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第二話〜雪蛍編・第一章〜

俺の故郷の村に着いた時は既に日付が変わっていた。


相変わらずこの村には街灯の一本も無い・・・。


吹雪+暗闇=視界はゼロ、この方程式が成り立つのは実に分かり易い。


お陰で自分の家への入り口が分からなくてさっきから右往左往してる訳だ。


「すげぇな!!今時カーナビで詳細が記されない場所があるなんて、信じられないぜ」


隆次が助手席でホォホォと関心したようにキョロキョロしながら言った。


こいつは同じ大学のオカルト研究同好会に所属する変人だ。


眉目秀麗・頭脳明晰ではあるが所属している同好会のせいで敬遠されてしまうのだ。


「ちっ・・・何か目印とか無かったかぁ?そっち見ててくれ」


俺はタバコを咥えて隆次とは逆の方向を見ながら吹雪の中を必死に目をこらした。


「お腹減ったよぉ・・・」


俺の後ろでブーブー文句を言ってるのが俺の彼女の伊達恭子。


同じ大学の文学部に通ってるどこにでもいる女の子だ。


「ん?なんだあれ・・・ほら、見てみろよ」


隆次が防風林の奥を指さして叫んだ、その方角へ眼を向けると・・・。


−−−螢ガ振リ続ケル雪二混ジッテ舞ッテイタ−−−。


〜雪の舞うこの季節に・雪螢編〜


雪螢(ゆきほたる)


それはこの地方に伝わる伝説の一つで、それは吹雪の中で死んだ人間の霊魂が雪のように飛び回り、人をその光で惑わせ、森の奥へ迷い込ませ、凍死させる。いわゆるウィル・オ・ザ・ウィスプ的な存在であった。


「あれって・・・雪螢じゃない?」


恭子がガタガタと震えながらその光を指さした。


とにかくアレが本物ならヤバイ、しかもその雪螢は徐々にこっちに向かってフワフワ飛んできている。


そしてその光と車の距離は徐々に詰められ・・・そして。


コンコンと言う軽いノックが車内に鳴り響いた。


「ひぇっ!!」


隆次が情けない声を挙げて俺に抱きついた、抱きつくな気持ち悪い。


そもそも幽霊が律儀にノックなんかするかッ!!


助手席の窓を開けるとそこには懐かしい人が立っていた。


「あ〜!!やっぱり孝兄ぃだ!!どうしたの、こんな所で?」


俺の従姉妹でこの村の最高幹部御三家(末崎家・徳宮家・神本家)の神本梨香。


そしていやらしい事にこの御三家の家(と言うか屋敷)は村の北にある丘の上にあるのだ。


ちなみにこの四勇村の名前の由来は明治時代にこの辺りで暴れていた山賊を倒した四人の勇士から名前をとったのだ。


その四人の勇士とは末崎・徳宮・神本・橋場の四人、つまり俺は四勇士の末裔にあたるそうだ。


しかし昭和の初期頃に橋場家は子供が無く断絶したそうだ。


「いや、久し振りに帰郷したら丘への道路を忘れてしまって・・・」


俺は正直に全てを告白した、情けなくも久し振りに戻ったらすっかり忘れていた事を。


「丁度良かった!!私も家に帰る所だったの、乗せて乗せて!!」


そうやって許可を取らない内に彼女は後部座席に飛び乗った。


優秀なナビゲーターのお陰で丘へと上ることの出来る道を発見できた。


「そう言えば、あんな所で何してたんだ?懐中電灯なんか持ち出してさ」


隆次が早速慣れ慣れしく梨香に話し掛けていた。


「え?あぁ、あそこに倉庫があるの忘れた?」


梨香が林の中を指さして言った、確かによく眼をこらすと林の奥に古ぼけた小さな小屋があった。


「あぁ・・・そんな物もあったな、それで?何をしてたんだ?」


俺はタバコの灰を灰皿に落としながら聞いた。


俺の記憶が正しかったらあそこには料理長秘伝の漬物とか薪しかなかったはずだ。


「死体を隠したの♪」


この娘は笑顔でサラッとそんな事を言ってくれる。嘘だよな?多分。


「死体ねぇ・・・だけどあんな所真っ先に見つかるぞ?隠すなら雪に埋めた方が効率てぐふぉ」


隆次(バカ)が教育上よろしくない事を言おうとしたが正義のお兄さんの鉄拳を顎に叩き込んでおいた。


「子供にアホな事教えるんじゃねぇよ・・・」


俺は呆れた口調で隆次に吐きかけるように言った。


隆次は助手席で『いてえ!!これ顎骨が折れたんじゃねぇか!?』と喚いているが放っておこう。


「それにしてもびっくりしたよ〜・・・お姉さんの寿命が5日ほど縮まったよ〜」


恭子が胸に手を当ててほうっと安堵の息を付いた。5日って・・・すげぇ中途半端だなオイ。


「あははは、驚かせてごめんさい」


梨香がぺロっと舌を出して素直に謝った。その顔がどこか懐かしかった。


懐かしい故郷で懐かしい人間に会えば懐かしい感じはするが・・・どこか不思議な感じがした。


何か忘れている気がする・・・ずっと同じ言葉が頭に引っかかった。


『秘密』


何が秘密なのか思い出せない、否・・・思い出したくない。


そんな気がした・・・。

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