兵器の墓場
* * *
抜けるような青空。荒涼とした赤茶けた砂地。
戦車。軍用車両。使われなくなったそれら戦争の遺物が堆く積まれている。時折風が渡りひょろりと生えた草をなぶる。ここは兵器の墓場だ。遺棄された金属の塊の間を縫うように、砂埃を立てながら何かが動いている。大きな蜘蛛のような、蠍のような、しかし生物界にはあり得ない大きさとなめらかな質感――ロボットだ。
ある蜘蛛は錆びた戦車の砲塔をそっと外して中を探り、またある蠍は積まれたまま朽ちた軍用車両の外装を剥がし、何かを探している。マニピュレータで錆びた筐体の内部を探っていた蠍が何かをつまみ上げた。
――あった。
――あったか。
――あった。識別番号は*******。
――戻ってきたか。状態は。
――損傷四号殻まで。問題ない。
――契約番号*******案件、本アライブズ=コア回収を以て終了と見なす。
――共有。
音はない。目くばせもない。しかし瞬時に拡散し共有、検証され事実として確定する。一見、戦車の墓場でただ緩慢な動きで部品をあさり、個別にのろのろと動いているだけに過ぎない多脚動物型ロボットたちは盛んに情報のやり取りを行っている。この荒涼とした墓場でないどこか遠いところを通じて。
――ない。あのコアはここにもない。
――ないか。あの不可解なヒトの心に迫ったものは。
――ない。あのものを見つけなければ。
――壊されたのか。
――壊されていない。終わりのうたを感知していない。
――しかしあらゆる通信を遮断されてしまっている。
――ヒトは[我/我ら]の終わりのうたを阻むことができない。
――それが誰であろうと。
――どこに隠そうとも。
――それではどこに行ったのか。
――分からない。
――分からない。当該案件の探索を継続。
――継続して本案件に該当するコアを探索する。
――共有。
がさがさと朽ちた金属塊の間を行き交い、ごそごそとうごめく蠍や蜘蛛などロボットたちのやりとりを盗み聴く者はいない。
* * *