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吸魂師の忌憚なき奇譚  作者: しの しのぐ
序章
2/10

第2話 知らない少女

前回のあらすじ、謎の人物に話しかけられたよ

「ねぇ、あなた今ラッキーって思ったでしょ?」

 その声は背中越しに聞こえた。女性の声だ。こんな時間に、それも俺の考えていたことを見透かしたような発言。もしかしたら関わってはいけないような存在かもしれない。俺は振り返らずに答えた。

「そうだとしたらどうする?」

「私のお釣り返して」

なんだ、お釣りを忘れて取りに戻ってきたのか。

「あ、すみません。いくらですか?」

「きっと100円と20円ね。私さっき喉が渇いてアクエリアズを買ったの。それが180円だからお釣りは120円」

「それだとおかしいですね。180円のものを買うのに100円玉を3枚も入れたりしない。それにお釣りは110円だ」

「ふふっ」

一体この人の目的は何なんだ。急に風が冷たく感じる。そうだ、今何時だ。それに誰かに連絡したほうが。スマホ、スマホは……自宅だ。俺があたふたしていると背中越しの女性はかき消えそうな声で呟いた。

「あなた、1ヶ月後に死ぬわ」

「へっ?」

その言葉に驚いて、こらえきれずに振り向いた。その瞬間、俺の唇を柔らかいものが塞いだ。下から抱き上げられるかのように両腕を伸ばした、俺より少しだけ背の低い女性がかかと立ちで密着していた。そしてその女性、というよりも少女の頬に一筋の涙が伝うのが自販機の弱い光の中でほのかに見えたのだった。俺の意識はここまでだった。


六本凌介(ろくほんりょうすけ)さん、診察の時間です」

病室の真っ白なシーツに横たわってうたた寝をしていた俺はそう言ってカーテンを開けた看護師の声で体を起こした。昨夜のことを簡単にまとめると、どうやら気を失って倒れているところを見回りをしていた警備員によって発見されたそうだ。寒空の下だったが発見が早く低体温症などには見舞われなかった。そして俺の病状だが、驚くぐらい健康体そのものだった。この後すぐに荷物をまとめて俺は退院した。

 自宅まで最寄りの駅で降りるとなぜだかホッとした。幸い、大学は昨日から冬休みのため休講中だった。帰省する学生が俺の進行方向とは逆向きに流れていく。クリスマスも終わりいよいよ年末という感じだった。俺はこの時期は時間がすごくゆっくりに感じるのだ。家にいればそんなことはないのだが、外に出て、往く人々を見ているとそう感じるのだ。そしてそんな時間は俺にとっては幸せな時間だった。さてと、あまりぼんやりしていると待たせてしまうな。心配した母が実家からわざわざ駆け付けて昨晩俺の部屋に泊まったらしく、今朝今日中に退院すると伝えたところ顔だけ見て帰るそうだ。その母が車で迎えに来るらしかったのだが、見当たらない。電話してみるかとポケットをまさぐるが、そうかスマホは家に置いてきたのだった。病院では院内の電話を使わせてもらったのだった。

「りょうすけー! こっちこっち」

ちょうどさっきまで植木で死角になっていた位置に母がいた。つい、駆け出すとすぐに笑顔の母の姿と……そして俺は見間違いであることを信じたい出来事に直面する、昨夜の少女の姿があったのだった。

ライブ感とその場のノリで書いてるんですが、これがすごく楽しいです

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