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新山 眞凛

第18部、ありがとうございます!


ゆっくりしていってください!

《新山 眞凛》


〈にいやま まりん〉


それが、私に与えられた名前だ。私はこの名前が嫌い。この名前のせいで、幾度となく苦しめられた。


昔は、この名前が大好きだった。母は私に、《嘘偽り無く、凛とした人生を送ってほしい》と、どこにでもありそうな理由でこの名前をつけた。

生まれた時から父がいなかった私だが、母から注がれる愛情は大きく、寂しい思いをすることはなかった。母が仕事でいなくても我慢することができた。

母は私が良いことをしたり、嘘をつかないでいると、『その名前は貴女にぴったりね。』と言ってくれた。この名前が大好きだった。

7歳の時、母に恋人らしき人ができた。その人は気付けばうちにいて、私と母を養ってくれた。私のミニバスにもよく来てくれて、応援してくれた。私はその人を父親だと思い、家族同然だった。

8歳になると、5月の中旬のある夜、弟の涼夜が生まれた。とても可愛くて、頑張って世話もした。涼夜にばかり愛情が注がれても、涼夜は可愛いので許す事ができた。

父親は、母と結婚と言うものをしていなかった。不思議なものだが、父親は私たちと一緒には住まず、毎日朝来て仕事に行き、帰ってきて夕食を食べると帰った。

ある意味母は、シングルマザーだった。

だが、私の生活は、幸せなものだった。

だが、私が中学校に入学する前日。

父親が自殺をする。なんと父親は詐欺の被害に遭っており、莫大なお金を亡くし絶望した。しかし母にもそれを打ち明けられず、とうとう追い込まれてしまったのだ。

その日は、私の制服姿を見てくれると早めに父親が帰っていた。学校帰りに母と涼夜を保育園まで迎えに行き、家に帰った時だった。父親の姿が見当たらず部屋へ行くと、大量の薬の箱と溢れた水。父親は息をしていなかった。この時ほどの絶望は、この先味わうことはないだろう。

入学式に母の姿は無く、帰りに涼夜を保育園まで迎えに行った。真新しいセーラー服を着て。保育園の先生に、『入学おめでとう。』と言われた。涼夜の手を握っていながら、思わず涙が溢れた。

父親の詐欺に関しては裁判で処理をし、借金などが残ることはなかった。お金も戻ってきた。

なぜだろう。

涙は出なかった。


『母さんお仕事増えるから…捻挫の病院…連れていけない…。部活…。』


私はミニバスで足を痛め、運動ができないでいた。だが、今の母に病院など求めては母が壊れてしまう。


「部活なんて私、しなくていいよ!涼夜の面倒見たいし!」


本当は大好きなバスケがしたかった。もう一度バッシュを履きたかった。けど、我慢するしかなかった。


私は毎日学校が終わると、急いで涼夜を迎えに行った。涼夜のお友達とも、すっかり顔なじみだ。


『いつもご苦労様。少し、ゆっくりしていく?』


「い、いえ大丈夫です。買い物もして帰らなくちゃいけないので。」


保育園の先生はとても優しかった。私が断るとわかっていて、毎日ゆっくりしていかないかと声をかけてくれた。


『ここは保育園なんだから。少しくらい涼夜くんを置いて、遊んできても良いのに。』


「良いんです、私、友達とかいないし!」


学校では、完全に孤立していた。部活もやらず放課後もすぐ帰ってしまうので、周りから声をかけられることもなかった。そのうちに、明るかった私の性格も、暗く静かなものになった。


私の名前嫌いは、そろそろ始まる事となる。

最後までありがとうございました!


第19部もよろしくお願いします!

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