part1
目覚めただけどいつもの目覚めではない。
身体が再度眠ろうとすることもなく起き上がることもない、だたそこにぼくはいた。
暗闇に一点光るのがぼくのようだ、辺りには何もなく暗黒で星のない宇宙のようだった。
しばらくそこに揺蕩っていたが、ふと寂しくなり自宅で飼っていた愛猫の『びー太』を思い浮かべた。
するとそこにびー太が「ポンッ!」と出現した。びー太は光になったぼくを少し見つめたがすぐに興味をなくし暗闇の向こうに走り去ってしまった。ぼくはそのときに声が出ないことに気が付いた。
ぼくは自分の身体を思い浮かべた。また「ポンッ!」っとぼくの身体が出現したが、びー太のときと違うことがあった。彼は動かなかった。
暗闇の中でふわふわ浮いて横になっていた。『自分をこの角度から見るのは初めてだな』、この異様な現象で初めて感じたことはそんなことだった。
詳しいことはわからないがぼくは思い描いたものを実体にすることができるらしい。
ぼくはお金を出現させた。
こんなひとっこひとりいない真っ暗闇でそんなものをだしても無駄ということに今更気が付いた。
そのあとはしばらくぼーとしていた。なにを出現させればいいのか皆目見当がつかなくなったからだ。
わたしはふと地球を思い浮かべた。この真っ暗な宇宙みたいな空間がぼくに普段思い浮かべないものを考えさせた。
「ポンッ!」
ぼくという光が本当にちっぽけだということが今判明した。地球と思われる惑星は簡単にそれでいて身震いする質量で私の前に現れた。
地球に向かおう。そこになにかがあるかもしれない。
そう思ったときすでにぼくはその星にいた。どうやら町中のようだ。アスファルトで舗装された道路に電柱、そして家々が並んでいるただ人の気配がまったくしない。
ぼくはまたどこか心に木枯らしが吹くような気持になった。
そして思い描いた。
「ポンッ!」
「きゃぁっ!」
尻もちを打って声を上げたのはその人はどこか見覚えのある女だった。
胸元のレースが特徴的なひらりとしたスカートに黒のニーソックス、髪はロングで下の方で二つに分けてツインテールになっていた。
彼女は家々に囲まれた道路を見回すときょとんとしており、その目線がぼくに向いているに気が付いた。
自分の存在が認められたことに少し喜びを感じたのは束の間、彼女は興味をなくし道路を歩いて行った。
ぼくは彼女の背後につく形でそのあとを追った。