プロローグ 少女、罷免される。
新作です(*'▽')
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「――以上から、アニス・ディスティニアを王宮治癒術師長から罷免とする」
「え、そんな……!?」
アタシが口を挟む間もなく、罪状を読み上げた宰相様はそう宣告した。
罷免、ということは職務を解かれるということ。ただし今回の場合は単純な降格処分などではなく、王宮勤めとしての地位をすべて奪われることに他ならなかった。
もしそうなれば、庶民出身のアタシになんて行く宛てがない。
さらに言ってしまうと『罷免という前歴のある治癒術師』なんか、野に下ったとしても相手にされるわけがなかった。
それに、読み上げられた罪にも――。
「まったく身に覚えがありません! アタシは、なにも……!」
「うるさい。貴様はとにかく、目障りなんだよ!」
「その『気味の悪い力』で、陛下すら操るつもりなのだろう!?」
だけど周囲にいた査問会の人々は、聞く耳を持たない。
それはまるで、最初からこの罷免という結末が決定付けられていたかのように。彼らは異口同音にアタシのことを弾劾し、冷めた視線を向けてくるのだった。
射竦めるような眼差しに、アタシの足は震え上がってしまう。
力で敵うはずがない。だからもう、アタシは……。
「……分かり、ました」
悪意の塊の中で、失意に沈むしかなかった。
こうして、アニス・ディスティニアは王宮を追放されたのだ。
◆
――ガリア王国、その王都エルタニアの中央に位置する広場で。
アタシは設置された長椅子に腰かけ、ただただ呆然と青い空を見上げていた。いったい何がどうして、こうなってしまったのだろう。そう考えてみるものの、結論は出なかった。
それに思い返すほどに、寒気がしてしまう。
あのように多くの黒い感情に晒された経験なんて、今までになかったから。
「これから、どうしよう……?」
だから今は心を落ち着けるためにも、別のことを考えることにした。
とはいうものの、今後以外に思い浮かぶことなんてなくて――。
「――ん、いま誰か……?」
そこまで思考を巡らせた時だった。
『た、たすけて……』
ふとアタシの中に、どこか苦しげな声が届いたのは。
幼い子供のものだろうか。
居ても立っても居られずに、声のした方へ走った。
駆けているうち、周囲から人の気配がなくなってくる。そしてたどり着いたのは王都の外れにある森、その茂みの中だった。
「ねぇ、誰かいるの……?」
『こっち、こっちにきて……!』
声は先ほどよりも鮮明になっている。
アタシはそれを頼りに進み、ついに声の主を見つけたのだった。
「キミは……!?」
仄暗い森の中。
アタシが目にしたのは傷だらけだけど、どこか気高さを感じさせる魔獣だった。身の丈は人間の大人より一回り大きく、四肢には力強さの反面に気品のあった。一見して馬のようでありながら、背には大きな翼が存在する彼の額には二本の角が生えている。
思わず見惚れてしまうような美しさ。
アタシは声を失い、少しの間だけ立ち尽くしてしまうのだ。
そしてこれがアタシと、魔獣の王子の出会いだった。
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