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ある毒使いの死  作者: いちぼなんてもういい。
第7章 <西の大地にて>
139/245

番外12. <人形の家> (前編)

あけましておめでとうございます。

リハビリ代わりに番外をひとつ書きました。


時間軸としては、ユウがまだデンマークにいたころになります。

1.


「何をし……ひゃっ?」


肩を叩こうとミリアムが手を上げたのと、ゲフィオンが振り向いたのは同時だった。

まるで事前に声をかけられるのがわかっていたかのようなその反射速度に、いつものことながらミリアムは驚いてしまう。

常人以上の反射を誇る者は<冒険者>には数多いが、ミリアムが出会った中でもゲフィオンのそれは、今まで彼女が出会ったどの<冒険者>とも一線を画す。

ミリアムはつくづくと、自分が拾ったこの女<暗殺者>の特殊性を考えざるを得なかった。


ゲフィオン。

|彼女のステータス画面の文字(にほんご)が誰も読めないがために、そう仮に名づけざるを得なかった、東洋人の女<暗殺者>が、ミリアムの属する<傷ある女の修道院>に身を寄せてしばらくになる。

彼女の存在は、あらゆる意味で規格外だった。

まずレベルだ。

アラビア数字で書かれているため、ミリアムたちにも読めた彼女のレベルは93。

<エルダー・テイル>のプレイヤーではありえないその数字は、しかし噂を信じる限りは腑に落ちる。


『日本サーバだけは新パッチ、<ノウアスフィアの開墾>が適用されている』


それを真実とするなら、目の前の女、ゲフィオンは日本サーバのプレイヤーということになる。

今二人が向かい合う、この北欧サーバ(デンマーク)からはあまりに遠いが、自身、北米大陸の東海岸から流れてきたミリアムにとっては、頷ける話でもあった。

ゲームが現実化し、各地のサーバ間の交通は半ば遮断されたといっていいが、それでも<妖精の輪>をはじめ、遠く離れた地を結ぶ方法はないわけではないのだ。


だが、今も目の当たりにした、彼女(ゲフィオン)の異常な身体能力は、単に新パッチがあたった高レベルプレイヤーというにしてはあまりに異質だった。

遠く離れた場所の石が落ちる音を聞き分け、暗夜でも昼間のように身軽に動いてみせる。

そして、未来予知と錯覚してしまうような察知能力。

ミリアムは、彼女が単なるプレイヤーではなく、どこか漫画(カートゥン)の世界からやってきた忍者(ニンジャ)のように思えるときがあるのだった。


「……ミリアム? 何か用?」

「………あ」


ふと気づけば、ゲフィオンは鉢植えを手に持ったまま、困ったような顔で立っていた。

おそらく植え替えに行くつもりだったのだろう。

鉢植えの中の薬草は、北欧の淡い陽光を懸命に吸ってか、青々と茂っている。


自分が呼び止めたにもかかわらず呆然としていたのに気づき、ミリアムは一気に顔を赤くした。

ぶん、とブロンドの髪を勢いよく揺らし、ミリアムは両手を大きく振った。


「あ、その、ごめんなさい。あの、ロージナがあなたを呼んでいるわ」

「ロージナが?」


ゲフィオンが訝しそうな顔をした。

この<傷ある女の修道院>を率いる女<守護戦士>、ロージナが自分を呼ぶ理由がわからないのだ。


「なんで?」

「わからないわ。私は薬草園に行くところだったから、言伝を頼まれただけだもの。

でも、ちょっと急いでいるみたいね。

その鉢植えは私が預かるから、行ったら?」

「わかった。……それは南の花壇の空きに植え替えてほしい。<リューリア>の横」


身を翻してユウが駆けていく。

ミリアムは、受け取った鉢植えを手にしたまま、その背中を目で追っていた。



 ◇


「ゲフィオン、来たけど」

「早かったわね。入って」


ロージナの私室の扉をくぐったゲフィオンを迎えたのは修道院長だけではなかった。


「アールジュ」

「どう? 元気にやってる?」


そういってにこりと微笑み、白金の髪の<吟遊詩人(スカルド)>がにこりと笑う。

つられて唇のはしを軽くあげたゲフィオンに、早速とばかりに部屋の奥からロージナが声をかけた。


「早速だけどゲフィオン。あんたに依頼がある。このアルヴァ=セルンド島の隣、セルンド島に行ってもらいたいんだ」

「セルンド島?」


その名前はゲフィオンも聞いている。

この島のすぐ隣にある島だ。

面積としてはアルヴァ=セルンド島より広く、起伏も少ない。

広い草原に覆われた、牧歌的とも言える風景の島だった。


「あそこには<大地人>も誰も住んでいないと聞いているけど……」


ゲフィオンはこの地に来てから聞いた情報を頭から引っ張り出しながら答えた。

ロージナと、彼女の隣に立つアールジュが頷く。


「ああ。あそこは十何年か前――このセルデシアでは百年以上前だが――レイドクエストの舞台になってね。

それ以来<大地人>であそこに住む人間はいない」

「なら、なぜ? クエストか?」

「そうね……そうかもね」


アールジュが秘密めかして返す。

はぐらかすようなその返事に、思わずゲフィオンは聞き返していた。


「具体的に教えて。何があるんだ? そしてなんで私が?

私はこの地には不案内だし、正直依頼をこなす自信がない」


彼女の問いかけに答えたのは今度もアールジュだった。


「整理しましょうか。 まず、あの島に行く理由だけれども。

無人のはずのあの島から炊煙が上がっていたのよ。

知ってのとおり、あの島からここまではすぐだわ。

そして、この近くの<大地人>に、あの島に上陸するような人はいない。

つまりは」

「<冒険者>の可能性がある、ということだ。

……友好的な人物、あるいは我々と同じ境遇の人間ならばいいが」


そういって口を閉ざすロージナの言外の言葉を、ゲフィオンも悟らざるを得ない。


「敵かどうか、あるいは敵になりうるかどうか確認の必要がある、ってことね。

で、私が呼ばれた理由は?」

「簡単さ。戦える<冒険者>の中で、決まった仕事がなく、こうしたクエストに適任なのはあんただけだ」

「……なるほど」


ゲフィオンは再び頷いた。

確かに、総勢50人を超す<傷ある女の修道院>のメンバー、そのほとんどは戦えない。

レベルが低いか、あるいは戦う意思が無いか、そのいずれかによって。

修道院を離れて、戦闘に参加できるメンバーはロージナを含めても10人に満たないが、そのほとんどは修道院の何らかの仕事のリーダーとして働いている。

確かに、ゲフィオンほど突発的な作業に向いた人材はいなかった。


内容を了解したゲフィオンが、無意識につけていた指輪を撫でる。

その仕草を黙って見ていた二人は、やおら姿勢を正した。

そして告げる。


「ゲフィオン。修道院の指示により、セルンド島を探索することを命じる。

期限は1週間。

あの島に住み着いた人、あるいはモンスターの状況を調査し、報告してくれ。

細かい判断はあんたに任せる。危険だと思えば、独断で対処して構わない。

ただ、我々と同じ、あるいは似た境遇であれば、この修道院へ連れ帰ってくれ。

<傷ある女の修道院>は、傷ついた女を見捨てない」


そう告げたロージナに、やや意地悪くゲフィオンは反問した。


「それが傷ついた『男』だったら?」


答えが返ってくるにはしばしの間があった。


「……その場合は、当座の資材を支援して、別の島に移ってもらってくれ。

ここには男に心的外傷(トラウマ)のあるメンバーも多い……すまないがここは『女』の聖域(アジール)なんだよ」


ため息をつくように答えたロージナの横で、アールジュが睫毛を伏せるのを、ゲフィオンは見ていた。




2.


 <大地人>の漁船でわずか数時間。

セルンド島は、おだやかな島だった。


(傷ある『女』の修道院ね。排他的と責めればいいのか、慰めればいいのか)


どこか既視感のある、静かな浜辺にさくさくと足跡を作りながら、ゲフィオンは俯きがちに歩く。

白い砂浜に、黒い染みのような黒衣が、さらりと風に揺れた。

彼女が考えるのはロージナたちの態度に対してのことだ。


ゲフィオンが詳細を覚えていない、<五月の異変>。

それに遭遇した、少なからぬ女性プレイヤーが受けてきた『傷』は、端的に言えば性的な暴力に他ならない。

ゲフィオン自身、そうした被害を受けなかったのはひとえに自分の強さゆえだと分かっている。

ことは『坊主憎ければ袈裟までか?』とロージナたちを責めてすむ問題ではないのだ。


だが、それでもロージナの態度はあまりにあからさまだった。

女なら保護せよ。男なら放逐せよ。

それは、男も時として暴力の被害者になるということを頭から無視していると言うしかない。

だが、とゲフィオンは、手に持った液体の入った瓶を撫でた。

ロージナに見つからないように、アールジュが一本だけ手渡してくれたアイテムだ。


<外観再決定ポーション>


これを使えば、男が身体的には女になることも可能だ。


『もし、相手の男の人が一人で、しかもつらい傷を受けていたなら、使って』


アールジュの言葉を思い出す。

それは、彼女なりに<傷ある女の修道院(いまのなかま)>を守るための妥協点だったのだろう。

だが、男だった者が異性に変わる、というのは相当な変化だ。

アールジュの言いたいことも分からないではないが、やはりそれはどこかで男を決定的に拒絶した態度だった。


(まあ、いいか。考えても仕方ない)


ゲフィオンは、砂浜がごつごつした岩場に変わったところで、瓶を<暗殺者の石>に仕舞った。

すべては、相手に会ってからのことなのだ。



 ◇


 コンコン。

 カチャ。


「こんにちは。魚が余ったので、少しお届けに参りました」

「あら、いらっしゃい。まあ、すごいわね」

「ええ。今日はうまく釣れまして。今度はご主人と一緒に行きたいですね」

「ありがとうございます。夫もきっと喜びますわ。ごめんなさいね。今寝ているの。

奥様とお子様はお元気?」

「ええ。おかげさまで。妻もなかなかお会いできないのを残念がっています。

息子たちも元気だけが取り柄でして」

「うらやましいわね。うちの娘は一人遊びばかりで。

でも、いいカップルになると思わない?」

「そうですねえ。まあ、こればかりはお互いの気持ちしだいでしょうからな」

「もちろんですわ。親の気持ちを子供は分からないものですから。

……あら、ごめんなさい。 長話をしてしまったわ」

「おっと、そういえばもうすぐ夕暮れだ。 では、また。奥さん」

「ええ。また」


 ガチャ。



 ◇


(おかしいな)


ゲフィオンは何度目か分からない呟きを、心の中で漏らした。

セルンド島は平坦な土地だ。

視界をさえぎる山も、移動に時間を要する難所もない。

そのはずなのに、彼女は三度、見覚えのある道に出ていた。

昼前には上陸していたはずなのに、すでに周囲は夕闇が濃い。

明らかに、彼女は道に迷っていた。


(道に迷う要素など、何一つないはずだ)


朽ちた道標と思しき木切れの横で、ゲフィオンは立ち止まった。

周囲は緩やかに起伏した草原だ。

遠くには炊事の煙らしいもやがたなびき、方角を誤った可能性もない。

それでいて、彼女はいまだに目的地にたどり着けていなかった。


(馬を使っても……いや、同じだろうな)


空を飛ぶならともかく、陸上を走る生き物であればゲフィオンと同じことだ。

腕を組み、彼女は空を見上げた。

何かがおかしい。

何かが変だ。

少なくとも、決して自分に好意的でない何者かの意志を感じる状況だった。


(どうする? 走るか)


彼女がそう考えたとき、ふと視界の端に何かが煌いた。

モノトーンに覆われつつある周囲の風景の中であまりに異質な、虹のような七色の光彩。

それが何かを確かめる前に、ゲフィオンは持ち前の反射神経で、脇の下から抜いた短剣を投げつけていた。



「PYUIIIIIIIII!」


明らかに尋常の生物ではない悲鳴が上がるのと、周囲の風景がぐにゃりと歪むのは同時だった。


「何者だ!」


ゲフィオンがとっさに体を横っ飛びに倒す。

直後、虹色の線が彼女の頭蓋があった空間を貫いた。


(触手!)


それが軟体動物の光る腕であると認識したゲフィオンが片膝をつく。

ぐわんぐわんと揺れる視界のせいで、足元が定まらない。

まるでうねる海面のようにたわむ地面を無理やりに蹴り飛ばし、彼女は再び宙を舞った。

その運動エネルギーがなくなる前に、再び彼女の腕がかすむ。

二発目の短剣を食らった何者かが、再び異形の叫びを上げる。

その奇怪な不協和音を聞いて、ようやくゲフィオンは相手をしっかりと見た。


(……なんだ、あれは)


それは不気味な生物だった。 

いや、生物なのだろうか。


イソギンチャクそのままの筒型の胴に、蛸のような太い腕がうねうねと飛び出している。

十本ほどの腕の合間からは、繊毛の生えた細い腕がゆらりゆらりと風に揺れていた。

全体の大きさは、ちょっとした柱ほどはあるだろうか。

うぞうぞと足元で蠢く偽足の隙間からは、三葉虫じみた何かが顔を出していた。

それだけでもゲフィオンを総毛立たせるような異形だったが、さらに加えて奇怪なのはその体色だ。

ミニサイズの同族のような肉色をしているわけではない。

その全身はほぼ透明で、内部でびくんびくんと内臓が脈打つのが見える。

そして、それ以外の全身は奇怪な虹色のまだら模様に覆われていた。

発色しているのだ。


(……まずい!)


気を抜けば見入ってしまいそうな、その光の乱舞からあわててゲフィオンは目をそらした。

その体色が単なるこけおどしではなく、催眠効果があることを察知したのだ。

おそらくは、この島で自分が道に迷っていた元凶はこの怪生物だ。

ほとんど偶然にゲフィオンが察知しなければ、この生き物は即座に彼女に催眠を掛けていただろう。


<幻惑の海魔(メズマライズ・シーアネマニ)>。


ゲフィオンは知らないが、それがこの生物の名前だった。

だが、現時点で名前などはどうでもいい。

ゲフィオンにとって大事なのは、この生物を倒さなければ先へは進めない、ということだ。

目をそらしたおかげで、地震のような視界の揺れは徐々に収まりつつある。

その代わり、きわめて狭い視界で彼女は相手に向かい合わざるを得ない。

触手を自在に操る<幻惑の海魔>に対し、あまりに大きいハンデだ。

ゲフィオンは唇を噛んだ。


「レベルは……たぶん65。min……従者級(ミニオンクラス)か!」


そむけた顔で読んだステータス画面が示すものは、この生物が何者かの召還獣である、ということだ。

ということは、これを放った何者かは、明確に彼女を敵対視しているということに他ならぬ。


ゲフィオンは地面すれすれを這うように走った。

伸びる海魔の腕を、半ば勘で避けていく。

レベル相応というべきか、落ち着いてみれば決して避けられない速度ではない。


(所詮は従者(ミニオン)!)


だん、と最後に地面に足を叩きつけ、伸びるゲフィオンの腰から光芒が走る。

記憶をなくす前から彼女と共に在った緑の刃がうれしそうにリィィン、と鳴った。


「GYUUUUUUUUIIIII!」


海魔の絶叫が響き渡った。

星空を雲が覆うように、夜目に鮮やかな虹色を暗青色の体液が塗り替えていく。

それだけではない。

深い紺色に近かった怪物の体液が、見る見る毒々しい緑色に染まった。

刃から滴る毒が海魔の体に叩き込まれたのだ。

規則的だった光が不規則に明滅し、痙攣するように巨大な胴が震えた。

そんな怪物に、ひと蹴りで自らの突進の勢いを止めたゲフィオンが反転する。

急激にその運動のベクトルを変えられた<暗殺者>の肉体が、弾かれたように跳ねる。


「<パラライジングブロウ>!」


再びの叫びは、半ば勝利宣言だった。

その15秒後、麻痺させられ、くたりとなった腕を切り飛ばされ、残る腕を哀願するように震わせた怪物の胴を、今度こそ深々とゲフィオンの刃が断ち割っていた。


光になって消えた<幻惑の海魔>を見届けるや否や、ゲフィオンは倒れこんだ。

酷使された三半規管が、一時的に彼女から体の平衡を奪ったのだ。

車酔いにかかったような、酩酊感と不快感の歪な混声合唱に、彼女はすでに抗えない。


(もう、ダメ)


理性では、召喚獣である海魔の死が、召喚主――おそらくは<冒険者>の<召喚術師(サモナー)>――に伝わっていると理解している。

相手が海魔をあと何匹もっているか分からない以上、今無理を押して進むのが得策だとも。


だが、体が動かない。


『ゲフィオン』ではなく、彼女が本当の名前と能力を取り戻していたら、おそらくは無理をしてでも進んだことだろう。


だが、彼女が己を思い出すまでには、いま少しの時間が必要とされていた。


己の来し方と名前を失った黒髪の女は、そのまま眠るように気を失っていた。



 ◇


「どうしました!?」

「いえ。私のペットが……死んでしまったんです」

「ペットが?! クローディウスですか? タイベリアスですか?!」

「……マーカスですわ」

「マーカスが!? なら」

「いえ、ほかの子を念のため起こしておきます。あなたは奥様と坊やについてあげてください。

きっと怖くて泣いていますわ」

「……わかりました。ですがあなたもお気をつけて。ご主人とお嬢さんの盾になれるのはあなただけなのですから」

「ええ。主人もきっとあなたと私を頼りにしてくれていますわ。

でも、残念にも思ってるでしょうね。

主人は大学ではアマチュアレスリングの選手でしたから」

「ご主人に無理はさせられませんよ。

……それに、まだ敵と決まったわけではない。我々二家族で何とか乗り切りましょう」

「ええ」


 ◇


 どうやら、海魔は一体だけのようだった。

ゲフィオンは、そろそろと目的の場所に近づいていた。


おそらく、はるか昔に<大地人>が作ったらしい、朽ち果てた石造りの家々。

村、というには規模が小さい。入植地ででもあったものか……


だが、百年単位の風雪で廃墟そのものに成り果てていたはずのその家々の中で二つだけ、

石くれや草木でほんの気休めのように屋根が葺かれ、壁の隙間に石が詰められたものがある。

明らかに、最近人の手が入った証拠だ。


そのつくりの粗雑さは、ゲーム時代の<エルダー・テイル>の調和の取れた風景とはあまりに異質だった。

何者かが、いる。


ゲフィオンは知らず、ごくりと唾を飲み込んだ。

その顔も知らない相手が自分に海魔をけしかけたことを、もはや彼女は疑っていない。


(であれば敵)


既にゾーン名称は『朽ちた入植地』というものに変わっている。

同一ゾーンであれば、<追跡者>でもない彼女の存在は知られていると見ていいだろう。

ゲフィオンは、抜き放っていた二本の刀をぐっと握り締めた。



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