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第一週:石と短剣(火曜日)

 さて。


 この広い広い宇宙には時々、『何故か未来を予知出来てしまう』と云う種族が生まれることがある。


 それは例えば、デルタ宇宙域の放浪民 《見主》族などのことを言うのだが、彼ら彼女らはなんと、この宇宙が終焉するその時までに起こるであろうありとあらゆる事象を予知している――らしいのである。


 何故ここでワザワザ“らしいのである”と云う留保を行なったのかと言うと、それは、彼ら彼女らの予知の中には『どんなに正しい予知をしても結局誰も真剣に聴いてくれない』とか、『正しい予知をすればするほど我々への迫害が強まる』とか云ったような予知も含まれている (らしい)からである。


 そのため、彼ら彼女らが予知した未来と云うのは、種族以外には門外不出、現在では誰も聴くことが出来ないからである。


 さて。この話を聞いていま貴方は『え?でもそれって――』と、少し疑問を感じられたことだろう。『じゃあなんで、そんな彼ら彼女らが“宇宙が終焉するその時までに起こるであろうありとあらゆる事象を予知している (らしい)”と言えるの?』と。


 この問いへの答えは大きく三つあり、


 一.“種族以外門外不出”となる以前に成された予知・予言が、各地の史書その他に残されており、これらが悉く的中しているため。


 一.どこの種族にもはみ出し者はいるもので、そんな彼や彼女らが――主に酒に酔った勢いで――口を滑らせた予知・予言が、これまた悉く的中しているため。


 一.“種族以外は門外不出”となる以前、彼ら彼女らの 《予知の法》を学んだとされる集団が銀河には複数存在しており、それら集団の予知・予言もまた悉く的中していたため。


 と、云うワケなのである。


 ちなみに。三つ目の理由だけ“していたため”と過去形にしたのは、これらの集団がどれもこれも既に解散あるいは自然消滅してしまっているからである。


 理由は、《見主》の予知にもあったとおり、『どんなに正しい予知をしても結局誰も真剣に聴いてくれない』し、『正しい予知をすればするほど我々への迫害が強まる』からであり、結局、どの集団も未来を予知することで得られるデメリットがそのメリットを大きく上回ってしまい、解散・自然消滅を余儀なくされてしまったのである。


 さて。


 そろそろ『この作者はいったい何の話をしているのだろう?』と、訝しがられる読者の方も出て来られる頃だと想うが、ここで私がしようとしているのは、昨日の連載で出て来た“宮廷仕えのある老女”について、何故彼女の両の瞼が“閉じられたまま、綴じられて”いたかについての説明である。


 右にも書いたとおり、《見主》族の 《予知の法》を学んだとされる集団はみな既に解散・自然消滅してしまっている。


 が、しかし、教義や教団が消えてもなお、その方や法が残るのと同じように、学びの集団が消えてもなお、その方や法は残った。


 そう。


 この“宮廷仕えのある老女”の出身星系では今なお、ある種の幼子の両瞼を“閉じ、綴じる”ことで、彼ら彼女らに 《予知の法》が芽生えないか――実は、そのほぼ全てに 《予知の法》が芽生えることはないのだが――を試す風習が残されているのである。


 そうしてまた、件の老女は、運良く或いは運悪く、少しの未来であれば予知出来る能力を身に付けてしまったため、全盲の身でありながら、ジン国のベセンテ王の宮廷に仕えることが出来たのである。――であるが、どうやらいささか余談が過ぎたようでもある。


 では、そろそろ、話を宮廷のタル=ウドゥと問題の老女に戻そう。



(続く)

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