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ある毒使いの死  作者: いちぼなんてもういい。
第6章 <傷ある女の修道院>
109/245

77. <傷>

1.


 <大地人>との戦い以来、周囲のゲフィオンに対する目は変わった。

おおむね、いい方向にだ。


戦場で彼女が見せた苛烈ともいえる戦いぶり、それは血みどろの戦場から逃げ出してきた修道院の<冒険者>たちにとっては、決して見て心地いいものではなかったが、それでも自分たちの居場所を守る頼もしい味方だと思えたのであろう。

<大災害>から約1年が経過し、誰もがそれなりに血と荒事に慣れていたのも幸いした。

いや、言い方を変えれば、誰もが酸鼻な殺しを見ても泣き叫ばない程に、精神が磨耗していたのだ。


「ゲフィオン!」


その日。

ミリアムの代わりに畑の雑草を抜いていた彼女に、手を振りながら駆け寄ってきた少女は、訝しげに腰を上げたゲフィオンの手を有無を言わさず取ろうとした。


「……なんだ、ジャニス」

「あ、ごめんなさい」


そういって悪戯っぽく舌を出したのはジャニスという名の少女だ。

先日起きた<大地人>部族との戦いで、捕まっていた二人の女性のひとりである。

戦い以来、彼女はこうしてゲフィオンに纏わりついてくることが多くなった。

実年齢は、まだハイティーンにも届かない少女だということも、既にゲフィオンは知っている。

友人の勧めで<エルダー・テイル>を始め――その友人に裏切られ、奴隷へと売り飛ばされたことも。

そうした境遇の女性は、この<傷ある女の修道院>には多い。

だからこそ、その中でも明るさを取り戻したように見えるジャニスを、内心ゲフィオンは感心して見ていた。


「どうした。お前さんは今日は採集じゃなかったか?」

「ああいうことがあったから、当分採集はしないで良くなったのよ。

今は中で書写をしてるわ」


そういう彼女のサブ職業は<筆写師>だ。

聞けば、プレイヤーの持つ知識を本にし、百科事典のようなものを作るプロジェクトに参加しているのだという。

まともな知識など綺麗さっぱり無いゲフィオンは、ちょっとした羨望の気持ちと共に少女に答えた。


「……ならば、ますますもってこんな場所で油を売ってはいけないんじゃないのか?

早く戻ったほうがいいと思うが」


ゲフィオンの忠告に、ふるふると小動物のようにジャニスは首を振る。


「筆写すべき知識を集めるのも役目よ。そして今日は貴女の番。話、聞かせて?」

「といってもなぁ」


畑仕事の手を止め、ゲフィオンは天を仰いだ。

視界の端に黒い雲が映る。 どうやら雨だか雪だかが降るらしい。

早く暖炉のある場所に戻りたいものだ、と思いながら腰を下ろした彼女の横に、ジャニスもちょこんと座った。

その光景は、同年代というよりは、祖母に話をせがむ孫娘といった風情だ。


「私が殆ど記憶をなくしているのは知っているだろう? 覚えている記憶は断片的で、映像的だ。

そう簡単に話せやしないさ」

「でもさ、ニホンから来たんでしょ? 興味あるのよ、ニホン」


ローブの裾から覗く<上忍の忍び装束>をちらりと見て、なおもジャニスは言い募る。

仕方なしに、ゲフィオンは自分が覚えていることのうち、血なまぐさくないものを話すことにした。

かすかに覚えているヤマトの、あるいは他の地域の風景。

覚えている限りの、各地の<冒険者>。

その地での、冒険。

いつしかゲフィオンは、熱心に聞き入るジャニスに話し続けていた。


ぽつり、とゲフィオンの顔に水滴がかかった。


「あ、いかん」


長話をしすぎたことに気付いたゲフィオンはあわてて立ち上がり、育っていたハゴロモジャスミンの上に雨除けをつけ始めた。

支柱を整え、倒れないようにしっかりと地面に突き刺す。

ジャスミンの中でも寒さに強い種ではあるが、雨に打たれ、冷たい大地に伏せていてはさすがに枯れてしまうからだ。

黙って手伝い始めたジャニスと共に、加速度的に雨脚を強める崩れた天気からせっせと香草を守り続ける。

作業が終わったのは、雨が本降りとなって、二人のローブがずぶ濡れになった頃だった。


「こりゃ、拙いね。体を拭かないと」


ははは、とゲフィオンが笑って振り向くと、そこには異様な程に汗を浮かべたジャニスがいた。


「……どうした。気分でも悪いのか!?」

「は、ははは……雨、雨、暗い雨……こんな日だった。こんな日だったなあ」

「おい!」

「誰も、助けてくれなかった、私を、私を、私をわたしをわたしをわたしをわたしをあああっ!!」


狂乱したように叫ぶジャニスを、ゲフィオンは抱えて走るほかなかった。



 ◇


「心的外傷……いわゆるトラウマね」

「トラウマ?」


 自らのベッドにジャニスを寝かせ、苦しげに呻く彼女の汗を布でぬぐって、アールジュはぽつりと呟いた。

ここは彼女の自室だ。

ジャニスを抱えて走るゲフィオンに、<冒険者>の一人がこの場所へ行くよう指示したのである。

ゲフィオンが部屋に着いたとき、すでにジャニスは眠っていた。

その寝顔は安らかには程遠い。どれほどの悪夢を見ているのか、あどけない顔を歪めて喘いでいる。


「あんた……精神科医だったのか?」

「違うわ。元はカウンセラー。それも、性同一性障害専門のカウンセラーよ」


ゲフィオンの問いに、アールジュは静かな口調で答えると、乱れたジャニスの毛布を整える。

黙ってそれを見つめるゲフィオンの眼差しをちらりと見て、アールジュはかすかに苦笑した。


「専門外でも見捨てるわけにもいかないでしょう。ここは<傷ある女の修道院>よ。

受けた傷は肉体じゃない……あなたもそうよ」


ゲフィオンは今更ながらに、この小さな共同体の抱える痛みを思い知った。

ここにいる女<冒険者>たちのレベルはさまざまだが、90レベルに達している者は少ない。

そして、元のギルドネームをつけたままの<冒険者>の数はさらに少ない。


眠るジャニスを見る。

<大地人>の蛮族に捕らわれたことなどどこ吹く風とばかりに闊達に走り回っていたジャニスでさえ、この有様だ。

何が彼女の内心の傷をえぐったのかは……彼女の叫びが如実に告げていた。


黙りこくるゲフィオンを、アールジュはいたわる様に言葉を続けた。


「……誰もが癒しがたい傷を負ってここに来るわ。排除される、見捨てられるというのは軽いほう。

人の……<冒険者>の心はあまりに弱いから。

この()のように何かをきっかけに自分を見失う者、何かができなくなってしまった者。

あなたも同じよ、ゲフィオン」

「……私が?」

「ええ」


いつの間にか、アールジュはゲフィオンのそばに立っていた。

<暗殺者>である彼女すら気づかないほどに密やかな動きだ。

その手がゆっくりと、ぬばたまのようなゲフィオンの黒髪に触れる。


「あなたはこの娘のようなトラウマは見当たらない……戦うことにも抵抗がないわ。

だけどあなたは傷を負っていないわけじゃない。

ただ、その傷を記憶ごと押し込めただけ」

「私が自分の意思で記憶をなくしたと?」

「あなたという人格を守るために、だと思う。

忘れないでほしいのだけれども、<冒険者>の肉体はゲームそのままの超人(アバター)だけど、その魂は地球にいたころと同じ。

肉体的な病気や死からは逃れられても、心の病気からは逃れられない」


断言するようなその口調に、思わずむっとしたゲフィオンが反論するより先にアールジュが口を開く。


「あなたが記憶を取り戻すとき、それはあなたの心が癒されたときか、あるいは心の抵抗が破られたとき。

どっちになるかは分からないけど、そのときもう一度、あなたの旅が始まるのだと思う」

「私の……旅」

「さあ。ジャニスは私が看るから、もう戻りなさい。風邪を引くわよ。

ミリアムも探しているでしょう」


その声に促されるように立ち上がったゲフィオンに、アールジュは預言者めいた口調で最後に告げた。


「あなたはただ、この地にいなさい。あなたの平穏が破られるまで」


謎めいた忠告は、ゲフィオンの心に言いようもない感覚のみを残し、彼女は操られるように部屋を出たのだった。




2.



 <傷ある女の修道院>は、基本的に自給自足のコミュニティだ。

だが、まだ作られて一年も経っておらず、最初の麦の収穫まではまだ間がある。

彼女たちとしては、かつての清貧修道会のごとく世俗と離れた生活を望んでいたものの、現実としてそうもいかないのもまた、実情だった。

<冒険者>の肉体がどこまでの飢餓に耐え切れるか、さすがに彼女たちも自分たちで試そうとは思わなかったのだ。


 結果として、近隣の唯一の<大地人>の村であるアルヴァ・セルンド島の村―あまりに田舎であるため村の名前すらなかった―と時折交易を結ぶことになる。


「私に、村へ行けと?」

「そうだ」


ジャニスが倒れてから数日後、いつものようにミリアムの薬草素材の畑を世話していたゲフィオンは、呼びつけたロージナにそういって顔をしかめた。


「なぜ、私が?」

「護衛だ」


二人の会話は短い。共に要点だけを話しているからだ。


「護衛が必要な意味は?」

「なあ、私たちがどうして仲間内だけで引きこもっていると思う?」


だが、ゲフィオンの問いに返ってきたのは、呆れたようなロージナの逆質問だった。


「それは……」

「いくら<大地人>とはいえ、男の顔を見ただけで気分が悪くなるような奴もいるんだ。

まともな交渉をさせるためにも、護衛は常に必要なのさ」


ここにきてゲフィオンもようやく気づく。

なぜ、あのジャニスのようなトラウマ持ちばかりのメンバーで、わざわざ順番まで作って村に交易に出かけているのか。

効率だけを重視するならば、傷の浅いメンバーを交易選任にすればいいだけのことだ。


「リハビリ……ってことか」

「まあな」


ロージナはそういって肩をすくめ、隣のアールジュが小さく苦笑する。


「傷があるからといって、そこから逃げるだけじゃ良くはならん。

少しずつ世間に慣らしていかないといけない。このコミュニティを守るためにもな」


そのための護衛――あけすけに言えば安心材料兼介護要員がゲフィオンというわけだ。


「普段なら私やほかの戦える人材が出張るんだが、ちょっと今回は出払っててね。

あんたが戦えることはよく知ってるし、ここは頼みたい」


そういうロージナの指示であれば、ゲフィオンに否やはなかった。


「わかった。いつ出発だ?」

「明日の朝だ。昼前には着くだろう。帰りは馬に荷物を曳かせるから、行きは徒歩で行ってくれ」


ロージナのほっとしたような言葉に、ゲフィオンは静かに頷いたのだった。



 ◇


「やめて! やめて! トラック、リルドア、なぜ!!」

「うるせえよ、お前がそんな体してるのが悪いんだろ」

「なんで! 私はあなたたちよりずっと年下で」

「知ったことか」

「おい、腕押さえろ、さっさと脱がせるぞ」

「どうせ気持ちよくなったらおとなしくなるって」

「やめて、やめて!! ぎゃああああっっ!!」


雨が降る。

暗く、昼とは思えない闇の中で、見知った仲間たちの顔はまるでゴブリンのように見えた。

信じていたのに。

この訳の分からない世界で何とか帰る方法を探そうと、誓い合ったのに。


なぜ。

ゲームでは常に紳士だったトラック。

結婚したばかりの奥さんの画像をことあるごとに見せびらかしていたリルドア。

騎士らしいロールプレイで頼もしくパーティを率いていたクラレンス。

みんなが、変わってしまった。


なすすべもなく暴力と、それ以上のおぞましいことを受けながら私は虚ろな目で呟く。


なんで、こうなったんだろう。

なんで、この人たちは変わってしまったのだろう。


なんで?


 雨が降る。

雨の風景は好きだった。

ハイスクールでも友達が少なく、いつも本とネットばかり見ていた私のような陰気な女の子にも、

雨は静かな、音のある孤独を与えてくれたから。

でも、今は、雨が怖い。

しとしとと降るモノトーンの寒さの向こうから、あの人たちが来るように思えるから。

私を探して。

私の肉体を、尊厳を、奪うために。


ファンタジーの世界には行ってみたかった。

お姫様のように着飾り、現実の知識を駆使して貴族に迎えられ、王子様と幸せに暮らす。

ちょっと王子様が意地悪でも、愛情さえあれば別にかまわない。


だけど、実際に行ったファンタジーの異世界は、そんな少女の幻想なんて木っ端微塵に打ち砕くほど生々しく、暴虐で、無慈悲だった。


雨は嫌い。


雨は嫌い。雨は、嫌い。



 ◇


 翌朝。


「あんたも行くのか」

「そうね」


修道院の入り口に座っていたゲフィオンは、歩み寄ってきたフード姿の女性に、軽く驚いて声をかけた。


「いつも別の人が来たんじゃ、向こうも警戒するもの。

たいてい私や、修道院でも顔を知られた人が同行するのよ。私はまだここにきて日が浅いけど、何度も村には行ったことがあるから……あら、それは?」


やってきたミリアムは、ゲフィオンが口にくわえていた奇妙な金属に目をやった。

そこからはひっきりなしに煙が吐き出されている。


「ああ。荷物の中にあったのさ。 吸ってたら気分がいいし、吸い方も覚えていたんでね」

「煙草……かしら? 変わったパイプね。東方のもの?」


ふう、と煙を吐いてゲフィオンは笑う。


「どうやらそのようだ。……煙草は体に悪いなんて言わないでくれよ」

「まあ、アールジュなら言うかもね。まあ、いいんじゃないかしら」


苦笑を交わすゲフィオンとミリアムの元に、一緒に村に旅立つ残り2人の女<冒険者>が歩いてくるのが見える。

ゲフィオンたちもそうだが、誰もが分厚い毛皮のローブとフードでしっかりと姿を隠していた。


全員が揃ったところで、一行の団長を務めるミリアムは空をちらりと見た。


「分厚い雲。このままだと雨になるかも。早く行きましょうか」

「ああ」


ぽん、と灰を落としてゲフィオンも立ち上がる。

そうして彼女たちは歩き出した。


修道院の外へ。



 ◇


 4人が足早に歩き始めるのを窓から眺めて、ロージナは小さく息を吐いた。

そのまま振り向き、部屋にいる残る二人――アールジュと、<騎兵(コサック)>――ロシアサーバの<武士(サムライ)>だ――らしい女性に視線を向ける。


「で、正体はおおむね分かったが……本当か?」

「ええ」


<騎兵>は静かに頷いた。

彼女はもともとロージナと同じギルドにいたメンバーの一人だ。

ロージナ、アールジュなどと共に、この<傷ある女の修道院>を立ち上げた、初期メンバーでもある。

彼女は普段は修道院にいない。

同じく、比較的心理的ダメージの少ない何人かと共に、外の世界を回って情報を集め、時には<大地人>に紛れて修道院に関する虚虚実実のうわさを流す。

そうした役目についていた。

戻ってくるのはたまさか、<妖精の輪>が北欧サーバにつながった時だけだ。

古い仲間であるその<騎兵>に、苦虫を噛み潰したような顔でロージナは呻いた。


「情報源は確かだろうな」

「わざわざ<輪>を抜けてヤマトから華国まで回ったのよ。嘘はないわ」

「……ゲフィオン()、いわくありげな奴だと思っていたが、まさかそんなとんでもない奴だったとはな」


ロージナは小さくはき捨てると、先ほど聞いたばかりの情報を羅列した。


「本名、ユウ。<暗殺者>。ヤマトサーバ出身、94レベル。対人家(デュエリスト)で<毒使い>。

<大災害>直後に日本のプレイヤータウンでPKに走り、その後は旅に出た。

華国では亜人やらダークエルフを率いて荒らしまわった<最悪の冒険者>。

その後は<サンガニカ・クァラ>で行方不明……とんでもない拾い物だな」


ゲフィオンの持つ名声――一般的な言い方をすれば悪名――を列挙したロージナは、再び窓を向き、彼女の出て行った正門を見る。

ついに雨が降り出したらしく、窓にぽつぽつと水滴が着いていた。


「……どうするつもり?」


押し黙って背中を向ける修道院長(ロージナ)に、あくまで静かにアールジュが問いかける。

その声に応じた声は、絞り出すようなものだった。


「ここを追い出す。あいつのやってきたことは罪というにも余りある。

修道院(ここ)に余計な面倒を持ち込む前に追放すべきだ」

「私は反対だわ」


穏やかだが、きっぱりとした否定の言葉に、ロージナも女<騎兵>も驚いて友人を見た。


「だがな。アールジュ。彼女がそうしたことをしてきたことはおそらくは事実だ。

ここに来た経緯も不明だし……」


なおも喋ろうとする<騎兵>を視線だけで黙らせて、アールジュは言った。


「あの人は記憶をなくしている。少なくとも今は、罪を問うべき時ではないと思うわ。

それに、何日か一緒にいただけだけど、あの人は実年齢でも相当に年長よ。

意味もなく、破壊衝動だけでそんなことをするとは思えない。

何かがあったのよ。彼女にそれをさせる、何かが。

それを確かめるまで、放り出すことには反対するわ」

「アールジュ。理想論だけでは私たちは立ち行かないんだ。

ここにいる何十人もの<冒険者>の安全を考えるのも私たちの役割だ」

「ロージナ。誓いを忘れたの?」


ぐ、と唸ったロージナを正面から見据え、アールジュは続けた。


「『癒しがたい傷を得た女に、癒しを。そして艱難に立ち向かう強さを』

……それがこの修道院の、最初にして唯一の誓い。

彼女は傷を負っている。それがどのようなものかは分からないにせよ。

そして、もし彼女が艱難をもたらすならば、それを克服するのもまた、私たちの役割よ。

……それに、モンスターに味方した<冒険者>を受け入れたのは、初めてでもないでしょう?」

「……そういえば、あの娘もお前が連れてきたんだったな、リリル」


名前を呼ばれた<騎兵(コサック)>は黙って頷く。

わずか数ヶ月しか滞在しなかったその娘のことを、思い出しているようだった。


「そういえばあの()も日本人だったわね」


アールジュが詩を吟じるような声で囁いた。

その声に、はぁ。と盛大にため息をついてロージナは言う。


「では当分は様子見だ。どんな奴なのかしっかり見極めて決める。

リリル、しばらくは修道院に残ってくれ。アールジュ、目を離すなよ」


二人の仲間が頷くのを見て、ロージナはようやく愁眉を開く。


「あいつが庇護すべき奴か、あるいは敵か。よく確認しておかねばな。

あのゲフィオン――ユウを」


その声が、密やかな会談の終わりの合図だった。

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