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ある毒使いの死  作者: いちぼなんてもういい。
第8部 <森>
168/245

121. <王の交渉>

1.



 古今東西、多くの論客は言う。

支配者に必要なのは愛情ではなく、恐怖だと。

恐怖と、ほんの少しの達成感で人は動くものである、と。


<封印の森>の奥、黒い泉の前でユウが見たルシウスの姿は、まさしくそうした『王』の姿を体現していた。

ギルドメンバーに持ってこさせた椅子に優雅に座り、エルフ特有の細く長い脚を組んで、自然と高くなった目線で、胡坐をかいたユウと片膝を立てたエルを見下ろしている。

その利己的に光るまなざしは、友人の友人を助けに来た、などという嘘くさい大義名分を自ら壊していたが、もはやルシウスはそのような偽りの友好を、目の前の男女に向ける必要性をかけらも感じていなかった。


「単刀直入に言おう。私がほしいのは君たちのそのレベルの秘密だ」

「その代わりに私らが手に入れるのは、ロバートって<盗剣士(スワッシュバックラー)>の命……ってわけ?」


つまらなさそうに答えるエルに、指を一本立ててルシウスが答える。


「むろん、大規模戦闘(レイド)も協力しよう。経緯はどうあれ、大規模戦闘で得られる報酬は我々もほしい。

もちろんだが、アイテムの選択における優先権はこちらでもらうが」

「なるほど。互いに手札を見せ合って、それ以上に札を切る(レイズする)ものもない。

あとはショウ・ダウンだけ……ね」


肩をすくめたユウの周囲を、20人以上の<冒険者>が囲む。

その中の数人が、確実に一挙動でルシウスの盾になれる位置にいることに気づいて、ユウは嘲笑交じりに苦笑した。


「毒の奇襲が怖い?」

「無意味なリスクは負いたくないものでね。94レベルの君にとって、72レベルのあの男など、どうでもいいかもしれないからな」

「素晴らしい王様ぶりだこと」


エルの嘲りにも、ルシウスは顔色一つ変えなかった。

何の会話もなかったかのように、選択を迫る。


「で。君たちとの夜の会話は楽しいものだが、そろそろ眠い。

色よい返事を聞かせてもらいたいね。ついでに書類もある。サインして話してくれ」


パチン、という指の音とともに、ユウの前におずおずと差し出されたものがある。

<筆写師>に作らせたものだろう、レベルの高い契約書だ。

そこに並んだ文字をユウもエルも読めなかったが、ずらずらと書かれたアルファベットが、対等な交換契約だとは、二人とも毛ほども思えなかった。


「ゲール語かぁ……さすがにエリン島(アイルランド)妖精(エルフ)の王様、やることなすこと手が込んでる」

「商社の裏面契約よりも、読むのが怖いなこれ」

「話すのはいいけどさ」


エルがちらりとルシウスの周囲に侍る<冒険者>たちを見て言った。


「話したらあんたのギルメンにも聞かれるよ? 言っちゃ悪いけど、レベルアップの秘密なんて簡単なものだ。

人によっちゃすぐ出来るかもしれない。それでもいいの?」

「……構わん。こいつらも分かっている。私を裏切ればどうなるかを、な」

「でもさ」


エルの、ドワーフにしては怜悧な印象を与える顔が、にんまりと歪む。

身長と相まって、さながらその姿は悪を囁く小悪魔だ。


「91レベルが、90レベルに従うと思う? はっきり言って、90レベル以下とそれより上の世界は全然違うよ? <口伝>……新しい技も使えるようになる。

この世界の秘密に、より迫れるようになる。それでも?」


隣のユウは無言だ。その不敵な目線は、エルの言葉に十分な信憑性を与えている。

暗い夜の森に、音はない。

エルの声が、かすかな残響を残して木々の間に消えたころ、ルシウスは静かに口を開いた。


肉屋(ミートチョッパー)、アブシンベル、グローリーハース、ディムジム……私はお前たちのギルドマスターだ」


いきなりの声に、かすかに視線を交わす部下たちに向かって、ルシウスは呟く。


「お前たちの安全、お前たちの尊厳と自由、そして友人たち……私はアルバやスカサハのようなクズどもとも手を握り、お前たちをこの一年間、だれに頼まれたわけでもないのに守ってきた」

「え、ええ……感謝しています」


仲間たちを代表して口を開いた<妖術師>に、ルシウスは満足そうにうなずく。


「私はお前たちのために、一年間苦労してきた。

私だって家族と別れ、友人たちとも別れ、元の世界に戻る当てもなく、泣き叫びたかった。

だが、私はそうしなかった。今もこうして大規模戦闘(レイドバトル)に向かい、死にすら臨もうとしている。

すべてギルドの、仲間の、全員のためだ。

そんな私の献身に、むろんお前たちは全力で応えてくれるのだろうな?」

「ええ」


再度頷いた<妖術師>に向かって、ルシウスはにこりと微笑んだ。


「ならばよい。ともに聞こうではないか。お前たちは私の宝なのだから」

「は、はい!」


感に堪えないという心持の部下たちを見やり、ルシウスが笑う。

その笑みは、それまでの冷たいものではない。暖かな人の心の通った慈愛の笑みそのものだ。

だが、ふとその中に、ユウは違和感を感じた。


(なんなのだ、この小芝居は)


自分たちは、ルシウスと部下たちを仲たがいさせようとするのを諦めさせる為のポーズではあるだろう。

だが、なぜことさらに自分の献身を言い立てる?


そう思ったユウは、思わず嬉しそうな<妖術師>に尋ねた。


「なあ、そこのあんた。ええと……ミートチョッパーさん?」

「なんです?」


主の心を反映してか、余所余所しい返事を返した彼に、ユウは重ねて問いかけた。


「あんた……何かよくわからん書類にサインしなかったか? もしかすると……ここに来る直前に」

「え?」


目を丸くしたその<妖術師>に、一瞬だが突き刺すような視線をルシウスが向ける。

それだけでユウもエルも、状況が分かった気がした。

口を閉じたユウの代わりにエルが言う。


「あー……そりゃ、悪いけどあんたたち、聞いた瞬間おしまいだね」

「なんだと!?」


さようなら、とばかりにひらひらと手を振るエルに、<冒険者>たちがわずかに色めき立つ。

その中心で、一瞬の険しい顔が嘘のような笑みを浮かべ、ルシウスが嘲った。


「この期に及んで私と仲間の絆を邪魔して何とかしようとでも?

日本人というのはずいぶん悪あがきがお上手なことだ」

「あいにく、ジャガイモ作るしか能がないアイルランド人と違って、こっちは商売やって長いんでね。

アホな相手に契約を進める手口ってのも、ガキが真似するくらいに発達してるのよ。

ねえ、あんたたち。

私たちが秘密を喋れば、あんたたちはそこのルシウス王様と秘密を共有することになる。

下手すれば下剋上されかねない秘密だ。

普通に考えて、このエルフさんは仲間とそんな秘密、共有すると思う?」


周囲が一瞬凍った。

険しい顔を隠さなくなったルシウスと、動きを止めた仲間たちを順繰りに見回し、エルは歌うように告げる。


「『この契約に従い、私は<妖精王の都(プラークリー)>に帰ると地下牢ゾーンに行き、死なない限りそこから一歩も出ません』なんて言葉が躍ってたりしないかな? その契約書には」

「そんなことはない! ルシウスさんは俺たちを信用していると」

「信用している人はそもそも契約書なんて書かせないし、ばれたからってそんな人殺しみたいな目で私を見たりもしないと思うよ。

そもそもこんな奴が仲間だからって無条件に信用したりするとは思えないね。

……まあ、ほとんど初対面だから憶測だけども」

「ち、ちが……」

「『ゲーム時代は信頼できるリーダーだった』か?」


エルに続けて口を開いたのはユウだった。

こちらは軽蔑を隠そうともしない顔で、周囲の<冒険者>と、何よりルシウスを見ている。

闇の中で、その視線だけが鮮烈に周囲に焼付いた。


「アホか、あんたら。人生かけてゲームやってたわけじゃないだろ?

ネットでのほんの数時間だか十数時間だかなら、どんな人間だって自分を偽れるだろう。

余暇の時間に遊びで顔を合わせる姿と、四六時中生活で顔を合わせる姿と、

どっちがその人間の本性に近いと思うんだ。

そいつは一年変わらず、頼れる思いやりの深い、ありがたいリーダーだったか?」

「………」


とどめとばかりに周囲に声を上げたのは、黙って寝転がっていた<緑衣の男>だった。

孤高の<古来種>は、静かに口を開いて、諭すように言う。


「<冒険者>はあくまで自由、その心は誰にも縛られない……かつて出会った<冒険者>はそう言っていたものだがね。

今の君たちは、失礼だがその自由のかけらも無いようだ。それではまるで奴隷……いや、家畜だな。

生活が、ではない。心が家畜なのだ。

私はそこの男(ルシウス)のことは残念ながらよく知らないが、よく似た目をした人間なら何度も会ったことがある。

屠殺場に豚を連れて行くときの、心無い飼い主の目だ。

おそらく、豚に行先を知られた時、そうした男たちも今の彼と同じ目をするのではないかな」

「……ルシ、ウスさん」


肉屋(ミートチョッパー)がおずおずと尋ねようとした時、不意に森にばきりという音が響いた。

座っていた椅子をひと蹴りでルシウスが踏みつぶした音だ。

その顔は、憤怒に赤く染まっている。


「……この期に及んで余計なことをぺらぺらと!

憶測などもうどうでもいい! さっさとサインして喋れ! ロバートが死ぬぞ!!」

「本性を見せたな」


ユウがにやりと笑い、エルもまたゆっくりと立ち上がる。


「ルシウスさん……」

「うるさい! さっきの言葉は嘘か!? 俺が、お前たちを一年の間守ってきたのだ!

この俺の献身に対し、お前らが身を投げ出すことくらい当り前だろうが!!」

「ルシウスさん、そんな」

「黙っていろ!! 俺は王だ! お前らは平民だ! 王の言葉には従うだけだろうが!

なんで俺ばかりが、たまたまギルドマスターだったからと言って貧乏くじをひかなきゃならんのだ!

こんな……こんな地球の裏側まで来て好き勝手をほざくようなバカ女が93だの94だののレベルで、

なんで俺だけが90レベルのままでいなければならんのだ!

俺もボーナスを得るべきだ! 

そのためにお前らは喜んで死ね! 死ねないんだから契約通り黙って牢屋で一生過ごしていろ!!」


紳士的な態度もどこかへ放り投げ、わめき散らすルシウスを、今度こそ憐みの目で見ながら、

エルがとどめの一言を放つ。


「こんなのが『王』とはね……私の知ってる王は人間じゃなかったが、それでもこいつに比べればよほど部下のことを考えているいい王だったよ。

……ユウ。あんたの仲間、あの黒い<守護戦士>なら、こいつのことをどうする?」

「決まっているだろう、エル」


思い出したのか、かすかに殺気のこもったエルの流し目に、ユウは肩をすくめて答えた。


「こんなドアホウ、剣の錆にするのも滑稽だが、なんて言ってたたっ切ってるだろうよ」

「おのれ!!」


一挙動で武器である長い細剣(レイピア)を抜いたルシウスが叫ぶ。


「構わん、これだけの人数だ、締め上げてサインさせて吐かせろ!

それに、すぐルファースに連絡して、あの低レベルのゴミを殺させろ!」

「……嫌です」


だが、ルシウスに続くものはない。

怒りを抑えるかのようにふるふると震える細剣を構えて、剣呑な声で返した彼に、

肉屋(ミートチョッパー)がかすかな、決然とした声で異を唱えた。


「あなたの行動を見て、この人たちの言うことが図星だとわかりました。

俺は嫌です……自分や仲間が永遠に幽閉される手助けなんて」

「なんだと!? お前、それで」

「あんたはいつまで王様気取りなんだ! あんたはただのギルドマスターで、俺たちの王じゃない!」


ついに叫んだ肉屋(ミートチョッパー)の周囲から「そうだ」の合唱が上がる。

ユウたちを威圧し、自分を護衛させるためにえりすぐって連れてきたはずの仲間の造反に、

もはや声も出ないルシウスの前で、いつの間にかすぐ近くまで近づいていたユウが嗤った。


「お前みたいな気取りやの裸の王様は、もう少し勝ち誇って悔しがらせてやりたかったが、まあいい。

いても危険だからな、排除する」


瞬時、ルシウスの首筋に、異国の(かたな)が食い込む。

だが、冷や汗を流しながらもさすがにルシウスは一ギルドのマスターだった。

余裕綽々の口調で、殺気をこめて自分を見下ろす美女を見る。


「さっさと降ろせ、無礼者。俺が一言言えばロバートは死ぬぞ。

いや、死んでも終わらせん。俺の気が済むまで<大神殿>から引きずり出しては殺す。

何度も殺す。

俺がここで死んでも同じだ、<妖精王の都>全員でお前たちを狩り出し、あの村も滅ぼしてやる。

こんな田舎までわざわざレイドに来てやったんだ、感謝の気持ちをこめて教えるのが筋だろう。

分かったか? 分かったらさっさと」


ぞぶり。


ルシウスは最後まで言い終えることはできなかった。


「大丈夫だ、殺しはしない」


ルシウスは信じられなかった。

一瞬止まった刀は、何のためらいも無く彼の首の筋肉をぶちぶちとちぎり取ると、気道を裂く。

出血と酸欠で急激に暗くなる視界の中で、彼は心の中だけで絶叫した。


(なぜだ! なぜ俺だけこんな目に……なぜだ!!)


寝てろ。


初対面からわずか数時間後、ルシウスは理不尽に身を震わせながら意識を手放した。



 ◇


「で、どうする。君たちは」


<緑衣の男>が周囲の<冒険者>たちを見回した。

ルシウスと同じギルド――部下だった男女だ。

その数、20人あまり。

彼らの足元では、エルの魔法で血を止められたルシウスが倒れている。

そのステータス画面には<気絶>の文字がくるくると踊っていた。


「ルシウスさんをどうするんです?」


一同を代表して、一人の<妖術師(ソーサラー)>が問うと、ユウが答えた。


「埋める」

「埋め……る?」


呆気にとられた別の声に、なんでもないようにユウが言う。


「ああ。死んだら<妖精王の都>とやらに戻るんだろ? だから埋める。この<封印の森>に。

幸いここは動物もモンスターもいない。何かが掘り返す心配も無い。

こいつを縛って、口も猿轡して、空気穴だけ開けて埋める。手足は念のため折っておく」


料理の手順を紹介するように淡々と答えるユウの足がひらめき、バキバキといういやな音が響いた。


「地下深くに埋めれば、とりあえずこいつは死ぬことも<妖精王の(プラークリー)>に戻ることも無い。<冒険者>が餓死するか渇死するかは知らないが、もし死ななければいつまでもこのままだ。

喋れなければ助けも呼べまい。

我が国が編み出した宗教的な作法のちょっとした応用ってところだよ。

それに、過去も一人同じようにしてる」


黙々と穴を掘っていたエルが「いいよ、そろそろ」と声をかけると、ユウは片手を挙げて答え、ひょいとルシウスを担ぐと穴に放り込んだ。

鼻にストロー代わりの藁――<緑衣の男>の装備にあった――を突き刺し、元通りに埋めなおすと、ユウは「どう?」とばかりに両手を挙げた。

だが、答えるほうは冗談ではない。

生かさず殺さずというが、していることは単なる処刑よりよほど残酷だ。

もし、ルシウスが目を覚ましても、手足をへし折られ、周囲すべてを土で押さえつけられていれば、単独の脱出はまず不可能だ。

空腹と渇水、そして骨折の激痛にさいなまれながら、どこともしれぬ土の中で永遠に生きる。

これは、この世界でもとびきりの、<冒険者>に対する処刑方法だった。


「あーあ。ドン引きだね、こいつら」


自分も手伝っておきながら、そういってエルが笑う。

だが、目だけは笑っていない。

そのまなざしはひときわ鋭く、残された<冒険者>たちを見つめている。


その、猛禽のような視線に気圧されてか、先ほどの肉屋(ミートチョッパー)が声を上げた。


「俺たちは……たぶん、あんたたちの言うとおり<妖精王の都>に戻ってもろくな目にあわなかったでしょう。

レベルの秘密を知ったからには……いや、ほかの連中にそう思われたからには、たとえルシウスがいなかったとしても、残るギルドマスターたちに徹底的に自白させられた後、追放か幽閉。

……たぶん、そうなります」

「? 逃げればいいんじゃないの? というか、何でそれが分かっててここに残ってたの?」

「ルシウスさんの命令は『日本人たちを威圧するためにここにいろ』でした。

それに逆らえば、戻る前に殺されて幽閉されるだけです」

「うわあ……」


エルが心底嫌そうに、埋めたばかりのルシウスのいる場所を見た。

ユウも、このいけ好かないドワーフと同感だ。

<緑衣の男>も吐き捨てるように続ける。


「奴隷でももう少し自由があるだろうに。君たちは自分の売ってはならない尊厳を、ずいぶんとんでもない奴に売り払っていたものだね」

「そうです」


悲しげに<妖術師>が肯定した。


「俺たちは、安全と治安を買うために自由を捨てたんです。そしてルシウス……や、その同類たちの奴隷に成り下がった。

エルフでないものを見下し、レベルの低いものを見下す、見下げ果てた連中の奴隷に」


ユウたちの耳に、その声は死霊の声のように陰々と響いた。


「日本の<冒険者>。俺たちはあんたたちが羨ましい。

この災害の後にも、自分の自由を守っている、あんたたちが」


 ◇


 結局彼らは全員がユウたちと同行することを申し出た。

その後は、船で大陸へ渡るつもりだとも。


「西欧サーバにはいれば、すぐには追えませんからね。まずはアルプスを越えますよ」


だが、それまではユウたちの冒険に協力してくれると言う。

もともと中隊規模(フルレイド)だ。

村に残っている仲間たちも、信頼の置ける人々だけはロバートとタクフェルと共に合流するが、

それ以外は別命あるまで村で待機させるとのことだった。


あらためて<肉屋(ミートチョッパー)>と名乗った、その<妖術師>がおずおずと差し出した手を、ユウはしっかりと握り返した。


払暁。


ユウは、三たび<深き黒森のシャーウッド>へ突入した。

今度は一人ではない。

ユウ、エル、ロバートも含め36人の<冒険者>、<古来種>である<緑衣の男>、<大地人>であるタクフェル。

計38人だ。

何度も繰り返すようだが、<蝕地王の侵攻>クエストのランクはフルレイド。

つまりレイドゾーンには24人しか入れない。だがこのレイドには一つの利点があった。

セーフゾーン、つまり<緑衣の男>たちの家だった場所だけは、レイドゾーンに設定されていないのだ。

つまり彼らはそこに待機する仲間を集め、挑むことが出来る。


そこに集合し、全員の点呼を取ったうえで、一行は目指す。


<蝕地王>を。


<蝕地王>がどこにいるのかはわからない。

<屍竜>と<蠢きもがく死>、二匹のボスもまた、同様だ。

そして、明け方にもかかわらず闇が濃厚に漂う森の奥には、死者と<灰斑犬鬼(ノール)>が文字通り軍団をなしている。

だが、それでもユウは安堵の溜息を隠さなかった。


ようやっと、スタートラインに立ったのだ。

ようやっと。

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