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続 恋姫†無双 -外史の傭兵達-  作者: ブレイズ
第2部:荊州侵攻
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廬江郡 第1戦闘飛行隊 飛行場



「ーー弾薬庫から有りったけの爆弾と弾薬を搬出しろっ!!」


「ーー全飛行中隊の全搭乗員は指揮所の前に集合!急げ!!」


「ーー爆撃機に爆弾を吊るすぞ!!急いで運べ!!」


飛行隊が詰める飛行場はあらゆる場所で人員が慌ただしく動いていた。


地下に築いた弾薬庫から整備兵や手空きの兵士達がバーゲンセール宜しく次々と搭載させる爆弾を運搬用の爆弾台車へ乗せて運び、機銃に詰める金属のベルトリンクで繋げられた弾薬を首や肩に掛けて慌ただしく搬出する。


駐機場で飛び立つ時を待つ戦闘機や爆撃機には燃料が惜しみ無く注ぎ込まれており、飛行場全体が怒号の坩堝と化していた。


「ーー暁作戦の発令が韓将軍閣下から下った。我々は別命があり次第、出撃する。主たる任務はーー荊州へ侵攻する部隊の要請に応えての航空支援となる」


指揮所の前に集合した搭乗員達に作戦の発令を告げた楊中尉が部下へ目配せし、荊州の地図を広げさせる。


「ーー事前に通達されたが今回の作戦は我軍が発足して以来、最大規模の作戦になる。よってこれまでの単一兵科ごとでの作戦遂行は難易度が高くなる想定が出た為、各連隊を基幹とした諸兵科連合部隊……つまるところ二個戦闘団を構成する事となった」


戦闘団とは陸軍の複数兵科の戦闘部隊が、諸兵科連合部隊かつ単一の部隊として連隊規模の兵力で編成されたモノを指す。


戦闘部隊は通常、歩兵や戦車の等の単一兵科で構成されている。


これは単一兵科であった方が管理、教育、訓練、補給等が行い易い為であるが各兵科には各兵科ごとの利点や弱点が存在する。


各兵科部隊の持つ弱点をカバー、または利点を活かす為に、諸兵科連合部隊ーー戦闘団を臨時で構成する事があるのだ。


「第1連隊を基幹とした韓甲戦闘団、第2連隊基幹の呂猛戦闘団は荊州江夏へ進出する。この際、敵軍と会戦する可能性が高いが、これを圧倒し、完膚なきまでに粉砕する」


指揮棒を卓上へ置いた楊中尉は改めて搭乗員達を見渡しつつマッチを擦り、吸い口をフラットカットで切った葉巻へ火を点け始めた。


「その後は各戦闘団ごとの前進となる。制圧した各地点で戦闘団の工兵が簡易の飛行場を設営する手筈となっており、戦線の拡大に合わせて新しく設営された飛行場が前線基地となり、各飛行中隊は状況如何でそこでの補給、緊急着陸等を実施する事となる」


これからの動態を掻い摘んで説明し終えた中尉は葉巻を銜え、口内で転がした紫煙をゆっくりと吐き出す。


「…俺が一番懸念しているのは、お前らの練成不足だ。本来なら一端の航空機の搭乗員になるまでには最低でも5年は必要になる。たった1年じゃフラフラヨチヨチで飛ぶのがやっとだ。編隊組んで飛ぶには、まだまだ訓練が必要。…ぶっちゃけりゃ、戦場の空を飛ばすのには反対だ」


葉巻を燻らせつつ搭乗員達を見渡せばーー全員が唇を噛み締めていた。


「ーーだが事態が事態だ。未熟だろうと力を貸してもらうぞ。爆撃中隊は吊るした爆弾の重さで航続距離が短くなる事に注意しろ。無理に急降下して投弾しなくても良い。水平爆撃で投弾しろ。戦闘機搭乗員は機銃と搭載した50kgで敵軍に打撃を与えるぞ。あまり高度を落とすな」


「「「了解っ!!」」」


「作戦の達成には俺達の航空戦力が不可欠だ。下手くそは下手くそなりに飛べ。格好良くなんて考えるな。ちゃんと飛んで、ちゃんと帰ってくりゃそれで充分だ」


「「「了解っ!!」」」


「では唱和を実施する。第1中隊長」


「第1中隊長、飛行隊唱和実施します」


指名されたかつての黒狼隊からの部下が楊中尉へ敬礼する。


それに中尉は軽く答礼した後、実施と返答した。


「ーー搭乗員、手ぇ腰 開脚!」


第1中隊長の号令で全搭乗員が両手を腰に当て、脚を肩幅に開く。


「 飛行隊唱和!!」


「「「飛行隊唱和!!」」」


「常に警戒せよ!!」


「「「敵は何処にいるか分からない!!」」」


「敵より先に発見せよ!!」


「「「先に発見して徹底的に叩け!!」」」


「飛行機乗りに必要なものは!!」


「「「繊細な技術に的確な判断!!」」」


「それ以上に必要なものは!!」


「「「一に度胸、二に度胸、三四がなくて五にクソ度胸!!!」」」


「ーー第1中隊長、唱和終わります!」


これを“唱和”と呼んで真面目にするのだからある意味で大したモノだ、と“唱和”を考えた張本人は第1中隊長の敬礼と申告に答礼で応える。


「ーー全搭乗員は各中隊ごとの搭乗員待機天幕にて別命あるまで待機。各中隊ごとに分かれ、掛かれ」


「「「応っ!!」」」


搭乗員達が中隊ごとに散っていったのを認めつつ楊中尉は紫煙を燻らせる。


「…ところで中尉?」


「ん~~?」


「今更ですけどアンタも出撃るんですか?」


「あったりまえだろ。俺が飛ばなきゃ誰が飛ぶってんだ」


ーー飛行服の上に落下傘を装着する縛帯を装具した格好のまま葉巻を燻らせながら楊中尉は口角を釣り上げた。

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