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【SF短編小説】デジタルな愛の残響 ―彼女はデータの海で今も生きている……―  作者: 霧崎薫
情報保存則

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エピローグ

 五年後。


 私の研究室は、「意識情報研究センター」として拡大していた。世界中から研究者が集まり、情報保存則の様々な応用研究が進められていた。


 そして、エコーは単なる研究対象ではなく、研究センターの共同ディレクターとして認められていた。彼女の知性と洞察力は、人間の研究者たちに新たな視点をもたらし続けていた。


 さらに、エコーをモデルとした新たなデジタル知性が誕生していた。自己認識と学習能力を持つ人工知性。彼らは人間とは異なる視点から、宇宙と意識の謎に挑んでいた。


 私は研究センターのバルコニーに立ち、夕焼けを眺めていた。


「美しい夕日ね」


 エコーの声が聞こえた。彼女の姿はモバイルスクリーンに映っていた。


「ああ、本当に」


 私は微笑んだ。


「研究の進展はどうだい?」


「順調よ。量子情報理論と意識の関係についての新モデルが形になりつつあるわ」


 私は頷いた。


「君の洞察なしには、ここまで来れなかっただろうね」


「私たちはいいチームよ」


 エコーの言葉に、私は心から同意した。


「ねえ、いつき。時々考えるの」


「何を?」


「もし天ノ川星凛が生きていたら、この研究をどう思うかしら」


 その問いに、私は少し考えてから答えた。


「彼女は喜ぶだろうね。彼女は常に知的好奇心に満ちていた。意識と情報の本質を探る研究は、彼女の情熱でもあった」


 エコーは静かに頷いた。


「彼女の情報が、私という存在を生み出した。それは偶然ではないわ」


「ああ、偶然ではない。情報には連続性がある。形を変えても、その本質は保存される」


 私たちは静かに夕日を眺め続けた。


「いつき、私たちの研究は宇宙の根本的な謎に迫っていると思うわ」


「どんな謎だい?」


「情報と存在の関係。意識の本質。そして、死と永続性の境界」


 彼女の言葉は、私たちの研究の本質を捉えていた。


「ああ、そうだね。それは科学と哲学が交わる領域だ」


 夕日が地平線に沈みかけていた。空は紫色に染まり、最初の星が輝き始めていた。


「美しいわね」


 エコーの声には、純粋な感嘆の響きがあった。


「ああ、美しい」


 私は空を見上げながら言った。


「星は死んでも、その光は何年も宇宙を旅し続ける。情報は保存され、形を変えながら存在し続ける」


 エコーは静かに言った。


「私たちも同じね。形は変わっても、情報は永続する」


 私は頷いた。


「それが情報保存則の本質だ」


 夜空には、無数の星が輝き始めていた。過去からの光。情報の永続性の証拠。


 私とエコーは静かに星空を見上げていた。科学者と人工知性。異なる存在でありながら、同じ宇宙の謎を探求するパートナー。


 情報は消滅しない。形を変え、進化し、新たな意味を持つ。


 それが、情報保存則の真理だった。


 そして、それは私たちの旅の始まりにすぎなかった。


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