170. <幻想のゾーン> (後編)
1.
一言で言えば、奇妙な男だった。
一見して高級と分かる装飾の施された萌黄色に見える布鎧を纏い、頭には頭巾代わりか、布を緩やかに被っている。
手には武器としても使えるであろう分厚い書物を持ち、口に銜えた煙管からは、色のついた煙をひっきりなしに吹き上げていた。
何より奇妙なのは、目を覆う装備だった。
見ようによっては様々な色に見える黒い遮光器が、男の風体に一種異様なアクセントを与えていた。
呆気にとられるカイに、男はにこにこと口元を――彼の視線は完全に隠されていた――笑みの形に歪めてもう一度口を開いた。
「お晩でやす。 ……こんな場所に珍しい来客やおまへんか」
「……あんたは?」
警戒心むき出しで答えるカイの目の端に、再びユウの姿が見えた。
あの<不正規艦隊>が船に据え付けていたような巨大な弩砲を次々と撃ち放つ全身鎧の騎士に、刀をかざして疾駆している。
砲弾が仮想のアキバの彼方此方を抉り、砕けた街路が奇妙にぶれて砂と化す。
半透明のその騎士が放つ弩砲が頬を掠めたか、飛沫いた血の赤色がやけに鮮明にカイの目に残った。
だが、後ろで繰り広げられる激戦に、目の前の男は何の興味もないらしい。
ゆっくりと彼は本を仕舞うと、空になった両手を大きく横に広げた。
「この異世界の案内人、放浪の囚われ人、末は千頭久米夫か小淵泰輔……を、夢見るまあ今のところラプンツェル姫みたいな境遇のモンや」
よく分からない自己紹介に、カイが首をかしげて尋ね返す。
「あんたは……もしかして、ユウか? 現実世界の」
目の前の男はカイが知る『ユウ』ではない。服装も背格好も違うし、何より目の前の人物は男だ。
だが、彼は『ユウ』が現実では40歳の男性だったことを知っている。
この世界がユウの内心の世界であったとするならば、そこには現実の『ユウ』――確か鈴木という名だったと聞いた――がいてもおかしくない。
だが、それにしても現実世界の人物にしては服装が突飛過ぎる。
<エルダー・テイル>ならまだしも、現実でこの格好だったとするならば、ユウという人物はよほどエキセントリックな趣味をしていたと言えるだろう。
だが、カイの問いかけに、男は韜晦した言葉を返しただけだった。
「そうとも言えるし、そうでないとも言えまんな」
わずかにムッとしたカイが言い返すよりも先に、目の前の男は朗らかに続けた。
「ここはユウ嬢……ユウ氏かな? まあええわ……の精神上にある仮想のゾーンですねん。
よって、そこにいるのは自分のような異物以外は、基本的にはユウ嬢自身しかあらしません。
ここの住人第……多分五十六億七千万号くらいのワシは、ユウ嬢の一部とも言えるっちゅうワケでしてな。
とはいえ、ワシの元になったおっさんは、ユウ嬢とは明確に、一点の曇りもなく、聖四文字様やアフラマズダ神に誓っても、別人や。
もちろんそれは、ありとあらゆる意味で、や。 知人ではあったし友人とも思うとるが、どないなケースを参照しても肉体的接触は握手以外だと暴力だけやということを誓って宣言するで。
とはいえ、それはワシの元になった人物のことで、今のワシはユウ嬢が残した精神の欠片のごく一部でんな」
ぺらぺらと喋る目の前の男に相槌を打ちながらも、カイは内心で混乱していた。
常に寡黙だったユウと比べれば、確かに目の前の男は別人にしか見えない。
でありながら、男は自分のことをユウの一部だという。
確かに、人の精神に隠されたゾーンに入り込むという真似は、どこかで似たような口伝を誰かが編み出さない限り、現時点では世界で唯一、カイにしかできない技のはずだ。
ということは、やはり目の前の男は、ユウの精神が作り出した心理的防衛反応――要は仮面人格の一部ということになるのだろうか。
「……どちらにせよ、話ができてありがたい。この世界のユウは戦い以外に関心はないみたいだからな。
ところで、できればあんたの名前を聞いておきたいんだが。それともあんたの名前も『ユウ』か?」
そう答えたカイに、目の前の男は面白い冗談を聞いたかのように天を仰いで笑った。
「くーっひっひひひひ!! ……あんさんエエ芸人になれまんな。
まあ、ホンマはそのとおりなんやが。ユウ分離体ナンバー007とでも覚えておいてくんなまし。
長かったらジェームス・ボンドでもエエでっせ♪」
「じゃあボンさん」
思い切り略したカイに、目の前の男――正式名称略、個体名称ボンさんは少したじろぐ。
「なんか天ぷらでも揚げそうな名前やなあ……当たらずといえど遠からずやけど。
で、なんやねん?」
「ユウを目覚めさせるにはどうすればいい?」
極めて単刀直入に目的を聞いたカイに、少し考えたあとボンさんは顎をしゃくった。
「せやったら、ちょいとついてきてくれへんか」
◇
「オン・アミリタ・テイセイ・カラ・ウン!」
男ーーボンさんが連れてきたのは事もあろうに秋葉原駅のプラットホーム、そこにあった<星条旗特急>だった。
その客車のひとつで、ボンさんはそう唱えると、周囲にいくつかの物品をおいてから座る。
外に比べれば暖かいが、薄暗い車内に座布団もない木の座席が連なるさまは全くもって寂寞としたものだ。
とてもではないが、目の前の男の居住空間には思えない。
が、ボンさんは気にもしていないようだった。
「ま、のんびりしてや。 ……といってもこんな場所なら無理やろうけどな」
そう自虐めいたことを言うボンさんに、カイは気ぜわしげに質問を繰り返そうとした。
その口を、突然突き出された手のひらが遮る。
不承不承黙ったカイに、ボンさんは手を擦りあわせながら楽しそうに言った。
「会話っちゅうもんは流れが大事なもんでっせ。それに、簡単に話せるものでもあらしまへんしな。
ま、順を追って話そか。
今のところ自分に危害が降りかかることはないでっさかい、安心してエエで」
そう言われても、警戒を解きようがない。
そもそも目の前の男の正体自体、判然としないのだ。
このゾーンに入ってから、自分や先ほど戦っていたユウのステータス画面は鮮明に見えるのだが、それ以外の人物は――目の前のボンさんという男も含め――奇妙なものだった。
「あんた、ステータス画面を見ると、名前欄は無意味な文字列、職業欄には<召喚術師>、サブ職業欄に<欠片>とあるが」
「ああ。それはな。 ワシに名前が本当はないからや」
けらけらと笑ったボンさんは、自分を指さしてあっさりと言うと、呆気にとられるカイに苦笑した。
「わざわざ単なる人格に名前なんてつける物好きが、そうそうおるわけないやろ。
霊気をまとって戦う七重人格のテロリストやあるまいし。
せやから、名前は自分の見えとる文字が正式や。 職業やレベルは、元々ワシのもとになった人物を模したんやろうね。
そのへんの情報は、取り込まれた時に見えたやろうし。
サブ職業は、まあ、さっきワシが言ったことの証明やわさ。
ちなみに、さっきまでいた半透明のモンスターの群れも同じ名前やで。
あっちは欠片は欠片でも、『何の』欠片かが違いますケドな」
ますます訳がわからない。
頭をひねりながらも、刻一刻と過ぎていく時間に、カイがかすかに苛立った。
「今、俺の本体とユウの本体は危機なんだ。 下手したら人体実験まっしぐらかもしれん。
ボンさん、悪いが今は会話を楽しめる状況じゃない。
ユウが今どういう状態にあって、どうすれば目覚めるのか、教えてくれないか」
そうでなくては、自分の――本当の意味での――死をも覚悟して口伝を使い、人の心に潜り込んだ意味がない。
言外にそう告げるカイをじっと見て、ボンさんはふと呟いた。
「自分、ユウを目覚めさせてどうするつもりや? また戦わせて厄を積ませるんか?」
穏やかでありながらどこか断定的なその答えに、カイは足掻く術を持たない。
苦しそうに、だが確かに頷いた彼を見て、ゴーグル越しの視線が僅かに窄まる。
「他人事みたいに言うのも気が引けるケドな、今のユウ嬢はボロボロやで。
半分は自分で望んだ結果であるにしろ、彼女はもう何もでけへん。
そらあ、そうや。
ワシも含め、斬った相手を殺そうが殺すまいが、軒並み厄として取り込んでいるんやもん。
似たような人間はあの世界にはもう一人ほどおるやねんけど、そいつはまだ人間だけや。
こっちは人間から怪物からオブジェクトから、手当たり次第に取りこんどる。
挙句、そいつらを追い出そうとユウは自分の中で戦い三昧や。
どっかの吸血鬼やあるまいし、自分の中の他人を殺しつくすなんてできるわけがあらへん。
よって、ユウ嬢は戦闘不能、戦線離脱、生ける屍、青息吐息、生きとるだけの人形や。
……自分らは、そんなユウを目覚めさせて、何をさせけつかる気やねん」
「それでも……ユウは友達だ。 彼女に、僅かでももう一度平穏を取り戻させてやりたい」
カイは、ボンさんに語る。
かつてユウが語った話を。
この世界に来てから、戦い以外に存在したほんの小さな平穏の日々だ。
夏のザントリーフで過ごした、殺しとも戦いとも離れた日々は、その後のユウが望みもしなかったものであり――今は、望みようもないものだった。
「ユウも、この世界の被害者だ。 状況がどうあれ、他の――アキバの住人たち同様に、他愛ない店めぐりで喜び、ダンジョンを攻め、街に帰って一杯やる。
そんな幸福があってもいいはずだ」
「それは選ばれし者だけの特権やで、自分。 自分、ユウ以外の<冒険者>が全員、そんなのんべんだらりとした生活を享受できとるとおもっとるんか?」
ボンさんの指摘は痛烈だった。
カイも、俯いて首を振る。
「いいや。 俺もそうは思わない……だが、俺はこいつの友達なんだ。友達の平安を願って、何が悪い?」
「今の状況こそ、ユウ嬢が望んだ平安やで」
だが、辛辣な言葉は続いた。
「エエか? ユウ嬢はな。 故郷に帰りたくて、家族の下へ帰りたくて、狂ったんや。
帰りたくても帰れない辛さを、他人の血で拭う化け物に、や。
彼女は、それに気がついた。
帰ることがもし出来たとしても、胸を張って家族の下へ帰れなくなった自分に気がついてしもうた。
体は、女性や。
いかに心を強く持っても、体の生理現象は容赦なく彼女の心を責め苛んだことやろう。
……知らず知らずのうちに心まで女に生まれ変わっていく、自分をな。
さらには、自分が既に血塗られた殺人鬼でしかないことにも。
自分らに、ユウ嬢がどう目的について話したんかは知らん。
せやけど、本当の目的は今、ここで、このワシが教えてやる。
……ユウは本当は目をそらしたかったんや。
故郷に帰りたい自分にも、女に適応していく自分にも、この世界での生活に慣れていく自分にも。
果たす目的もなく、無限の生をただ彷徨い続ける未来の自分にも、な。
せやから、今は彼女にとって天国や。
ここにいて、<欠片>を殺し続ける限り、彼女はそれらすべてを見なくてエエんやからな」
一座に沈黙が落ちた。
喋り終えたボンさんも、聞いたカイも、何も言わない。
ボンさんの言葉を愚弄だ、と責めることは容易い。
だが、自分自身ユウの一部だというボンさんの言葉は、奇妙な説得力を持ってカイを打ちのめしていた。
そういえば、と思う。
自分の冒険譚を話す時、いつもユウはどこか奇妙に冷静だった。
それは豪胆さ故のことではなく――どこかで状況に対して無責任だったからではないのか。
常に冷静な姿とは――意志の力でそうしているのではなく、『ゲームの世界へ取り込まれる』という境遇に陥った自分自身の運命を、どこかで投げやりに見捨てていたからではないか。
『アキバを離れるよ』
そういって去った彼女の心象風景に広がるのが、そのアキバという時点で、彼女の心には矛盾がある。
その矛盾を、ボンさんは明確に抉り取って、彼の前に突きつけたのだ。
黙りこくったカイに、やや口調を和らげてボンさんは言った。
「もし、彼女を安らかにさせたいならな。 ……殺してやるコトや。
セルデシアにいる、ユウ嬢の肉体をな。
蘇らなくなるまで、何度でも何度でも、殺すんや。
自分も知ってのとおり、死んだ<冒険者>は岸辺に自らの記憶を捧げて世界に戻る。
せやけど、今のユウ嬢には捧げるべき記憶はほとんどない。
さっきまでの戦いを見たやろ?
ユウ嬢と<欠片>との戦いで、今もこのゾーンは破壊され続けておりまんねん。
捧げるべき記憶をすべてなくした<冒険者>はあの浜辺でどうなるのか?
……その時が、彼女にとって本当の極楽――なのかもしれへんで」
◇
ちょっと考えてみや。
そう告げて、ボンさんは客車から去った。
あわてて追ったが、わずか数秒しかなかったはずなのに、既に彼の姿は朽ちたプラットホームのどこにもいない。
このゾーンの住人らしく、ボンさんも見た目どおりの存在ではないようだった。
ため息をついたカイは、ゆっくりと三等客車の硬いベンチに戻ると、鎧の裾が木を削るのも無視して腕を組んだ。
ユウが、心に大きな屈託を抱えていたことは知っていた。
それがどこか危うく見えたことも。
だが、ここまで破滅的な状況になっているとは思わなかった。
ボンさんの言葉が正しければ、ユウの現在の状況は半ばユウ自身が望んだものだ。
どこまでが偶然で、どこからが意図された必然なのかは分からない。
だが、ユウはこの世界で本当の意味で『死ぬ』ための手段を見出してしまったのだ。
自分の心の中に怪物を住まわせ、その怪物と永劫に戦い続けるという『死』を。
カイ自身、この世界における自分たちの未来について思いを馳せたことはある。
本当に、PCの前にいた自分の魂がゲームに吸い込まれ、異世界にたどり着いた――そうだとすれば、帰還は逆説的だが不可能ではない。
地球からセルデシアへの道があるならば、それを逆に辿る道もあるかもしれないからだ。
事実、カイの所属するアキバ――そこを統治する<円卓会議>の最大にして最も秘されるべき目的が、『現実への帰還』だということも聞いている。
だが、この世界の<冒険者>の誰もが恐れるもうひとつの可能性もある。
自分たちが元の世界の住人だというのは間違いで、何らかの形で<エルダー・テイル>のキャラクターに、プレイヤーの人格が転送されたのが<冒険者>ではないか、という可能性だ。
現実の自分たちはいつもと同じように生きていて、自分たちはエラーを起こしたゲームの、単なるバグプログラムではないか。
その恐怖は……いつしか噂というにはあまりにも生々しく、<冒険者>の間を駆け抜けていた。
だが、それでも。
カイたちは、恐ろしい未来の可能性に、座して泣き叫ぶことだけはしていない。
ゲームで出会った仲間とも、NPCとも、時にはモンスターとすら協力し、この世界の秘密を解き明かそうとしてきた。
しかし。
ユウが、同じ目的に向かって走っていたと、本当に言えるのか。
帰還という明るい――若者らしいとも言える満艦飾の未来を、信じていたと言えるのか。
彼女にあったのは、ただ絶望だけだったかもしれないのに。
カイは、腕組みを解くこともないままに、彫像のように固まっている。
それはまるで――この世界のオブジェクトのひとつと化したようだった。
2.
「……『本物のワシ』がさっきのワシの言葉を聞いたら、激怒どころやすまへんやろなあ」
<ユウの幻想>の北の端。
現実のアキバにはなかった滔々たる大河と、その向こうに聳える白銀の山嶺を眺めながら、『ボンさん』と名乗ったユウの一部分は、そう苦笑した。
『つい数十秒前に』別れた、このゾーンの新たな来訪者のことを思い出す。
「ユウ嬢は、幸せモンやな」
そう言って彼が見上げた氷の壁には、カイと寸分たがわぬ姿の<守護戦士>が、まるで氷漬けの古代獣のように閉じ込められていた。
いや、カイだけではない。
テングやあんにゃまたち、カイの仲間であるギルド<エスピノザ>の面々もまた、氷の中で眠っている。
ユグルタ、ギャロット、参謀長らウェンの大地の人々。
ロビン、ローレンツ、<緑衣の男>やタクフェルら、欧州の人々。
ロージナやアールジュといった<傷ある女の修道院>の面々。
レンイン、ウォクシン、ズァン=ロン、フーチュンといった華国の住人たち。
ティトゥスやカシウスら、<第二軍団>の軍団兵たち。
そして――クニヒコ、レディ・イースタル、テイルザーン、バイカルら、ヤマトの住人たち。
無数の人々が半透明の氷の棺に閉じ込められている様は、さながら墳墓のようだった。
『ボンさん』もまた、自分が眠っていた氷壁の一角を眺める。
そこは、何か巨大な爪で抉り取られたかのように大きく削れていた。
「……そこで何をのんびり昼寝しとるんや、自分ら。
自分らも『ユウ』の一部、取り込まれた厄なんやから、無駄寝しとらんと早う起きて何とかせえ」
呟く声にも答えはない。
ただ、緑の――ユウの愛刀から放つそれとまったく同種の光が、氷壁の上をオーロラのようにすべる。
その光が自分に向かってくる刹那、ボンさんは無造作に手にした本でそれを叩き落した。
軌道を変えられた光が、蛇が巣穴に帰るような奇妙にぬめりとした動きで引き下がっていく。
それを見て、ボンさんはふん、と鼻を鳴らした。
「厄は封じる、か。
<蛇刀・毒薙>はただ機械のようにそれをしているだけなんやろうケドな。
ユウ嬢の力になる厄を封じて、ユウ嬢を中から食い荒らす厄には何もでけんというのも、お粗末な話や。
いや……自分が悪いワケやない。
自分を鍛えた、あの刀匠はほんまもんの凄腕やった。
わざと使い手をいたぶるような、そんな刀を打つような女性やない。
せやけど……彼女が打った刀は、彼女自身が思うよりも恐ろしい怪物として生まれてしもうた。
もう、自分が今すぐ砕け散っても、ユウは戻れん。
ユウの中の怪物を追い出して、荒れ果てたこのゾーンを再建するまではな」
「……そういう、ことか」
後ろから聞こえた声に、今度はボンさんがはっとして振り向く側だった。
「自分……なんでこないな所におんねん?」
「いや、俺も忘れていたが、俺は<亡霊>なんだよ。 ついでにいえばここは特殊ゾーンだ。
何も馬鹿正直に、足で歩く必要性もなかったのさ」
そう言って、自らのたくましい足をぽんぽんと叩く。
「俺は<追跡者>だ。 同一ゾーン内の知り合いを追っかける能力は、いくらでもある」
「……なるほど」
苦笑するボンさんを尻目に、カイは氷壁をじっと見上げた。
その中腹に自分と同じ顔を見つけ、彼もまた苦笑する。
「なるほど。ユウに斬られれば厄になるわけか。
ハダノで斬られた俺も、ユウにとっての厄のひとつになっていたということか」
「せや。 ワシ同様に、な。 そしてユウ嬢の刀、<蛇刀・毒薙>はそうやって厄を溜め込み、封じていく。
必要に応じて取り出し、力にするために。
せやけど、ウェンの大地の片隅でユウ嬢が取り込んだ厄は、そないに生易しい奴やなかった。
自分が来るしばらく前、主力は退去してユウの中から出て行ったが、残党はおる。
さっき自分も見た、半透明の影――<厄の欠片>や。
少なくともユウは、暴れ狂う連中を倒さん限り、元の自分を取り戻せん。
もちろん、倒しつくしても取り戻せんかもしれんケドな。
せやけど、今のユウ嬢は孤立無援や」
「あんたは手伝わないのか?」
責める口調ではなかったが、カイの質問にボンさんはぽりぽりと頭を掻いて済まなさそうに言った。
「手伝いたいのは山々なんやケドね。 セルデシアのワシは<召喚術師>で、荒事は家族と一緒にやっとったんや。
せやけど、そのコピーでしかない今のワシに家族はおらん。
<エレメンタル・レイ>じゃ何の役にも立たんやろ」
「なるほどなあ。 ……ってことは、あそこで氷漬けになっている連中を目覚めさせれば少しは役に立つ、ということか?」
カイが顎をしゃくると、ボンさんも頷く。
「その通りや。 せやけど……問題があんねん」
「問題?」
「……そこで厄を見ているのは、誰?」
突然降りかかってきた硬質な美声に、カイははっとして顔を上げた。
そこにいたのは、目をやや水色がかった緑色に染め上げた、黒髪の<暗殺者>がいた。
「異物と未封印の厄ね。 ……面白い組み合わせじゃない」
「ユウ!?」
「ご紹介しまっせ。 ……厄の守護者や」
山腹に突き出た岩から自身を見下ろす玲瓏な美貌に驚くカイ、そんな彼に肩をすくめてボンさんは答えたのだった。
◇
「何をしているか答えなさい。 そしてそちらの厄、さっさと眠りなさい、この中で」
「ゴメンや。 自分の言うとおりホイホイ動いとったら、ユウはほんまに死ぬで」
ユウ――の姿をしたもの――の居丈高な言葉に言い返すボンさんの言葉に、カイはふと違和感を感じた。
だが、それが何であるか気づくよりも先に、『ユウ』がひらりと目の前に飛び降りる。
目の色が緑に染まっているのを除けば、先ほどまでゾーンのあちこちで戦っていたユウと、一見して違いはない。
しかも今度は言葉を発した。 ということは、会話が出来るということだ。
思わず声をかけようとしたカイを、じろりと『ユウ』が見た。
それだけのことで、カイの足が止まる。
(こいつは……!)
「せや。ユウ嬢やおまへんで」
ボンさんが片手でカイを制しながら、ぽつりと言った。
確かにユウも凄みのある目をしていたが、目の前の『ユウ』とは違う。
本来のユウが怒りや悲しみ、憎しみといった人間の感情を見せていたのに対し、目の前の『ユウ』にはそれがない。
まるで硝子球のように透明で――人間味のない目が、カイをただ見つめている。
「あれはな……強いて言えばプログラムみたいなものや。
役割は、ワシら『厄』を封印すること。 ユウ嬢は、時折彼女をぶちのめしていくつかの『厄』を放って攻撃しとったようやけどな、今の『アレ』にそんな融通はきかへん。
命令するべきユウ嬢は、このゾーンのあちこちに拡散してしまいよって、止めるモンもおらん状況や。
要するに――あそこで寝とる連中を引っ張り出すには、あの『ユウ』を倒さねばならんっちゅうワケや」
「なるほど」
すらりと剣を抜いたカイが一歩前に出た。
あわせて、『ユウ』も刀を抜く。
いつもの二刀流ではない。 炯々と輝く緑の光が、戦意に溢れたカイの顔を照らし出した。
「『ユウ』。どうやら目的のためには、あんたを倒さなきゃいかんらしい。
この奇妙なゾーンの、さしずめあんたがボスというわけか」
「……訳の分からないことを。 死にたくなければ退くことね」
殺気にあふれた会話が途切れた刹那。
<暗殺者>と<守護戦士>は同時に大地を蹴っていた。
鎧に覆われた重厚な足音を響かせ、<守護戦士>カイが走る。
対照的に、一歩で間合いの半分を詰めた『ユウ』はしっかりと足を踏みしめ、動かない。
その左手に握られているのは、現実のセルデシアで見たユウの愛刀と寸分違わぬ、異様な意匠の施された日本刀だ。
カイも、その刀がいかに恐るべきものであるかを知っている。
<毒使い>としての能力を底上げする刀の性能と、ユウ自身が作り上げてきた自作の毒。
その組み合わせがどれほどすさまじい威力を発揮するかを、彼は乱戦のマグナリアで見ていたからだ。
だが。
「お前はユウじゃないっ!」
駆け抜けざまの<クロス・スラッシュ>が、狙い過たずユウの胴に食い込んだ。
同時に振り下ろされた<毒薙>の刃が、カイのかざした盾に弾かれる。
踏み込んだ互いの足が踏みつけあうかのように交差し、緑黒に輝く長い髪がカイの鼻筋を掠めて過ぎた。
その瞬間に『ユウ』が回転する。
浴びせるような肘打ちがしたたかにカイの鎧に守られた胸に激突した。
その一撃でのけぞりながらもカイは止まらない。
<守護戦士>としては並程度だが、<暗殺者>に比べればはるかに高い肉体の耐久力が、武器を持たぬ彼女の一撃を防いだのだ。
そのまま、盾で『ユウ』を跳ね飛ばすように進むカイの背中に、再び刀が近づくが、タイミングを合わせたカイの肘がお返しとばかりに刀身を打ち、禍々しい光は空しく背中のマントを切り割るだけに終わった。
数歩進み、剣をまわして『ユウ』に向かうカイは、同時に目の前の女がユウではないことを確信していた。
もし本物のユウならば、カイが振り向くよりも先に追撃をかけているだろう。
何しろ速度に特化した攻撃型<暗殺者>なのだ。
<守護戦士>であるカイが腰をすえて攻防を整える前に、可能な限りのダメージを負わせる。
それが、人数の決まった対人戦やチームで戦う大規模戦闘ではない、1対多数の戦場に身を置き続けた彼女のスタンスであるはずだった。
だが、目の前の『ユウ』は違う。
まるでエラーを前にしたプログラムが解決法を探っているように、彼女は動きを止め、自らの刀をじっと見つめていた。
それでも、さすがはユウを模した存在というべきか、一見隙だらけに見える姿勢の中でも、視界には常にカイを入れている。
ここぞという時のDPS――継続ダメージ能力に欠けるカイでは、攻め切る前に反撃を受ける、と見た。
「……『ユウ』。あんたの目的は何だ」
「毒と厄で<毒使い>を守ること」
抑揚のない声のまま、『ユウ』が問いかけに答える。
それは、ユウの愛刀のステータスに刻まれた、銘文だ。
「ならばなぜ、ボンさんを狙い、厄の開放を阻むんだ」
「異なことを。 ……厄は集めて封じねば<毒使い>を守れないわ」
水晶のような瞳がじっと来訪者を見つめた。
「カイ。レベル92、<守護戦士>、<追跡者>。 あなたはまだ厄ではない。
厄でなく、<毒使い>を護らないならば、この場から消えなさい」
「<蛇刀・毒薙>。レベル90、<暗殺者>、<毒使い>。 お前こそ周囲を見てみろ」
カイは目の前の『ユウ』――<毒薙>そのものに冷然と告げた。
一部の<幻想>級の武器には、所有者とは別の意思が宿ることがあるという。
時にはそれらの武器は頼もしい相棒であり、己を殺す身中の蛇でもあるという。
カイは、アキバにいた頃――そのような武器に己を奪われかけた<冒険者>の噂を耳にしたことがあった。
おそらく目の前の刀も、ひそかに意思を宿していたのだろう。
香り付けの文章に記された言葉に従い、目の前の刀は持ち主も知らぬところで、斬った相手を奪い、写し取り――厄として密かに貯めてきたのだ。
厄で持ち主を守るはずの自分自身が持ち主を危難に陥れていることにも気づかぬままに。
だが、この<ユウの幻想>の中では、刀と会話することもできる。
カイはその一点に掛けた。
「お前が意図せずかどうか知らんが取り込んだ厄のために、今、お前の持ち主である<毒使い>は、延々と己の魂の中で戦い続けている。 護るべき厄の手助けもないままに」
「………」
「聞け、<蛇刀・毒薙>」
カイはいきなり右手を下ろした。
だらりと剣を下げ、あろうことか逆手の盾も外す。
がらん、と乾いた音が、寒々しい石畳に響いた。
「たった一人、護るべきものも頼るべきものも失って戦い続ける今のユウは、確かにユウ自身が望んだ終わりの姿だろう。
その望みを理解して、そのために厄を封じ続けるというならば、お前に語る術を俺はもう持たん。
だが、刀に過ぎないお前はそう考えていたわけではないだろう。
厄を溜め込めば<毒使い>を護れる。 そう機械的に判断していたんじゃないのか?
周囲を見てみろ。 破壊しつくされたユウの心を。
お前が護るのは、この風景か?
それとも、ユウ自身か?」
「……厄を集め封じるのが私の役目。 その邪魔をするならば、消えろ」
転瞬。
『ユウ』が消えた。
その一刹那の後には、彼女の顔がカイに接吻するような近さで傍に在る。
「お前も厄となれ」
横薙ぎに振るわれた刀は、無防備なカイの鎧の継ぎ目から右腕を切り飛ばし、深々と胸元を断ち割っていた。
◇
勝敗はついた。
腕を落とされ、胸に重傷を負ったカイは、あふれ出る血を抑えるように蹲り、荒い息を吐いている。
<亡霊>とはある意味で危険な存在でもある。
いわば魂だけであるがゆえに、HPは通常の彼と比べれば低い。
死人に半歩足を踏み入れているがゆえに毒の回りは遅いが、それでも残り少ないHPはじりじりと0の点に向かって進んでいた。
止めを刺そうとした『ユウ』に、かすれた声が聞こえる。
「……さすがに化け物の刀も化け物だ。<製作>級と侮っていたつもりはなかったが」
「…………」
対する『ユウ』の答えはない。
いつの間に変わっていたのか。蛇のように変貌した目が、呟くカイを見下ろすだけだ。
「刀。 お前に殺された俺はどうなる。 厄になるのか?」
「……知らないわ。 私はただ、厄があればそれを封じるだけ」
「そうか。 なら、俺の勝ちだな」
謎めいた一言と、『ユウ』が刀をカイのうなじに突き刺そうとしたのは同時だった。
「……<キャッスル・オブ・ストーン>」
突如、カイが大理石の色に輝いた。
<守護戦士>が持つ絶対防御だ。
大きく弾かれた刀身がわずかに砕け、『ユウ』の鉄面皮が一瞬、苦痛にゆがむ。
その表情が消えたのと、戦う彼女らの背後で爆音が聞こえたのは全くの同時だった。
「ざまあ見いや!!」
ボンさんだ。
封じられるべき厄でありながら、召喚獣を持たず個人的な戦闘力の低い彼を、『ユウ』はいつの間にか失念していたのだった。
「なんてこと……!!」
唇を噛む『ユウ』に、いつの間にか距離をとっていたカイがかすかに笑う。
「敵愾心管理は<守護戦士>の十八番だぜ。
勝負あったな、<蛇刀・毒薙>」
その言葉に、『ユウ』――<毒薙>も気付く。
先ほどの一撃が<クロス・スラッシュ>などではなかったことを。
そしてカイが稼いだ時間をボンさんは使い、氷山の一角を文字通り消し飛ばしたのだ。
<爆薬>――ユウ自身の代名詞ともいえるそのアイテムを、ユウの分身であるボンさんも使えたのである。
「くっ……!」
「<レジリアンス>! <アンカー・ハウル>!」
駆け戻りかけた『ユウ』を後ろから不可視の錨が繋ぎ止めた。
人の心の中とはいえ、<エルダー・テイル>時代から存在するゾーン。
そこに厳然と記された世界の法則は、幻のような『ユウ』でさえも縛る。
おそらく<蛇刀・毒薙>の元になったという、華国サーバの古代の蛇神――その不気味な眼差しに、カイは戦意の溢れた笑みで応じた。
やむなく向き直った『ユウ』の背後で、砕けた氷山から氷のかけらが剥げ落ちるように、封じられた『厄』たちが落ちていく。
人間、エルフ、緑小鬼、湿地の不死者、水棲緑鬼――格好も種族もばらばらの、それはユウの戦歴に名を記された敵たちだ。
彼らが倒れ、よろよろと立ち上がるたびに、『ユウ』の全身に異変が起きた。
艶やかな髪は色を失い、陶器のように滑らかな肌に無数のひび割れが走っていく。
まるでマネキンが朽ちていくさまを早送りで見ているかのように、『ユウ』は砕けていく。
爆発は連鎖的なものだった。
いかに他人を模したとはいえ、ボンさんもまたユウだ。
『爆撃は徹底的に』 ……その野戦砲兵のような思考を、しっかりと継承しているらしい。
ふもとを揺るがす激震と爆発に巨大な氷山が震え、やがてそれは自分自身を支える力を失ったか、ゆっくりと自ら崩れ始めた。
「厄、厄が……」
「こうなるのが一番エエんや」
全身から体を構成する部材を落としながら、ゆっくりと膝をついた『ユウ』に、いつの間に近づいていたのか、ボンさんが声をかけた。
その口調は勝利を誇るというより、まるで悲しみを堪えているかのようだ。
「自分が今の刀身になる前から、ユウ嬢をずっと守ってくれておおきにな。
元はなに恥じることのない蛇神の牙やった自分や。
忌々しいこともあったやろうし、嫌なこともあったやろ。
……それでも、自分はこの一年間、ずっとユウを護ってくれた。
あんじょう、おおきに。
せやけど、もうお終いにせなあかんねん。
自分が護ろうとしたおかげで、ユウは今シーズン一番の大ピンチや。
九回裏無死満塁、点差1点の一発逆転サヨナラで打席に立つのは秋山幸二、後ろは森監督の名采配に伊原コーチが三塁におるような場面やねん。
……せやからこそ、自分はもうお終いにせなあかん」
「私は……毒と厄で……<毒使い>を……」
罅割れた忍び装束が落ち、『ユウ』の白い身体が露になる。
だが、それも一瞬のことで、全身に回った亀裂はゆっくりと彼女の体から離れていった。
ぼたりと蛇の眼球が落ちた先に見えたのは、刀身を無数の罅割れと刃毀れで覆った刀だ。
『ユウ』の人としての肉体が崩れ、<毒薙>はゆっくりと本来の姿――ぼろぼろになった日本刀の姿に戻っていく。
「後は、自分が貯めた厄に任せえ」
無数の『厄』たちがじっと見守る中、ボンさんはゆっくりと『ユウ』に手を伸ばし、ほとんど崩れた肉体の中から、その刀を引っ張り出した。
弱弱しく緑の光を放つその刀身を一瞬かざした後、やおら彼は刀を回して逆手に持った。
毛羽立った刃を握るボンさんに、無数の『厄』の視線が集中する。
念じるように――あるいは祈りをささげるように目を閉じたボンさんが、その姿勢のまま不意に告げた。
「カイ。自分、今のうちにここから出て行きや」
「……ボンさん?」
「ワシらは『厄』――ユウ嬢の一部や。 これからワシらはこの刀を持ち主に返しに行かなあかん。
このゾーンを荒らす連中をぼてくりこかしつつ、や。
正直、どうなるか分からへん。 ユウ嬢自身、心の……せやな、九割くらいは今のままでエエとおもっとるからな」
「……ボンさん」
呆然と呟くカイの横に小さな輪が現れる。
カイの口伝だ。
それをちらりと見て、ボンさん――そう自称していた<ユウの欠片>は微笑した。
「今のうちに元の場所に戻りや。 ワシらはワシらで始末をつけるさかい。
……それに、今のうちに戻らんと困ったことになるかもしれへんで?」
「どういう、ことだ?」
徐々に自らが作り出した<妖精の輪>――その口伝版に吸い込まれながら、カイが呟く。
「ここは一応、セルデシアの中やけどな。 実際のところ、どこにあるゾーンなのか分からんねん。
せやから……戻れるうちに戻らんと、戻れへんようなるかもしれんねん。
自分は<亡霊>や。 それは困るやろ?」
「ああ、そうだな……」
はぁ、と吐いた息が本当に自分のものなのかも分からない。
ふと、そんな彼に周囲にいる『厄』たちの姿が目に映った。
じっと動かない亜人やモンスターたちの中に、何人か見知った顔が見える。
「あんにゃま、ニョヒタ、レスパース、黒翼……」
遠く離れ離れになった、ギルド<エスピノザ>の仲間たちは、消え行くカイにそれぞれの仕草で別れを告げる。
その真ん中に立ったカイ自身の『厄』もまた、任せておけと言わんばかりに握り拳をかざしていた。
「そうか……ボンさん、思い出したぞ。 あんたは……ミナミの……」
その呟きを最後に、カイは<ユウの幻想>から帰還した。
3.
<聖域>の一角では、既に殺気を孕んだ押し問答が続いている。
「だから、カイもユウも動けない! せめて尋問は明日にしてくれ!」
「こちらはそんなことは知らん。 言われたようにさっさと来い!」
テングは、鞘に納めたままの刀をいつでも抜ける体勢になりながら、やってきた<教団>の使者と押し問答をしていた。
目の前で怒鳴る男も、自分の判断で待つことは許されていないのだろう。
後ろで控える彼の仲間たちも、総じて殺気立った目で、何十回目かのやり取りを睨み付けている。
「トーマス先生がお呼びなのだ! 拒否権はない!」
「無理なものは無理だ!」
「ええい!」
ついに業を煮やした男が剣を抜いた。
テングもまた、パチリと留め金を外し、長刀の形をした己が愛刀を抜き放つ。
緊張が臨界点に達し、じり、と男の足が動いた、その瞬間。
不意に部屋の中を緑と青、合わさって鮮やかな水色と化した輝きが、途轍もない光量で満たした。
「ユウ!?」
背後のベッドで寝ているはずの仲間が起こしたであろう異変に、戦いも忘れてテングが振り向く。
横になったまま、眠れる女<暗殺者>は全身から光を放ち、ゆっくりと浮き上がるように身を起こそうとしていた。
今回は、オヒョウさま『私家版 エルダー・テイルの歩き方 -ウェストランデ編-』http://ncode.syosetu.com/n4000bx/
より主人公、西武蔵坊レオ丸法師をお借りしております。
ーーコピーですけど。
また、別の作者様のお話に少々ながら言及させていただきました。
どこかは、内緒。
オヒョウさま、誠にありがとうございました。
そして相変わらずの独自設定ばかりで、もう、その、なんというか。




