表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
続 恋姫†無双 -外史の傭兵達-  作者: ブレイズ
第2部:荊州侵攻
18/21

閑話01

「ーーふぅむ……妙な事になった…」


白髪混じりの長髪をうなじの辺りで一本に束ねた男が出来て新しい血溜まりの中で呟いた。


「ーーこれ正当防衛や緊急避難は適用……されるのか?」


雑多な武具ーー手にした剣や槍、斧には錆が浮いており、まともな手入れを行っていない事が判るそれらを握ったまま事切れている三人の男達は驚愕の表情をしたまま地面に倒れ伏していた。


「むしろそうでなければ困るのだが……なにせ本身を持って襲って来たのだからな……」


手にしている武器に血振りをくれた彼はそれを鞘へ納めると息を吐く。


「ーー人を斬殺したのは初めてだと言うのに…」


思いの外、動揺らしい動揺がなかった。


その事実を知った彼は思わず身震いする。


「…人としては失格かも知れんが剣士としては合格……かも知れんな」


とてもではないが自身が最も記憶に色濃く残る二人の教え子には聞かせられない台詞だ、と気付いた彼は軽く苦笑を溢す。


もっとも二人の教え子は彼の記憶の中では十代の若者の姿で止まってしまっている。


「…警察に出頭せねばならんのだろうが…此処は何処なんだ?そもそも此処は神奈川か?」










「ーー朴中尉、入ります。隊長、おはようございま……なんですかその顔?二日酔いの酷い奴みたいな顔してますよ」


「…おはよう中尉。……夢見が悪くてな」


朝の洗面が終わった中尉は和樹が寝起きする天幕へ赴き、その中へ入ると天幕の主は既に身支度を済ませて朝の一服をしていた。


野戦用の折り畳みベッドへ腰掛けつつ和樹は愛煙のタバコをふかし、顔をしかめながら中尉に視線を遣る。


「夢見が悪いだけでそんな頭痛と吐き気が併発してるような顔になるモノですか?」


「……ガキの頃、剣術の師匠に初めて怒られた時の夢を見たんだ」


「はぁ……ちなみにどのような内容で?」


「相棒と二人で師匠の家に生えてた柿の木から実を盗もうとして捕まった」


「……それは怒られるでしょう」


「しかも生えてた柿の木は甘柿じゃなくて渋柿というオチだ。まぁあの頃は口に出来る物はなんでも食おうとしてたからな」


「……現在もあまり変わりないような気がするのですが?」


「お前も言うようになったな」







「ーーあ~~う~~~」


「……副長。兵が見ておりますのでおかしな声を出すのは……」


「だって……昨夜の夢見が悪かったんだもん」


荊州の南部攻略を担当している将司は戦闘団を引き連れ、次の戦地へ行軍中の愛馬の背で彼の相方と似たような顔をしつつ心底気持ち悪い声を発していた。


「…どのような夢で?」


「ガキの頃に……師匠に初めて怒られた時の夢。柿の実を盗もうとして捕まった時の夢だった…」


「そりゃ怒られるでしょう」


「……何処の誰かも判らない子供にする説教じゃなかったけどな」


「…まさかとは思いますが…それが剣術を習う切っ掛けだったなんてオチは……」


「お、良く判ったな?」


「……………」


「まぁ色々と教えて貰ったし色々食わせて貰ったしな。ゼッテー頭上がらねぇわ。正座しろって言われたら間違いなく正座する自信がある」


「…部下としては見たくないような…」


「…師匠はこっちの世界に居ねぇからまずねぇよ。…つーか、もし居たら俺と相棒が大変な目に合う。まず殺人に音信不通だろ、んでもって傭兵になったこと、ばあさんの葬式に顔出さなかったこと……言い出したらキリねぇわ」


ーー次の戦地へ向かう彼等はこの先に待ち受ける“受難”をまだ知る由もなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ