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吸魂師の忌憚なき奇譚  作者: しの しのぐ
序章
3/10

第3話 余命宣告

お話が動き出します

「りょうすけー! こっちこっち」

ちょうどさっきまで植木で死角になっていた位置に母がいた。つい、駆け出すとすぐに笑顔の母の姿と……そして俺は見間違いであることを信じたい出来事に直面する、昨夜の少女の姿があったのだった。少女は何事も無いかのような顔をして母の隣で突っ立っている。一体これはどういうことなのだろうか。俺は母の近くまで駆け寄ると単刀直入に質問した。

「この女の子は?」

「あら、彼女さんに対して随分と冷たいのね。そんな子に育てた覚えはないわ!」

母は少女の方へ顔を向けると「ねー。うちの子こんなんだけどよろしくね」などと続けていた。

「母さん、何かの誤解だ。俺に恋人はいないって」

「はいはい、置いていかれたくなければさっさと乗りなさい。後部座席で仲良く並んでねー」

母のニヤけ顔が鼻につく。まったく何を勘違いしているのか。それにこの少女もこの状況をまったく意に介さないようだ。ずっと何を考えているのか分からない無表情を崩さない。

 扉を閉めると車は軽快に走り出した。隣に座った少女の方を見ると、つまらなさそうに車窓の景色を眺めていた。その瞳を、横顔を神秘的で美しいと思った自分がいた。少女についてもう少し詳しく触れておこう。背丈は150センチくらい、俺と頭一つ分くらいの差がある。サラサラした明るい茶髪で服装は特徴のない白い丈長のチェスターコート。素材はおそらくカシミヤ。足元も高級そうな本皮の黒いブーツを履いている。ファッションと縁もゆかりもない俺とは不釣り合いだ。ちなみに趣味のお絵描きの影響で創作で使えそうなファッションの知識はそこそこあると自負している。先ほど縁もゆかりもないと言ったがそれは現実世界の俺を表した言葉だ。嘘偽りはない。言っておくが母に服を選んでもらうことからは高校で卒業しているんだからね。

「その子りょうすけが倒れた日に部屋にいたんだけど、あんたたち同棲してるの?」

母が爆弾発言をした。

「はぁ!? 部屋に!? なんで!?」

この状況どこから突っ込めばいいんだ。少女が部屋にいたのは完全に不法侵入だ。俺の秘蔵の同人誌たちが難を逃れていることを祈ろう。

「はい。お付き合いしているので同棲は自然です。何か問題でも?」

少女はクールに言い切った。こいつもこいつでよく平然と嘘をつけるね、しかも2つも! 付き合ってない・同棲してないの2つも!

「いやぁ、当人たちがそれでいいならお母さん口を挟むのはやめるわね。ただし、くれぐれもあまり遊びすぎないように、ねっ」

「誰か、俺の話を聞いてくれ……」


 家に着いた。アパートの1Kの自室に俺と少女がいた。少女は俺のベッドの上に広げたスーツケースをいじくっていた。俺は眉間にしわを寄せて掃き出し窓から外を眺めていた。母は熱い投げキッスと共に車で仕事へ向かった。取り残された俺は、寒空の下まるで動こうとしない少女との我慢比べの末、ひとまず部屋に入れることにしたのだった。寒いのは体に良くない。それだけだ。

「なぁ、いいかげん説明してくれないか」

「なぜ?」

こてっと傾げた仕草がいちいちかわいいのも戦意を削がれる。ガンバレ俺、この状況を切り抜けてみせるんだ。

「本当に帰る気がないのか? 名前はなんて言うんだ。警察に昨晩の不法侵入で突き出してやろうか!?」

「そうね、自己紹介がまだだったわ」

そう言って少女はすくっと立ち上がる。

「私は響ありす。あなたの残り1ヶ月間の監視をする」

「1ヶ月間の監視……?」

「あなたの体は1ヶ月で朽ちて死ぬ。その間あなたが逃げないように見張る」

やっと話の方向性が見えてきました。毎日投稿続けます。

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