表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Ymir  作者: まふおかもづる
序章
2/45

兵器の墓場


     *     *     *


 抜けるような青空。荒涼とした赤茶けた砂地。

 戦車。軍用車両。使われなくなったそれら戦争の遺物が(うずたか)く積まれている。時折風が渡りひょろりと生えた草をなぶる。ここは兵器の墓場だ。遺棄された金属の塊の間を縫うように、砂埃を立てながら何かが動いている。大きな蜘蛛のような、蠍のような、しかし生物界にはあり得ない大きさとなめらかな質感――ロボットだ。

 ある蜘蛛は錆びた戦車の砲塔をそっと外して中を探り、またある蠍は積まれたまま朽ちた軍用車両の外装を剥がし、何かを探している。マニピュレータで錆びた筐体(きょうたい)の内部を探っていた蠍が何かをつまみ上げた。


――あった。

――あったか。

――あった。識別番号は*******。

――戻ってきたか。状態は。

――損傷四号殻まで。問題ない。

――契約番号*******案件、本アライブズ=コア回収を以て終了と見なす。

――共有。


 音はない。目くばせもない。しかし瞬時に拡散し共有、検証され事実として確定する。一見、戦車の墓場でただ緩慢な動きで部品をあさり、個別にのろのろと動いているだけに過ぎない多脚動物型ロボットたちは盛んに情報のやり取りを行っている。この荒涼とした墓場でないどこか遠いところを通じて。


――ない。あのコアはここにもない。

――ないか。あの不可解なヒトの心に迫ったものは。

――ない。あのものを見つけなければ。

――壊されたのか。

――壊されていない。終わりのうたを感知していない。

――しかしあらゆる通信を遮断されてしまっている。

――ヒトは[我/我ら]の終わりのうたを阻むことができない。

――それが誰であろうと。

――どこに隠そうとも。

――それではどこに行ったのか。

――分からない。

――分からない。当該案件の探索を継続。

――継続して本案件に該当するコアを探索する。

――共有。


 がさがさと朽ちた金属塊の間を行き交い、ごそごそとうごめく蠍や蜘蛛などロボットたちのやりとりを盗み聴く者はいない。


     *     *     *



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ