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第20話 均衡市場

王都。


中央市場。


朝。


鐘。


人。


声。


いつもの朝。


いつもの値。


穀物。


鉄。


塩。


商人が帳簿をめくる。


手が止まる。


「……は?」


数字。


麦価。


半分。


「何だこれは」


隣の商人が言う。


「嘘だろ」


帳簿。


鉄価。


落ちている。


塩。


さらに落ちている。


市場がざわめく。


「誰が売った!」


「こんな量、倉庫にない!」


叫び声。


走る足音。


鐘が鳴る。


市場の警鐘。


広場。


掲示板。


紙が貼られる。


墨。


乱れない文字。


・麦 −40%

・鉄 −25%

・塩 −30%


沈黙。


誰かが言う。


「……均衡か?」


誰も答えない。


だが。


誰も否定しない。


王城。


東棟。


王子の執務室。


報告書。


「市場暴落」


王子が立っている。


机を叩く。


「均衡の刃か」


騎士団長。


即答。


「違う」


沈黙。


「人を壊す連中では無理です」


王子。


「では誰だ」


団長。


「……市場そのものです」


静寂。


王子の眉が動く。


「意味が分からぬ」


団長。


「誰も襲われていません」


「だが値だけが崩れた」


一拍。


「誰かが、市場を壊しました」


商会連合。


会議室。


円卓。


怒号。


「倉庫を調べろ!」


「輸送記録!」


「偽装売りだ!」


帳簿が叩きつけられる。


「在庫が合わん!」


「消えている!」


沈黙。


保険組合が言う。


「均衡保険を発動します」


空気が止まる。


穀物商。


「もう発動か」


「市場が壊れた」


一拍。


「これは事故ではない」


小さく言う。


「均衡だ」


王都。


北区。


路地。


噂。


「値が落ちた」


「商会が泣いてる」


笑い。


「均衡が触ったんだ」


別の声。


「均衡は人を壊すんじゃなかったのか」


沈黙。


誰かが言う。


「次は市場だろ」





帝国。


黒曜宮。


長い机。


報告書。


皇太子が読む。


側近が言う。


「王都市場が崩れました」


沈黙。


皇太子が紙を閉じる。


「誰がやった」


「不明です」


静寂。


皇太子は窓を見る。


遠い西。


王国の方向。


小さく言う。


「均衡は学ぶ」


側近。


「皇太子殿下?」


皇太子。


「最初は人だった」


「次は思想」


一拍。


「今は市場」


指で机を叩く。


「次は国家だ」


蝋燭の炎が揺れる。


皇太子は微笑んだ。


「実験は成功だ」

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