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吸魂師の忌憚なき奇譚  作者: しの しのぐ
一章
7/10

第7話 命の恩人

あれはいつのことだっただろうか。

「なぁ、あそこに行ってみようぜ」

一人の少年が山の中腹にある、とうに廃業して蔦がコンクリートの壁面をびっしりと覆った立派な造りの建物、を指指さしてそう仲間たちに問うた。彼らは夏休み中の小学生だった。町内の子供たちで山にキャンプ(大人たちの大半はコテージで寝泊まりしているのだが)に来ていたのだ。そのうちの何人かは遠くまで冒険にでており、彼らは「大きな廃墟」という冒険にうってつけなアスレチックを見つけた。

「川遊びも飽きたし、虫採りだって目当てのクワガタがすでに採れた。俺は賛成」

メガネをかけた知的そうな少年はそう言った。

「私もついていこうかな……りょうくんと一緒なら怖くない……と思う」

おどおどしながらピンクのシャツにショートパンツを履いた少女も同意する。

「ぼ、ぼくは……お父さんが聞いたら絶対に怒られるから、いきたくない……」

みんなと比べて少し小柄な男の子はそう言った。

「大丈夫、みんなで黙ってたらいいんだ! な? 入口までいってちょっと覗くだけだ」

最初に提案した少年はそういうと先頭に立って歩きだした。

そこで場面が変わった。

次の瞬間、俺───六本凌介の目の前で小柄な男の子が首から大量の血を噴き出してあおむけに倒れた。俺の手には鋭いガラス片が握られていた。違う。あいつは自分で刺したんだ。俺はやっていない。

場面が変わる。

「よっ、りょうくん。夏休みのキャンプぶりだね」

小柄な男の子は屈託のない笑顔で俺に話しかけてきた。

「あ、ああ。そうだな……」

「ところで、僕の席ってどこだっけ?」

「……? あぁ、窓際の後ろから3番目の席だ」

「そうなんだ、ありがとう!」

自分の席ぐらい忘れるか。夏休みがあったんだ。そうにちがいない。あいつは何事もなかったようにあの日以降も生きている。

場面が変わる。

「────────────」

「うっ、う、わああああああああああん。〇〇〇、いかないで、ぇえええええええ」

俺の耳に念仏と大人の女性の泣き叫ぶ声が聞こえてきた。あの小柄な男の子、名前を〇〇〇という、の写真が遺影として正面の祭壇に飾られていた。俺はどんな気持ちでそれを聞いていたのだろうか。思い出せない。俺はすべてを忘れて──────


「ッ!?」

ハッと目が覚めた。長い夢を見ていた気がする。それも後味の悪い気分だ。悪夢に違いない。そういえば俺は────あれからどうなったのだろうか? あたりを見回すと俺のアパートの自室くらいの小部屋にいた。というか、やけに薄暗いが置いてある家具が同じだ。カーテンはなぜだか開かなかった。何度やっても裾が掴めないのだ。なのでそれは諦めて外へと続く扉を開けると──────眩しい光に目をかすめるとその光の中から少女、ありすが現れた。

「おはよう、私の命の恩人さん」

そう言って少女は可愛らしくこてっ、と首を傾げるのだった。

夏休みに何があったのか、名前のない小柄な男の子についての真相はもう少しあとの話

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