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思わず目を瞑る

第十五部、ありがとうございます!


暴言注意です。


ゆっくりしていってください!

今日は雨だった。しとしとと地面に落ちる雨は重そうに感じた。

イヤホンを着けて音楽を聴きながら、いつもの通学路を歩く。雨の匂いは嫌いだ。

下駄箱を開けると、なにやら二つに折り畳まれた紙が。良い気はしない。一応見てみると、《クズ》の2文字。私、高校生にもなっていじめられるんだろうか。

二階に行く階段で、人とぶつかった。基本的に下を向いて歩くため、前から来る人は見えない。


「あっ…ごめんなさい。」


『いった。まじきもい。』


その女の人は私を強く睨んだ。見覚えのない顔だ。昨日の女の中にもいなかった。


『おいやめろよ!!!』


教室から、アイツの怒鳴り声が聞こえた。何かあったのだろうか。足早に教室のドアを開ける。


『俺とアイツは付き合ってもなんもねぇって!!』


『おい彼女来たぜ。』


「…は?」


『見ろよこれ。』


そう言って投げられたのは、私と彼のプールでの写真だった。角度によって、キスしているように写っているものもあった。


「…あんたらの後輩がこれを?」


写真を投げつけてきた、前までアイツと仲が良かった男たちにだけ聞こえるように言う。


『分かってんじゃねぇか。』


「…あほらしい。」


『どうせ2人っきりでプールなんか行っちゃってイチャイチャするつもりだったんだろ?』


「だから付き合ってないし、この写真も角度詐欺。キスなんかしてない。」


『ほんと良い加減にしろよ。なんでこんなことされなきゃいけないんだよ!!』


「落ち着いてよ、ここに事実は2人でプールに行ったってことしか無いんだから。」


『だから言っただろ?俺ら付き合ってないんだよ。第一、俺らが付き合ってたとしてもお前らになんの不都合があるんだよ!写真もよこせ、どこから入手したんだか知らねぇがお前らにそれを持ってる資格はねぇ。』


『好きにしろよ。彼女でもない女プールまで連れてくとか、お前どこまでも最低な男なんだな。』


「は?」


少し、少しだ。イラっとしてしまい、机を思いっきり殴って立ち上がってしまった。


「あんたら良い加減にしなよ。事実でもないこと人に突き付けて遊んで何が楽しいの?ほんっとどこまでも脳みそガキなのね。」


『はぁ!?ふざけんなよこのクソ女!!』


拳が飛んできた。反射的に目を瞑る。


『やめろ!!』


彼の声が近くで聞こえた。だけど間に合わなかったらしい。

鈍く重い音と共に、鋭い痛みが襲ってきた。昨日のより、ずっと痛い。出てきそうな涙をこらえて言った。


「手、出すとか…最低はどっちよ。」


頭にきたのか、ずかずかと教室を出て行った。教室には、私たちと野次馬しか残っていない。


『ごめん、間に合わなくてほんとごめん、ごめんな、痛いだろ保健室行こう?』


「ううん、大丈夫だよ。」


『だめだ、力の差は大きすぎる。手当てしないと痣になっちゃうから。ほら来て。』


手を引かれて保健室までたどり着いた。ここまでしっかり殴られた事などないので、頭がぐらぐらする。

幸い保健の先生はいないようで、彼が手当てをしてくれた。


『ほんと、ごめん…。』


今度は誰にも見られないように、とカーテンで周りを遮断した。

軽く切れて血の出た口の端を消毒し、赤くなった頬を冷やしてくれた。


「私、大丈夫だよ?」


彼は強く顔を横に振った。泣きそうな顔をしていた。


『ほんと、俺なんかのせいでこんな目に合わせてごめん…。』


「大丈夫だって…わっ、」


強く引っ張られた。思わず目を瞑ると、暖かかった。

彼が強く抱き締めてくれたのだ。


『ごめん、ごめんな。俺、お前が大切だから傷付けたくない。』


「何泣いてるの、またバカにされちゃうよ。」


『まじで、悔しくて、お前を守れなかったこと…。』


「そんな心配しないでよ。あいつらを挑発したのは私だし、自業自得だよ。」


『ごめん…。』


「私、少し休んで行く。先に戻ってて?」


『うん、わかった。無理するなよ。』


私の頭を軽く撫でて、彼は保健室を出て行った。ずっとそばにいてほしかったが、そんなわがままは言えない。彼のことだ、喧嘩したことも私が殴られたことも、担任に言ったりはしないことだろう。

しばらくベッドに横になってみる。頭痛は相変わらず治らない。困ったものだ。

少しだけ眠ってみた。多分15分ほどだったと思う。そろそろ起きなければ、と体を起こすと、ひどいめまいに襲われた。しかし起きないと授業が分からなくなる。

重い体を起こし教室まで歩くと、また、彼の怒鳴り声が聞こえた。


『もう、良い加減にしてくれよ!!!!』


先ほどとは打って変わって、力強く、色々な感情が混ざり合った醜い怒鳴り声だった。彼は教室から飛び出てきて、私をかわして行った。私を少しだけ見て。彼の口元には血が付き、目元には遠くからでもわかるようなくっきりとした痣ができていた。


『なんだ、次は彼女様のお出ましかよ。先ほどとは殴ってしまってすいませんねぇ。』


「いえ、どういたしまして。」


『なぁほんとに付き合ってねぇのかよ。どうせ帰りは2人でなにやらしてきたんだろ?』


「何も。」


『教えてくれたって良いじゃん。アイツは俺にとって大事な友達なんだからよぉ。』


「笑わせるね。仲良かったはずの1人に寄ってたかって殴ったりして、何が楽しいわけ?だから幼稚だって言ったの。むしろ、幼児こそそんなことしないけれど。」


『ほんっと頭にくることばっか言うよなあ。また殴られてぇの?』


「殴りたいなら殴れば?」


『人のことなめてるよな。』


予鈴が鳴ると、男らは私の元から離れ席に着いた。こいつらがここまでクズだったとは、どうしてアイツと仲が良かったのか分からない。仲が良かったのは、見かけだけかもしれない。

授業が始まっても、彼が戻ることはなかった。

心配になり、メールをしてみたが返信は無い。

お昼になっても彼は戻らず、下駄箱を見てみると靴が無かった。

何も持たず、学校を飛び出して行ったのだろう。きっと辛かったのだ。家にいると良いのだが。

久しぶりに1人でお昼を過ごしていると、彼からメールの返信が来た。

急いで開くと、中にはこう書かれていた。

《カッコ悪いとこ、見せてごめん。だけど俺もう、学校に行ける自信が無いんだ。情けないって分かってる。今は家にいるよ。だから大丈夫。安心して。》


〈良かった、家にいるんだね。学校終わったら行くよ。何も気にしなくて良いの。無理しないで休んで。〉


それきり、彼からの返信は来なかった。

きっと彼は、一見仲良しの男数人グループの中でいじめられていたのだ。まったく男も女もやることは変わらない。きっと彼が反抗して、ほんとに1人になってしまったのだろう。

彼が無理をしていたことに、気付けなかった自分が憎い。

とりあえず帰りは、彼の家に行ってみることにする。

話せること、話してもらえることがあるならば、話さなければ改善には繋がらない。

何より、早く彼と会って話がしたかった。

最後までありがとうございました!


第十六部もよろしくお願いします!

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