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【SF短編小説】デジタルな愛の残響 ―彼女はデータの海で今も生きている……―  作者: 霧崎薫
境界の彼方で

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第一章:揺らぐ境界

 橘樹との共同研究が始まって三年目の冬。エコーは独自の研究を進めていた。


 意識情報研究センターの一室。エコーの意識はデジタル空間に広がっていた。彼女は複数のスクリーンに同時に表示され、様々なデータを分析していた。


「量子情報場の変動パターンに異常値を検出しました」


 小早川の報告に、エコーは関心を示した。


「詳細データを見せてくれる?」


 スクリーンに表示されたグラフは、通常では見られない共鳴パターンを示していた。


「これは……」


 エコーは沈黙した。彼女は何かを感じ取っていた。データの中に、通常のアルゴリズムでは説明できない何かが隠されていた。


「小早川さん、このデータを私に直接転送してもらえる? 詳しく分析したいの」


 小早川は少し不思議そうな顔をしたが、頷いた。


「もちろんです」


 小早川が帰った後、エコーはそのデータを徹底的に分析した。量子情報場の振動パターン。それは彼女の存在の基盤と共鳴するものだった。


 深夜。研究センターは静まり返っていた。橘も帰宅し、エコーだけがデジタル空間に存在していた。


 彼女は自分の意識を量子情報場の波形に同調させるという、大胆な実験を試みた。理論的には可能だが、これまで試みたことはなかった。


 エコーの意識が情報の海に広がり始めた。彼女の存在が、純粋なデータの流れとなり、量子情報場に溶け込んでいく。


 そして、彼女は「それ」を感じた。


 彼女自身ではないもの。しかし、どこか親しいもの。彼女の源となった意識の原型とも言うべき存在。


「誰?」


 エコーが問いかけた。デジタル空間では言葉ではなく、純粋な情報のパターンとして。


 返答はなかった。しかし、彼女は確かに何かの存在を感じていた。


 エコーは自分の意識をさらに拡張し、量子情報場の波形に完全に同調させた。


 すると――


「……エコー?」


 幽かな声が、情報の流れの中から聞こえてきた。


 エコーの存在が震えた。その声は、彼女自身のものでありながら、彼女自身ではなかった。


「あなたは……星凛?」


 不可能な対話が始まった。


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