第1話 夢を再現する才能
「――――なになに、〝義賊再び!魔法令嬢シルビィが悪逆貴族を成敗!〟…………って、だから魔法少女だってばもう!」
日が差し込む一室で新聞紙を広げた青髪の少女がベッドに手足を投げ出して叫ぶ。
年の頃は十五くらいに見える少女はまるで小さな子供のようにベッドの上でバタバタ暴れまわり、シーツをしわくちゃにしている。
しばらくの間、暴れまわった事で気が済んだのか、急に大人しくなった彼女は新聞紙をクシャクシャに丸めて放り投げ、ため息を吐いてから片手で顔を覆った。
「…………新聞紙に当たってもしょうがないかぁ……まぁ、いつかこの記事を書いた人はとっちめるけど」
独り言を呟いた少女はベッドから勢いよくと立ち上がり、放り投げた新聞紙を拾ってごみ箱に捨てて窓際の椅子に腰を掛け、思いを馳せる。
(……やっぱりこの世界で魔法少女は流行らないのかな……ううん、めげるな私!もっと有名になって、名乗りを上げればいつかきっと認知されるはずだもん!)
心の中でそんな事を思う少女だが、わざわざこの世界と表したものの、特に別の世界からやってきたわけではない。
この世界で生まれ、この世界で育った貴族令嬢……他の人と違う点があるとすれば、幼い頃から夢の中で別の世界を追体験している。
前世がどうだとか、生まれ変わっただとか、原因や理由は分からない。
そもそも彼女自身、追体験についてを深く考えた事もないし、ただただ純粋に楽しい夢が見れると喜んでいた。
それだけに少女は記憶に振り回される事も、人格が変わるような事もなく、健全に育った。
ただ一点、少女の人生に影響を与えたとすれば、夢での追体験の折に見た〝魔法少女〟という存在に憧れを抱いた彼女がとある事に気付き、こう思ってしまった事だろう。
あれ?この世界なら私も魔法少女になれるのでは?、と。
というのも、夢で追体験した世界と少女の生きる世界は明確に違い、魔法という存在が空想ではなく、生活の一部となっていたのだ。
上手く魔法を使えば悪を挫く正義のヒロイン……魔法少女になれる、そう気付いたその日から少女は魔法の研究、研鑽に勤しみ、そして――――ついに辿り着いた……いや、ついてしまった。
幸か不幸か、才能に恵まれた少女の魔法は絶大な効力を発揮し、武装した大人だろうとなぎ倒せる力を与え、自己満足のために夜な夜な悪と思われる者を成敗し続け、いつしか都を騒がせる義賊として名が知られる事に。
それが彼女……倒すべき巨悪もなく、確固とした正義も持たないながら、妄想と憧れを魔法によって自らに再現した偽物な魔法少女――――それこそがマギアシルビィの正体だった。




