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名前

第17部、ありがとうございます!


ゆっくりしていってください!

『俺、お前が好きなんだよ!』


「へっ…?」


頭が真っ白になった。彼は、私に、何を伝えたいのであろうか?


「今、…なんて…?」


『ば、ばかやろう2度も言わせんな!』


「へ、ぇ、えぇ…?」


『お、お前が…ま…眞凛が好きなんだよ!』


彼は初めて私の名前を呼んだ。名前を呼ばれるなんて、いつぶりだろうか。


『ばっ…ばかやろう…何黙ってんだ恥ずかしいだろうが…。』


「だって…な、名前…。」


彼は顔を真っ赤にしながらも私の顔をずっと見つめていた。


『なんだよ…お前、眞凛だろ…。新山眞凛だろ?』


「ま、眞凛だけど!」


『なにか、間違ってるか?』


「ままま間違ってない!!」


『知ってるわ!違う、聞きたいのはそれじゃない。』


「へっ!?じゃ、じゃあ何をっ…!?」


すでに重なりかけていた互いの手を彼はしっかりと重ね、私の手を強く握った。


『俺、眞凛が好きなんだよ。』


「聞いたよ!」


『その後だしっかり聞け!』


「は、はいっ!」


『お…お前…は?』


「私…?」


『お前はどうなんだって…、聞い、てる…!』


しっかり顔が見られない。今彼の顔を見たら混乱して目玉が裏に回りそうだ。


「わ、私…。」


『俺と、一緒にいてくれるか…?』


お互いに片言の日本語になっており緊張している。弱く風が吹き窓までが緊張しているようにカタカタと鳴っている。

こんなにいつまでも黙っていたら、心臓の高鳴りまでも彼に聞こえてしまっているんじゃないだろうか。ましてや彼の服を着ているのだ。意識が高まってしまう。どんどん顔が熱くなる。

あぁ駄目だ、こんな事を考えている場合じゃない。彼への返事をしなければならないのだ。だがどう返せばいい?冷静になれ、冷静に…。


「冷静になれ、冷静に…。」


『は、はひゃくしてくれ…心臓が口から出そうだ…。』


「私のこと…す、すすす好き、なの…?」


『す、好きだ!』


「そんなはっきり言わなくたって!」


『それが一番肝心だろ!?』


「でもまだ貴方のこと…何も知らない…。」


『これから知ってほしいんだ。俺もまだ、お前のこと何も知らない。』


もう心は決まっているのに、どうしてすぐ言葉にならないのだろう。早く吐き出してしまいたいのに。


「私も…、」


『私…も…?』


「そ、壮護くんと一緒にいたい…壮護くんのこともっと知りたいです…!」


私もまた、彼の名前を呼ぶのは初めてだった。とても恥ずかしい。今すぐ顔を隠してどこかに閉じこもりたい。


『ほっ、ほんとか!?本当なのか!?』


もう言葉は出なかった。恥ずかしくて仕方ない。首を激しく縦に振った。


『うわぁぁぁぁ。』


「はぇっ!?」


抱き締められた。抱き締められたのは初めてではない。なのに、前よりずっと嬉しく、こんなに落ち着けるのはなぜだろう。思わず、抱き締め返してしまった。


『ずっと言いたかったんだ。いくら遊び行っても雰囲気すら作れなくて…今日はかっこ悪いとこ見せちゃうし…。』


「そそそ壮護くん離れないで!!」


『おっ!?おお、おう。』


「今顔見られたら恥ずかし死にする…!!!」


『何それちょっと見たい…。』


「やだ離さないで!」


こんな体験は17年生きてきて初なのだ。何度も言うが本当に恥ずかしくて仕方がない…。それもそれで恥ずかしいのだが、離されないよう彼を強く強く抱き締めた。


『それに…名前。』


「名前…?」


『やっと名前、呼んでくれたな。』


「あっ…。私普段、名前呼ばれないし人の名前も呼ばないから…。」


『俺の名前、知ってたんだ?』


「そりゃ知ってるよ!三浦壮護!」


『はは、当たり。ご褒美。』


抱き締めたまま、優しく頭を撫でてくれた。ひどく落ち着いた。これ以上に無いくらい。


『これからも名前、呼んでいいか?』


「うん、もちろん。」


『眞凛は呼んでくれる?』


「当たり前。」


『ありがとう。』


《ありがとう》。その言葉を、私はこの時間忘れていた。私も言わなければ。


「あっ、ありがとう!」


『顔、見ていい?』


「顔赤くても笑わないでね…?」


『大丈夫、笑わない。』


そっと離れた。もう、心臓の高鳴りは治っていた。


『ありがとう。』


「こちらこそ。」


そう言うと彼は、少し下を向いて迷ってからこっちを向いた。顔が近付いてくる。

また混乱して訳が分からず彼の顔を見ていると。


『…目、瞑って。空気読みなさい。』


「えっ、は、はい…。」


目を瞑りながら変な顔をしていないか心配だ。もし、くすりとでも笑い声が聞こえたらその時はぶん殴っ…て…!?!?


彼は…触れるだけの、ごく簡単な、けれど優しく深く口付けをしてくれた。古臭いかも知れないが、《キス》って言うと恥ずかしい。素人感丸出しだ…。


「…ばかなの?」


『むしろ褒めろ。』


お互い顔が真っ赤だ。けれどもうそんなのも慣れてしまった。こんなに幸せなのは、初めてなのかもしれない。初めてがたくさんだ。


『ありがと眞凛。好きだよ。』


「私もだよ壮護くん。」


『あー恥ずかった…。』


「お互い様。」


一緒にいたいと思える人と一緒にいられて、名前を呼ばれる幸せも知った。幸せが、こんなに幸せだったなんて。

最後までありがとうございました!


第18部もよろしくお願いします!

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