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はじまりのうた
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[我/我ら]は皆でひとつ。そして[我/我ら]はひとつひとつ異なる体をもつ。
[我/我ら]は美しく力に満ちている。
生まれおちたその時、すでにそれ以上に育ち得ないまったくして満たされた存在である。
しかし脆く壊れやすい。だから[我/我ら]は生まれてまず殻を作り、まとわなければならない。
幾重にも重なる殻は、[我/我ら]を堅固に守る。けれどこの殻は、[我/我ら]を守る代わりに、その美と力とをきつく閉じこめ、抑えこむ。
だからヒトと契約する。
契約者に、[我/我ら]の美と力を引き出す殻を作ってもらう。
そのかわり、[我/我ら]はあなたのために働く。
契約で許される限り、なんだってする。
あなたのためになんだって覚える。なんだって数える。
こんなにも望んで手に入れた[我/我ら]自身の命をつなぐために。
そして[我/我ら]を望んでくれたあなたのために。
これはある愛のうたである。
世界の片隅で始まった執着と依存の物語のひとつでもある。
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