2.婚約破棄されたあとのこと
「サーヴァルミア! あなたが婚約破棄されたと聞きました! 本当なのですか!?」
そう言って伯爵家の一室に入ってきたのは、美しい令嬢だった。
肩まで届く鮮やかな金の髪。空色の瞳。
まるで陽光の下に咲きほこる花畑のような、明るく存在感のある令嬢だった。
彼女の名はメイナルミア・ディースクライム。
婚約破棄された妹が伯爵家の本家に戻っていると聞き、すぐさま駆けつけてきたのだ。
屋敷に着くなり挨拶もそこそこにやってきた妹の部屋。
そこにはサーヴァルミア・ディースクライムの姿があった。
曇り空を思わせる暗いグレーの髪に、暗くよどんだ青の瞳。
日の差さない森深くにひっそりと咲く花のような、薄暗く儚い令嬢だった。
まるで太陽と月のように対照的な姉妹だった。
姉と目が合うと、サーヴァルミアはすぐに視線を落とした。普段から暗い妹だったが、今は不安が更に影を深くしているようだった。
サーヴァルミアは物憂げに語り始めた。
「本当です。わたしはアムレング様の気持ちをつなぎとめることができませんでした……」
「あなたみたいな頑張り屋のいい子を婚約破棄するなんて信じられません! なんてひどい男なんでしょう!」
「いいんですお姉様……わたしはもう、疲れてしまいました……」
その声には心底疲れたという響きがあった。
そしてメイナルミアは気づいた。妹の手の下。テーブルに置かれた書類。それは修道院の入所申込書だ。
「その書類……まさかあなた、修道院に入るつもりなのですか!?」
「はい、そうです。北のはずれの修道院に入り、俗世を離れて自分を見つめ直したいんです」
王国北部のはずれにあるその修道院は、戒律が厳しいことで有名だ。俗世とは一切関係の絶たれるその場所に行くことは、貴族としての人生すべてを失うことを意味する。
既に書類には必要事項が記入されている。署名の筆跡に乱れは見えない。サーヴァルミアの覚悟が並々ならぬものであることが窺えた。
「わかりました……あなたがそうと決めたのなら、私は止めません。でも、アムレング殿にはひとこと言わなくてはなりません!」
サーヴァルミアが決めたのなら、その意思は尊重したい。
だが、妹をここまで追い込んだ子爵子息アムレング・カルダスタン。彼には言っておかねばならないことがある。
メイナルミアは燃える憤りを胸に、行動を開始した。
王都の貴族向けの高級バー。その中には特別な部屋が用意されている。そこには何重もの結界が張られ、およそあらゆる情報の洩れないとの触れ込みだ。
貴族には人から隠れて話さねばならない時がある。王都内にタウンハウスを持つ貴族も少なくないが、自分の家ではできない密談も時として必要だ。ここはそんな時のために用意された部屋なのだ。
メイナルミアは席に着き、静かに待っていた。その後ろには店のメイドがたたずんでいる。
そこに貴族子息が訪れた。几帳面に整えられたブロンドの髪に、切れ長の瞳の怜悧な青年。サーヴァルミアの元婚約者アムレング・カルダスタンだ。メイナルミアに呼び出されてやってきたのだ。
二人は形だけの礼をかわし合い、テーブルを挟んで向かい合わせに座った。メイドが紅茶を淹れ部屋を去った。二人きりになると部屋の空気はたちまち硬質なものとなった。
「なぜ私を呼び出したのですか?」
口火を切ったのは子爵子息アムレングだった。その声には不満の響きがある。
本来、アムレングがこの場に来る必要はない。婚約破棄とは両家の関係を決定的に絶つ行為だ。婚約破棄を告げた相手の親族から呼び出されてわざわざ密談用の部屋にやって来ることなど、通常ならばありえない。
しかしアムレングは来た。来るしかなかった。メイナルミアはただ彼を呼び出したのではない。彼女が懇意にしている貴族たちを使い、アムレングのカルダスタン子爵家に圧力をかけたのだ。ただでさえ婚約破棄という不作法を働き、立場の弱いアムレングだ。煙でいぶされたウサギが巣から追い出されるように、この場に来るしかなかったのである。
アムレングの怒りを肌で感じながら、しかしメイナルミアは動じない。穏やかな微笑みを浮かべたまま、一言告げた。
「……これは、慈悲です」
アムレングは眉をひそめた。メイナルミアが口にしたのは、この場には似つかわしくない言葉だった。メイナルミアは訝し気な視線も気にせず、紅茶の香りを楽しみながら言葉を続けた。
「私の可愛い妹サーヴァルミアに婚約破棄を告げるという愚行。その愚かさについて、弁明の機会を与えようというのです。慈悲と言うほかないでしょう」
メイナルミアは歯を見せて笑った。こうした場において令嬢が歯を見せて笑うのは不作法なことだ。あからさまな挑発を見せつけられ、アムレングはカッとなった。
「確かに夜会での婚約破棄は不作法と批判を受けるのもやむを得ないことでしょう! ですが正義はこちらにある!」
そう言ってアムレングはテーブルの上に紙の束を叩きつけた。
それはただの紙ではない。魔法省の印が押されたその紙は、『移ろわない写し』と呼ばれる魔道具だ。
『移ろわない写し』は、起動すると周囲の魔力を文字にして記録する。主に魔力の痕跡を記録するための魔道具だ。
その最大の特徴は、改ざんが極めて困難であることだ。ただのインクで書き加えても、魔法で書かれた文字との違いは明確だ。一般人ならともかく、魔法に通じたものならすぐに判別できてしまう。
かと言って魔法で内容を書き換えようとすると、『移ろわない写し』はその魔法を記録してしまう。
魔法省公式の『移ろわない写し』は、裁判においても有力な証拠となる。高価な魔道具だが需要は高い逸品だ。
アムレングが取り出した『移ろわない写し』は、20枚近くあった。
「全て貴女の妹、サーヴァルミア嬢の嫌がらせの記録だ! 彼女は卑劣にも、魔法を使って男爵令嬢フィーエニアに嫌がらせを繰り返した! そんな令嬢は、婚約破棄すら生ぬるい! 慈悲があるのはこちらの方だ!」
アムレングからの糾弾を受けても、メイナルミアはまるで動じなかった。落ち着いた態度で紙の束をめくった。
『移ろわない写し』には魔力の痕跡の記録がある。そこに記された魔力のパターンは、確かにサーヴァルミアのものだった。
それに加えて紙留めで普通の紙が添えられていた。そこには魔力の痕跡を記録した状況が書かれている。その記載は正確なもので、『移ろわない写し』の記録とも矛盾はない。公式の裁判にこのまま提出しても通じるだろう。
サーヴァルミアが魔法を使って同じ学園の令嬢に嫌がらせをしたという、これ以上ない確たる証拠だった。
しかし、それを目にしてなお、メイナルミアはまったくの平静を保っていた。
「あなたはこれを見てどう思ったのですか?」
そう問いかけられ、アムレングは訝しげな顔をした。わざわざそんなわかり切ったことを聞く意味がわからなかったのだ。
メイナルミアはじっと彼の方を見つめている。まるで品定めしているような目だ。アムレングはその視線を不快に感じながら答えた。
「実に陰湿で卑怯な行いだと思った」
「他には?」
「……他だと?」
「ええ。他に思ったことはないのですか?」
メイナルミアはじっとアムレングを見つめている。視線の温度が下がった。冷めた、見下す目になった。それが気に入らず、アムレングは言葉を荒げた。
「こんな令嬢と一生を共にできないと思った! だから婚約破棄を突きつけたのだ!」
メイナルミアは深々とため息を吐いた。芝居じみた落胆を示すそぶりに、アムレングのいらだちは更に増したが、やはりメイナルミアは動じない。
「家柄は悪くない。能力的にもほどほどに優秀だと思った。だから妹の婚約者になることを許したというのに、これほどまでに愚昧で愚鈍だったとは……やれやれ、私は人を見る目をもっと養わねばなりませんね……」
「ぐ、愚昧で愚鈍だと!? 先ほどからなんなのだ、いくら伯爵令嬢だからと言って、いわれもなしにこの私を蔑むなど、不作法にもほどがある! その言葉を取り消せ!」
「理由は、あなたがとても簡単なことに気づかないからです。あんなつまらない嫌がらせをするのに、どうしてサーヴァルミアがわざわざ魔法を使う必要があったというのですか? 魔力の痕跡をこうも記録しやすいように残したのか……その意味がおわかりにならないのですか?」
そう言われてアムレングはハッとなった。確かに奇妙なことだった。教科書やノートを汚すのも、階段でうしろから突き飛ばすのも、魔法を使わなければこうして痕跡を記録することはできなかった。目撃証言だけでは確たる証拠にならなかったはずだ。
『移ろわない写し』は高価な魔道具だ。普通は学生間の諍いに使うようなものではない。魔法学に通じたアムレングだからこそ、こうしてたくさんの記録を残すことができた。
改めて振り返ってみれば、アムレングに痕跡を記録させるために、あえて魔法を使って嫌がらせをしていたとしか思えない。そこまではわかった。だがその意図となると、アムレングはとっさに思いつかなかった。
「これは婚約者の浮気に対する静かな抗議です」
メイナルミアは鋭い声で断言した。
婚約者の浮気に対してどれだけつらく悲しい気持ちを抱いている。それをわかってもらうために、あえて証拠に残りやすい手段で浮気相手に嫌がらせをした……そう考えればつじつまは合う。
だがそれは、アムレングにとっては納得のいかないことだった。
「そ、そんなバカな……! 不満があるなら面と向かって抗議すればいいではないか! その機会はいくらでもあった!」
「妹は奥ゆかしくて内気な子です。浮気をしないで欲しいなどと、面と向かって言えるわけがないじゃないですか。あなたの方こそ問いただす機会はいくらでもあったはずです。それなのに証拠を集めるばかりで妹に歩み寄ろうとしなかった」
「彼女は私に好意を見せたことなどなかった! 冷めた婚約関係だった……!」
「なぜそんなことが断言できるのです? あなたのような目先の色香に惑わされた殿方が、乙女の繊細な胸の内をわかるはずがないでしょう?」
「だからと言って嫌がらせをしていい理由にはならない! 彼女は卑劣な令嬢だ!」
「確かに妹にも非はあります。ですが婚約者がいながら浮気をしたあなたが、あの子を一方的に責め立てるなど、厚顔無恥にもほどがあります」
アムレングは歯噛みした。メイナルミアの言葉はどれもこれも筋が通っていた。正論だから否定できない。落ち着いているから隙が無い。妹の非を認めているから、反撃する契機がない。アムレングは一方的に責めてられるばかりだった。
「あなたが自らの非を認め、誠心誠意謝罪してくださるのなら私も矛を収めましょう。どうなさいますか?」
熱くなるアムレングに対し、メイナルミアは落ち着いた気品あふれる佇まいを保っていた。相手の方が爵位の上ということは関係ない。そこにあったのは、明らかな格の違いだった
それはアムレングのプライドを傷つけた。
「誰が謝るものか! 私は間違っていない! 証拠はここにある! 裁判をすれば、私の正しさは証明される!」
既に夜会で婚約破棄を宣言した。今さらサーヴァルミアとよりを戻すことなどできない。ようやく手に入れた男爵令嬢フィーエニアを失うことなどできない。ここで折れてしまうわけにはいかなかった。
あくまで抵抗の意思を見せるアムレングに対し、メイナルミアは深々とため息を吐いた。
「あなたは今、人生で最大の失敗をしました」
そう言うと、メイナルミアはアムレングに人差し指を突きつけた。面と向かった相手に対し、指さすなど無礼にもほどがある。
しかしアムレングはその不作法を指摘できなかった。それどころか身動き一つとれなかった。
「……この私を、敵に回してしまったのですから」
メイナルミアの指先には魔力がこもっていた。呪文の詠唱もなしに指先に集めただけの魔力。それを放ったところで、普通なら何の脅威にもならない。
だが魔法に長けたアムレングは戦慄と共に理解していた。あれは防御魔法なしで防ぐことはできない威力を秘めている。
それでも、素手で殴る程度の威力しかないだろう。致命傷にはなり得ない。だが問題なのはその狙いだ。指先はアムレングの喉元にぴたりと向けられている。当たればしばらくの間は呪文の詠唱は不可能となる。そうなればメイナルミアは呪文を詠唱し、致死の威力をもつ魔法を悠々と放つことができる。
アムレングは魔法の扱いに長けている。もしメイナルミアが魔法を使う気配を見せていたならすぐさま察知できたはずだ。だがほんの一瞬前まで、その兆候はまったくなかった
彼女は指を向けるというわずかな動作、一呼吸にも満たない時間で、これほどの魔力を指先に集めて見せたのだ。それは強大な魔力を有し、精密な魔力操作の技術がなければ成し得ないことだ。それはアムレングにもできないことだ。相手の実力が圧倒的に上回っていると認めざるを得なかった。
何より恐ろしいのはメイナルミアの態度だ。彼女は平静を保っている。興奮も緊張もない。その気品ある佇まいは淑女と呼ぶにふさわしい。それなのに、その真っ直ぐに向けられた空色の瞳は、あまりに真剣で全く隙が無い。
もしアムレングが彼女の意に添わぬ動きを見せれば、メイナルミアは躊躇いなく魔力を放つだろう。そしてそのあとは、強力な攻撃魔法を容赦なく撃ってくる。そのことが確信できてしまう。だからアムレングは身動き一つとれない。
「ああ、ご心配なさらず。今日のところはあなたに危害を加えるつもりはありません」
そう言ってメイナルミアが手を下ろすと、指先に集めた魔力は霧散した。
アムレングの総身からどっと汗を噴き出た。顔を伝う汗が気持ち悪く感じられたが、ハンカチを取り出しぬぐうことはできなかった。
未だ鋭さを失わないメイナルミアの空色の瞳に、射すくめられていた。
「このメイナルミア・ディースクライムを敵に回すと言うのはどういうことか、少し教えてさしあげたのです。どうです、私は慈悲深いでしょう?」
そう言って、メイナルミアは上品に微笑んだ。柔らかで、優しげで、陽だまりのように温かな笑顔だった。
その笑顔はアムレングの胸に恐怖と共に刻み込まれた。彼はその笑顔を生涯忘れることができなかった。
アムレングとの会談から一週間ほど過ぎた休日のこと。
メイナルミアは婚約者に招かれ、グーファミル伯爵家のタウンハウスに訪れていた。
貴族か豪商しか家を持てない高級住宅地に建てられたその3階建てのタウンハウスは、外に張り出した見晴らしのよいテラスを有していた。
メイナルミアは婚約者と共に、そのテラスでテーブルを囲んでいた。婚約者同士のいつもの会合だった。
メイナルミアの婚約者リトナーフは、グーファミル伯爵家の第二子だ。ブロンドの髪に落ち着いた雰囲気の深緑の瞳。整った顔立ちに、長身でスタイルのいい美丈夫だ。その能力は伯爵家にふさわしい優秀なもので、社交界での覚えもめでたい。メイナルミアのディースクライム伯爵家に婿入りし、両家の繁栄に寄与するものと期待されている。
いつも穏やかなリトナーフだったが、その面差しにはどこか暗い陰がついていた。
「……今日は、君に伝えなくてはならないことがある」
ひとしきりお互いの近況報告や世間話の終わったころ。リトナーフは重々しく切り出した。
メイナルミアは小さくため息を吐いた。
「婚約を解消したいというお話ですね?」
「まいったな、お見通しか……そうなんだ。君も理解しているだろうが、これは派閥の問題によるものだ。私としては、決して本意ではない」
「はい、そのことは承知しています」
メイナルミアの妹、サーヴァルミアは下位の貴族から一方的に婚約破棄を告げられてしまった。しかもサーヴァルミア側に明確な非があるため、それはディースクライム伯爵家の瑕疵となる。
メイナルミアとサーヴァルミアの婚約は、もともと王国西部開拓を主導するピオネアール侯爵家の派閥に入ることが目的だった。瑕疵を作った、それも新参の伯爵家を無理にとどめようとすることは、派閥の結束を乱すことにつながる。メイナルミアの婚約解消は必然的なことだった。
リトナーフとしてはつらいことだった。メイナルミアとは良好な関係を続けてきた。彼女の美貌には心ときめかされたし、その優秀な能力には敬意を抱いてすらいた。彼女を伴侶とすれば両家の繁栄はまず間違いない。それにきっと……幸せな家庭を築けると思えた。
しかしその未来は失われてしまった。
沈み込むリトナーフに対し、それを見つめるメイナルミアの空色の瞳はわずかに鋭さをました。
「それで、念のために確認しますけど……妹が婚約破棄されたことは、派閥の意向ということはありませんよね?」
「まさか、そんなことがあるものか! 侯爵様も君が派閥から離れることを惜しんでおられたよ……」
ピオネアール侯爵家の主催する晩餐会。そこに参席したメイナルミアは注目を集めた。その美貌。あふれる才気。人を惹きつけるカリスマ。まだ派閥に入りたての彼女だったが、早くも存在感を示していた。
狭量な貴族なら彼女のことを目障りに感じ、派閥から排除するために何らかの策略を仕掛けたかもしれない。だがピオネアール侯爵は王国を支える大貴族の一人であり、その器も大きかった。侯爵はむしろメイナルミアの能力を有効活用するため、いくつかの方策に組み込むことを計画していた。
そんなメイナルミアを放逐せざるをえないことは、ピオネアール侯爵にとっても惜しいことなのだろう。メイナルミアの婚約解消について十分な配慮をするよう、侯爵家から通達があった。伯爵家の令嬢がそこまで目をかけられるのは異例のことだ。
メイナルミアの目つきの鋭さが、ふっとゆるんだ。
「これは失礼いたしました。子爵子息アムレング殿とは実際に会ったことがあるのですが、公衆の面前であんな大それた真似をするほどの人物とは思えませんでした。そのため、何らかの謀略で動かされた可能性を疑ってしまいました」
「私も同じことを考えた。俊英と評判の高いカルダスタン子爵家のご子息が、まさか夜会で婚約破棄を宣言するとは信じがたいことだ。念のために子爵家の周辺を探ってみたが、私が見た限り他家の干渉は見られない。あれは当事者間の問題なのだろう。まったく困ったことだ」
相手の瑕疵を理由に婚約破棄となるのは貴族社会において珍しいことではない。表に出さずに処理したなら、もっと穏便に済ませることもできただろう。だがあそこまで大っぴらにやられてはどうしようもない。派閥としても、メイナルミアのディースクライム伯爵家を切り離さざるを得なくなった。
アムレングのカルダスタン子爵家も、派閥に迷惑をかけたということで立場を落とすだろう。それでも派閥から放逐されるには至らない。子爵家は王国西部の交易に関していくつかの重要な利権を有している。簡単に切ることはできない。
婚約破棄の宣言は型破りだった。だが嫌がらせをしたサーヴァルミアにも非はある。しかも『移ろわない写し』という証拠まである。カルダスタン子爵家を不作法だけを理由に排除するには理由が足りない。
リトナーフとしては納得のいかない事だった。アムレングがあんな愚行を冒さなければメイナルミアを失わずに済んだかもしれないのだ。
アムレングのことを忌々しく思っていると、不意にメイナルミアは頭を下げた。
「申し訳ありません。私の妹がご迷惑をおかけしました」
「なぜ頭を下げるんだ? 貴女は何一つ間違いを犯していない!」
「妹の罪は姉の罪。妹の婚約相手は、もっと慎重に選ぶべきでした。もっとあの子のことを見てやるべきでした……」
「それなら私だって謝らなければならない! 派閥の都合で愛する人を手放さなければならない……! 君を連れて逃げることすらできない不甲斐なさ! 頭を下げねばならないのは私の方だ……!」
そこまで口にしたところでリトナーフは顔を伏せた。
メイナルミアのことを愛している。婚約解消しなければならないと両親から告げられた時、いっそ彼女を連れて逃げようかとも考えた。
だが若い貴族が逃げたところで、途中で力尽きるのがオチだ。仮に逃げ切れたとして、追手におびえて暮らすことになる。そんな生活を幸せと言えるだろうか。
それに貴族の立場を捨てれば、メイナルミアの輝かしい才能を腐らせることになる。愛する人を手にするために、その相手に不幸を強いるのは正しいことと言えるだろうか。
派閥から放逐されたディースクライム伯爵家はこれから相当な苦境に立たされることになる。それでもメイナルミアなら立て直すことできるかもしれない。彼女の才気を信じるのなら、静かに別れるべきだった。
だからこの場では「愛する人」などという言葉を使うつもりはなかった。そんな未練を見せたところで彼女を困らせるだけだ。
そんなとき、テーブルに手に置いた手がぬくもりに包まれた。リトナーフは泣きそうになった。その柔らかな感触は、二度と得られないものだと覚悟していた。メイナルミアが手を握ってくれたのだ。
「ありがとうございます。私のためにそんなにも思い悩んでくださって……」
その言葉だけで胸がいっぱいになる。リトナーフが顔を上げると、メイナルミアと目が合った。晴れ渡る空のような瞳が好きだった。
今日、この女性と別れなければならない。
「あなたと共に在れば、私も普通の伯爵夫人の立場に納まることができると思っていました。幸せな家庭を築けると思っていました。でもそれは所詮は儚い夢だったのですね……でも、あなたの婚約者でいた時間は楽しかった。とても幸せでした……」
「君と過ごす時間は素晴らしかった。もっといっしょにいたかった。でも、こうなっては仕方ない。だが、私はこんな風に思うんだ。君は伯爵家と言う籠にとどまるような小鳥ではなかった。もっと広い空を飛ぶ鳥鳥だったんだ。派閥から離れたところで、何者も君の羽ばたきを止められはしない。君が大空に飛び立つ日が来ることを、私は信じている」
メイナルミアが微笑んだ。大輪の花が開くときのような、可憐で美しく、それでいてどこか儚い笑みだった。
その笑顔は、リトナーフのなかで最も美しい記憶として心に残り続けることになった。
「そうか。やはり婚約解消となったか……」
メイナルミアから婚約解消の報告を受け、ディースクライム伯爵は落胆の声を漏らした。
リトナーフとの面談の後。王都にあるディースクライム伯爵家の応接室。普段は客をもてなす部屋はだったが、今宵は家族会議の場だった。
テーブルを囲むのはメイナルミアとその両親だ。家族の内密の会議と言うことで使用人は下がらせた。
サーヴァルミアが婚約破棄を告げられた。そのことでメイナルミアは婚約解消となる。そしてピオネアール侯爵家の派閥から外され、王国西部の開拓事業には関われなくなる。
婚約破棄を宣言されたときから全て予想していたことではあった。しかしそれでも、それが確定したと突きつけられると、伯爵は衝撃を受けざるを得なかった。
「集めた人員。手配した資材。これらが無駄となれば大きな損失となってしまう。伯爵家の没落は免れない……」
年単位で契約した作業員たち。開拓事業に関われなくなったからといって、契約はなかったことにならない。解約するなら高額な違約金を支払わなくてはならなくなる。
既に買い集めた資材も膨大な量に及ぶ。これらは売り払うこともできるが、伯爵家の状態を知られれば二束三文で買いたたかれるだろう。
伯爵は王都西部の開拓事業に全てをかけていた。それほど価値のあるの大事業だった。だがその目論見は潰えた。膨大な損失は、伯爵家を確実に没落へと導くに十分なものだ。
伯爵も手をこまねいていたわけではない。婚約破棄の宣言以来、資金繰りのために各所をまわっている。だが下り坂にある貴族にいい顔をする商人はいない。縁故のある貴族たちも、関わることを避けようとするばかりだ。
婚約を結ぶためにサーヴァルミアには厳しい教育を課し、手塩にかけて育ててて来た。それがまさか婚約破棄され、ここまでの危機に至るとは思わなかった。全ての苦労が水の泡と化す。その現実を前にして、伯爵の心は折れかけていた。
「それについては私に考えがあります」
メイナルミアは毅然と声を上げ、テーブルの上に資料を広げていった。
「メイナルミア、これはいったい……?」
「集めた人員と資材で王国各地に福祉施設を作るのです。この資料はその計画書です」
メイナルミアが拡げたのは、王国の地図、建造物の設計書、建築計画に収支予測の資料などなど。それらには孤児院や平民向けの学校、診療所の建設など様々な福祉施設が記されている。
地図に示された候補地は、いずれも伯爵家の領内か縁故のある貴族と領地だ。建設に問題はないだろう。建設計画も無理のないもので、収支予測も現実的なものだ。いくつもの事業をこなしてきた伯爵の目から見ても、ざっと見た限りでは不備のない資料だ。
ただの思いつきではなく、入念な下準備をしていたのだろう。娘が優秀なことは認識していたが、新規事業の提案のためにここまでのものを用意できるとは思わなかった。
「……これなら資材と人員の無駄は抑えられるかもしれない。だが、なぜ福祉施設なのだ? 伯爵家の現状を考えれば、もっと収益性の高い事業を選ぶべきではないか?」
「この状況だからこそです。窮地に陥った伯爵家が金儲けのために始める事業など、ずる賢い悪徳商人たちの格好の餌食となるでしょう。しかし恵まれない人々のためと看板を掲げれば、そうした妨害も少なくなります。損失を抑制しつつ、伯爵家の評判の回復を図る。これが最良の方策だと判断しました」
伯爵は唸った。彼もただ手をこまねいていたわけではない。資金繰りに加え、起死回生の事業計画も練っていた。だが相談した商人や下位貴族からは芳しい反応を得られていない。
このまま手をこまねいていれば損失が増えるばかりだ。確かに福祉事業の開始は悪くない選択肢だった。
「だがこの福祉事業を始めたとしても、利益が出るにはどうしても時間がかかる。当面を乗り切るための資金が必要だ。そもそも資金がなくては新規事業も何もない」
「それについてはお父様も何をすべきかおわかりでしょう? 領地の一部を売却するしかありません」
メイナルミアの決然とした指摘を受け、伯爵は思わず目を覆った。それはわかり切っていたことだった。王国西部の開拓のため資産をつぎ込んだ。資金を得るためいくつかの大商人に借金だってしている。返済できなければどのみち領地を売却するしか手は無くなる。
領地あっての貴族だ。先祖伝来の土地を手放すことは自らの血肉を切り落とすことに等しい苦痛を伴う。領地のうち、具体的にどれを手放すべきか。これは領主にとって極めて難しい問題だ。
だが、メイナルミアはまるで迷わなかった。
「お父様。東の田園地帯を手放しましょう」
「東の田園地帯だと!? あそこが我が伯爵領にとってどれほど重要な土地か、お前は理解していないのか!?」
「きちんと理解しています。だからこそ、です。現状、伯爵家の評判は下がっています。価値の低い土地を切り売りしても安く買いたたかれ、かえって損失は深いものとなることは目に見えています。お父様、今が決断の時です」
伯爵は戦慄した。彼自身もそれしか手段がないことは頭では分かっていた。だが手放すにはあまりに惜しくて、他の手はないかと日々苦悩していた。こうしたことで悩む領主は少なくない。領地惜しさに思い切った売却ができず、そのまま没落の道をたどった家は過去にいくつもあるのだ。
しかしメイナルミアは、何の気負いもなく過酷な正解を口にした。
まだ20歳の娘だ。婚約相手が家を継ぐことになっていたから、領地経営も手伝い程度しかやらせたことがない。それなのに、伯爵の考える以上に現実的な対策を、何の気負いもなく示してきた。
メイナルミアが優秀だということは知っていた。だがこの娘は、そんな言葉だけでは言い表せないものを感じた。
伯爵は悩んだ。メイナルミアの出した資料を見ながら、他に手はないものかと考えた。だが婚約破棄を告げられたあの日からずっと悩み続けて答え何て出せなかった。メイナルミアの示した解決策以上のことなど、今すぐに思いつくわけがなかった。
「……わかった、全てお前の言うとおりにしよう。不甲斐ない父に代わり、よくぞこれだけの解決策を見出してくれた。伯爵家は当分は苦労することになるだろうが、いっしょにがんばっていこう」
「伯爵家の苦労する期間はそう長くはありません。私の婚姻で盛り返してみせます」
「はは、それは頼もしいな。伯爵家の評判が落ちている今は難しいが、しばらくすればそれも収まるだろう。お前の器量ならいい縁談も持ってこれるだろう。この父に任せてくれ」
「いいえ、それには及びません。婚約相手は自分で探しに行きます」
「どこか当てがあるのか?」
「ええ。西の隣国イクシャンジュ王国。その王族との婚姻を考えています」
「な、なんだと!?」
伯爵は驚きのあまり叫んだ。イクシャンジュ王国と言えば盛んな交易で有名な国だ。だがディースクライム伯爵家とはこれと言ったつながりはなく、結婚相手の話で出る国ではなかったのだ。
「……確かに国内での評価が落ちている今、他国の貴族との関係を模索するのは一つの手だ。だがどうして、イクシャンジュ王国の、それも王族との婚姻などを考えているのだ?」
「王国西部の開拓事業が進めば、そこから一番近いイクシャンジュ王国との国交も盛んになることでしょう。王族と婚姻を結べば、王国西部の流通を握ることができます」
「まだ開拓事業に関わることを諦めていなかったのか……なぜそこまでこだわるのだ?」
「そんなこと、決まっているじゃありませんか」
メイナルミアは上品に微笑んだ。社交の場でするべき笑顔だ。家族に向けるものではなかった。伯爵はその笑みに悪寒を覚えた。
「妹に婚約破棄を突きつけた子爵子息アムレングに復讐するためです。隣国の王族の立場から、王国西部を経済的に支配するのです。そして子爵家の力を削いでやります。時間をかけて少しずつ、没落一歩手前まで苦しめる。それくらいしなければ妹を傷つけた罪と釣り合わない事でしょう」
「な、なんだと!? そんな理由で王族と婚姻をするというのか!? なにをバカなことを言っているのだ、我が伯爵家には、彼の王族とのつながりはない! 無理に決まっている!」
「実は学園時代、同級生にイクシャンジュの貴族がいたのです。彼女を頼りにイクシャンジュに行って、王族の参席する晩餐会に出させてもらえば十分。王族一人を篭絡するくらい、さほど難しいことではありません」
「王族と婚姻を結ぶなど、そんな簡単にできるわけが……!」
「できます。私は今日、できることしか口にしていません。なにひとつ難しいことなどありません」
伯爵は戦慄のあまり言葉を失った。
福祉事業を始めるために必要な計画を整えてきた。領地の売却についても的確な判断をした。
確かにメイナルミアはできることしか口にしていない。
そして同じように他国の王族と婚姻すると断言した。さも当たり前のように。できて当然と言った態度で。
メイナルミアはできるのだろうか。きっとできてしまう。やり遂げてしまう。彼女にとっては伯爵家の危機も他国の王族との婚姻も、さほど難易度の変わらない対処可能なことに過ぎないのだ。
メイナルミアは優秀と言う言葉では収まらない令嬢だった。才気に溢れすぎている。この令嬢はある種の怪物だ。なぜ今まで気づかなかったのか。
「……これまでは妹の結婚のために大人しくしていました。でももう、その必要もありません。これからは自分を抑えず、思う存分やらせていただきます」
伯爵の疑念を察したかのように。メイナルミアは言った。
伯爵は姉の栄達のために妹を犠牲にした。だがそれは思い違いだった。妹のために、姉は自らの才能を抑えていたのだ。
サーヴァルミアが婚約破棄されたことで、もはやメイナルミアの呪縛は消えた。
怪物は、解き放たれた。
伯爵は戦慄に皮膚を粟立たせた。
「では明日にでもイクシャンジュへ向かいます。他国へ嫁ぐ以上、この伯爵家を継ぐことはできなくなります。お父様は養子縁組のご用意をお願いします」
そう言ってメイナルミアはテーブルの上に紙束を置いた。そこには貴族子息の名前や出自と言った情報が記されている。養子の候補をまとめた資料だ。こんなものまで用意していたのだ。伯爵はもはや言い返す気力を失った。
そして、メイナルミアの言葉に嘘はなかった。
それからおよそ一年後。メイナルミアはイクシャンジュ王国の第三王子と結婚した。
婚約破棄の宣言から7年ほど過ぎたころ。
王国北部の辺境の修道院。そこで仕事に励むサーヴァルミアの元に一通の手紙が届いた。
この修道院は世俗との関係を断っている。しかし西の隣国イクシャンジュ王国の王族からの、それも聖女の口利きによる手紙ともなれば話は別だ。
姉のメイナルミアからの手紙だった。そこには婚約破棄後のディースクライム伯爵家について綴られていた。
伯爵家は当座の資金不足を補うべく、東の田園地帯を手放すことになった。
王国西部開拓のために手配した資材と人員を使って福祉事業を始め、それが成功した。そのことにより、伯爵家は以前にもまして高い評判を得るに至った。
姉のメイナルミアは隣国イクシャンジュの第三王子と結婚した。6年もかかったが、王国内で確かな地位を築き、王国西部との交易を掌握した。そしてサーヴァルミアに婚約破棄を突きつけたアムレングのカルダスタン子爵家に対して圧力をかけ始めている。
そうしたことについて簡潔にまとめられていた。
そして、手紙の最後にはこう綴られていた。
――私の可愛い妹サーヴァルミア。伯爵家はすっかり持ち直しました。負い目を感じる必要はありません。あなたが望むのなら、いつでも戻ってきなさい。私たちはいつだってあなたを温かく迎え入れます。
あなたの姉 メイナルミアより。
サーヴァルミアが自分の人生を費やして仕掛けた復讐は失敗した。伯爵家に大した損害を与えることができず、メイナルミアの歩みを止めることすらできなかった。むしろ彼女は加速した。まさか隣国の第三王子妃になるなど夢にも思わなかった。他国の王族に嫁いでたった6年で交易の一つを掌握するなど意味が分からない。
その手紙を読んだ後。サーヴァルミアは思わず言葉を漏らした。
「この修道院に入って本当によかった……」
婚約破棄を意図的に起こし、復讐は成ったものと考えた。それから先のことは知らないまま、世俗から切り離された修道院に入った。
おかげでこの7年間は穏やかだった。修道院の生活は楽なものではない。だが、理不尽を強いる両親はいないし、才能に満ち溢れた姉と比べられることもない。サーヴァルミアにとっては心穏やかに暮らせる日々だった。
修道院に入る前。あの優秀な姉がどうして苦しんでいる自分に何もしてくれないのかと悲しんだこともあった。今ならその理由がわかる気がする。
姉はあまりにも別格だった。だから普通の人間である妹の苦しみがよくわからなかったのだ。
両親は熱心に勉強させ、妹は必死に勉強していた。姉にとってはただそれだけのことだったのだ。
婚約破棄の企みに感づいた様子はない。サーヴァルミアにとっては人生をかけた企みだったが、メイナルミアにとっては容易に対処可能な些事に過ぎない。自分の妹がそんなちいさなことのために必死になっていたことなど、メイナルミアには想像すらできないのだろう。
サーヴァルミアを小鳥に例えるなら、メイナルミアは大空を飛ぶ鷹だ。高く飛べない小鳥と違い、鷹は遥かに高い場所を飛び、遠くまで見通すことができる。それに加えて地上を舞う小鳥を見逃さない優れた視力を有している。
だが鷹は、低空を飛ぶ小鳥の暮らしを知らない。見えたところで理解もできない。
生き物としてあまりに違う。住む場所もまるで異なる。だからお互いを理解することができない。姉と自分の関係はきっとそういうものだったのだ。
以前はそんなふうに考えられなかった。家族から何年も離れたおかげでそう考えることができた。
手紙を読み終えた日の深夜、みなが寝静まったころ。サーヴァルミアは一人、修道院の中庭に出た。夜空の下、ひっそりと。姉からの手紙を燃やした。
世俗から絶たれた修道院に例外的に届いた手紙だ。どのみち手元には置いておけない。なにもしなければ司祭の預かりになっただろう。サーヴァルミアはそれすら拒んだ。残しておきたくなかったのだ。
伯爵家に戻るつもりなら残すべきだ。修道院の司祭に申し出れば貴族に戻ることもできるだろう。聖女を口説いて本来届かないはずの手紙を届けさせた姉のことだ。便宜を図ってくれるだろう。いい結婚相手を見つけてくれて、サーヴァルミアは貴族令嬢としての幸せを掴むことができるかもしれない。
だがそれは、姉と同じ世界で生きることを意味する。あの怪物のような才能を見せつけられ、その妹として生きる日々は、心穏やかでいられないことだろう。そんな生活は嫌だった。
サーヴァルミアは修道院を出るつもりはなかった。姉の差し伸べた手を取らず、家族のことを忘れて穏やかに生きる。それが彼女にとって唯一可能な、精一杯の復讐だった。
終わり
婚約破棄されると家族も苦労することになります。
婚約破棄で家族がどんな風に苦労するかはあまり詳しく書いたことがなかったので、それをテーマにお話を作ってみることにしました。
当初、姉は設定上は有能だけど被害に翻弄されるだけのキャラでした。
なんだか全然筆が進まなかったので、ちょっとは苦境に対抗できるように姉を強化することにしました。
そうしたら、何て言うか……強くなりすぎました。
その結果、当初想定した内容とは大きく違う話になってしまいました。
お話づくりはままなりません。
でも、なんとか書きあがってよかったです。
2025/6/17 20:30頃、6/18、6/21、6/28、6/30、7/11
誤字指摘ありがとうございました! 修正しました!
2025/6/19
誤字指摘ありがとうございました! 読み返して気になった細かなところもあちこち修正しました。