第22話 倉庫
王都。
港湾区。
倉庫街。
朝。
霧。
騎士団。
鉄扉の前。
騎士団長が言う。
「開けろ」
兵士が押す。
――ギィ。
扉が開く。
沈黙。
麦。
山。
鉄。
箱。
塩。
袋。
倉庫いっぱい。
兵士が呟く。
「……多すぎる」
団長。
「帝国だ」
一拍。
「市場を壊す量だ」
空気が重い。
兵士。
「封鎖しますか」
団長。
「そうだ」
その時。
足音。
小さい。
だが。
空気が沈む。
ルクレール。
私は倉庫に入る。
袋の山を見る。
麦。
鉄。
塩。
私は言う。
「まあ」
団長。
「帝国が市場を壊しに来ました」
私は首を傾げる。
「ええ」
一拍。
「壊し方が雑ですわね」
沈黙。
団長。
「雑?」
私は袋を見る。
山。
高い。
静かに言う。
「独占ですもの」
一歩。
兵士が緊張する。
私は振り返る。
「火を」
沈黙。
兵士。
「……は?」
団長が言う。
「何と?」
私は答える。
「燃やしなさい」
空気が止まる。
兵士。
「食料です!」
私は頷く。
「ええ」
一拍。
「帝国のものですわ」
団長。
「だが王都の市場が――」
私は遮る。
「壊れますわね」
沈黙。
兵士。
「なら――」
私は静かに言う。
「だから燃やしますの」
誰も動かない。
私は続ける。
「市場を壊すなら」
一拍。
「全員同じ条件の方が公平ですもの」
沈黙。
兵士の喉が鳴る。
団長が私を見る。
長い沈黙。
やがて。
低く言う。
「……火を」
兵士が松明を持つ。
震える手。
麦袋へ。
――ボッ。
火。
一瞬。
静か。
次の瞬間。
炎。
麦。
燃える。
袋。
火が走る。
塩袋が破れる。
煙。
兵士が後退する。
倉庫の中。
炎の海。
団長が言う。
「市場が……」
私は炎を見る。
静かな声。
「均衡ですわ」
一拍。
「独占は消えましたもの」
炎が倉庫を包む。
煙が空へ。
港。
帝国船。
甲板。
黒衣の男が炎を見る。
目が細くなる。
小さく呟く。
「……燃やした」
沈黙。
そして。
笑う。
「なるほど」
遠く。
燃える倉庫。
炎。
煙。
男は言う。
「怪物ではない」
一拍。
「国家だ」




