1/5
プロローグ
約束の時間を、既に5分は過ぎていた。
私は急いで電車を降り、改札を抜ける。
お互いに忙しくて、久々に今日会えるのに、
こういう時に限って、電車が遅れたりする。
肺が痛くなり、肩で息をする。
それでも、一秒でも、一瞬でも早く、彼の元へ。
「・・・ごめんね、遅くなって・・・」
切れ切れの息で、何とか彼に謝る。
そんな私を、彼はいつもと変わらぬ笑顔で見ていた。
そして私の頭の上にぽん、と軽く手を乗せた。
「大丈夫。僕もさっき来たばかりだから。謝らないで」
くしゃ、と私の髪を撫でるその仕草に、久々に会えた嬉しさが募っていく。
私は上がる息を抑えようと、大きく息を吸う。
「さて、どうする?」
彼が一歩先を歩き出す。
「・・・とりあえず、ご飯食べよう。話したいこと、一杯あるから」
彼の左手を握り締める。
彼は少し照れくさそうに、俯きながらもぎゅ、と私の手を握り返してくれる。
この暖かい手、今も、これからもずっと、繋いでいよう。
・・・約束。