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第11話 商会の選択

王都、南区。


石造りの大商館。


厚い扉。

豪奢な応接室。


商会連合の紋章が、壁に掲げられている。


王子はひとりで来ていた。


護衛は外で待たせた。


円卓の向こうに座るのは三人。


穀物商会。

兵站商会。

保険組合代表。


静かな視線。


最初に口を開いたのは穀物商会の長だった。


「殿下。お時間を感謝します」


王子は頷く。


「用件は分かっている」


保険組合の男が言う。


「王都の保険料は三倍になりました」


「交易路の契約も見直されております」


兵站商会が続ける。


「隣国は軍備を増強」


「帝国は監査官を派遣」


「市場は不安定です」


沈黙。


王子は問う。


「それが私と何の関係がある」


穀物商が微笑む。


「抑止力の存在が、市場を揺らしております」


「“ある”と確定したことで、戦の期待値が変動した」


王子の目が細まる。


「戦は減るはずだ」


「長期的には」


保険組合が答える。


「ですが短期的には、“未知”が最大の不安材料です」


一拍。


「市場は恐怖を嫌います」


王子は机に指を置く。


「つまり?」


兵站商会が静かに言う。


「殿下が明確に“危険”と定義してくだされば、」


「我らは準備ができる」


沈黙。


王子は理解する。


彼らは怪物を排除したいのではない。


確定させたい。


敵か味方か。


どちらでもいい。


曖昧が困る。


王子は低く言う。


「父上は“均衡”と定義した」


穀物商は頷く。


「ええ。それが最も市場を不安定にしております」


「均衡とは、揺れるということですから」


言葉が静かに落ちる。


王子の中で何かが繋がる。


騎士団は均衡を支持した。


王は理解を選んだ。


だが商会は、


確定を求める。


王子は問う。


「私に何を望む」


保険組合の男が答える。


「“監督権”の設置を」


「抑止力が動く際、王子殿下の承認を必要とする」


空気が止まる。


それは。


実質的な制御。


兵器扱い。


王子は椅子に深く座る。


「それは父上への反意だ」


穀物商が穏やかに言う。


「我らは王国の安定を望むのみ」


「殿下がその象徴となれば、市場は落ち着きます」


甘い言葉。


だが裏は明確。


王子が“怪物を制御する王子”になれば、


市場は安心する。


王子の指が、ゆっくりと動く。


窓の外、王都の屋根。


遠くで鐘が鳴る。


「……もし彼女が承認を拒めば?」


保険組合が答える。


「その時は、危険であると定義できます」


沈黙。


王子の目が暗くなる。


それは罠だ。


彼女を追い込めば、


均衡は崩れる。


だが。


王子はまだ、揺れている。


「考える」


短く言う。


商会連合は立ち上がる。


「殿下のご決断を、我らは支持します」


扉が閉まる。


静寂。


王子は一人残る。


机の上の書簡。


騎士団は均衡側。


王は理解側。


商会は確定側。


王子は、中心に立たされている。


「……私は」


小さく呟く。


「秩序を守る側だ」


だがその秩序が、何を意味するのか。


まだ、決めきれない。


王都は静かだ。


だが金は、動き始めている。

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