麗な名前だと、知らず知らずのうちに眞凛にプレッシャーがかかると思って。あまり綺麗な名前にはしなかったの。』
「ふぅん。変なの。」
だから母は、涼夜にも、《涼しい夜に生まれたから。》という理由で、そのまんまの名前をつけたのであろう。
母は毎日疲れ切って帰るが、料理だけはしてくれた。何度も私がやると言ったが、涼夜の面倒だけでいいと料理はさせてくれなかった。
だが、やはりこんな生活ばかりしていると、母は日々壊れていく。私も精神的にきてしまい、中1の冬からぐれた。涼夜を迎えに行くこともやめた。買い物も全て、母に押し付けた。そんな私の相手をしてくれる友達や仲間などいなかったが、ただ一人、少ないお小遣いで街を歩いた。それだけだ。
そんなある日母はついにキレたらしく、私にこう言った。
『昔はあんなに良い子だったのに…どうして名前の通りには育ってくれないの!?嘘ばっかり、夜遊びはして家のことは手伝わない…そんな名前、貴女に相応しくないわ!!』
その日から、母は私の名前を呼ぶことはなかった。涼夜のように、《お姉ちゃん》と呼んだ。
そして私は自分の名前が大嫌いになり、クラス替えの時の自己紹介すらも憂鬱だった。
だが、1年の頃から友達などいなく、母子家庭で家事も手伝わず夜遊びを繰り返し教師に叱られ、授業中もずっと寝ているような私に絡む人などいるわけもなく、空気のような存在だった。
まわりの女子や男子、そして教師には、こう言われた。
『新山さんって、真面目にやればなんでもできる人だと思うんだけど。』
今通っている高校も、市ではレベルの低い方だ。部活だけは強いらしい。
この高校でも、バスケのことを少し考えた。だが、やはり中学の頃から劣り始めたコミュ力や体力の無さ、お金もなく病院へも行けない。諦める、その選択しか無かった。
そんな私が、名前を呼ばれて嬉しいと思ったのはいつぶりだろう。
彼、《三浦荘護》は私に様々な感情を思い出させてくれた。今は私の隣にいてくれる存在となった。
『なあ、さっきから何考えてんの?』
色々と思い出していると、彼はぼーっとしている私にちょっかいをかけてきた。
「んーん、何にも考えてないよ。荘護くん、明日からまた、学校行ける?」
『あぁ…でも…あいつらに色々されてることまわりにばれたし…行くのやだな…。』
「でも、もう私たち一緒なんだよ。もう、何も否定することはないの。」
『だけ…ど。眞凛こそ、嫌じゃないのか?俺と付き合ってるなんてきっとあいつらなら学校中に言いふらす。きっと俺の後輩にも伝って、俺のいないところで嫌がらせされるに決まってる…。』
「私、大丈夫だよ。今までも我慢できないわけじゃなかったもの。」
『でも…。』
「大丈夫!心配しすぎだよ。また明日から学校行こう?」
『ありがとう。何かあったら、すぐ言ってくれよ。』
「分かった。ありがとう。」
『ちなみに眞凛…。』
「ん?」
『もう6時過ぎてるけど帰らなくて大丈夫…?』
「うわぁぁあ!!!せ、せせせ制服!!!帰らなきゃ!!」
『だよな!?』
また6時を過ぎてしまった。6時を過ぎると完全に暗くなってしまって帰り道が怖い。ありえないほど。
急いで制服を着た。
『今日は着てくれてありがとな。またいつでも来いよ!』
「うん、ありがとう!今日も走って帰るね。ばいばい!」
振り返る暇もなく走った。やはり夜道は怖い。
その時だった。
______ガンッ
「えっ…?」
何かで、殴られた。
その場に倒れて力が出ない。
何かは分からない。
ただ分かるのは、
硬くて、重い物。
『良い加減にしな。アンタが先輩の彼女なんて、許されることじゃなィんだよ。』
またあいつらか。
意識が遠のく。
もう、どうにでもなれ。
最後までありがとうございました!
第20部もよろしくお願いします!