第七週:動機と理由(月曜日)
さて。
ある惑星が消滅してしまうとして、読者の皆さまが真っ先に想い付かれる原因には一体どのようなものがあるであろうか?
人類による全面核戦争?――まさかね。
例えば、いまこれを読まれている21世紀初頭の地球人類の方々にも分かる例で言えば、いま皆さまが持たれている核兵器の総破壊力は約7,000メガトンほど。恐竜絶滅を引き起こしたとされるチクシュルーブ衝突体の破壊力が98、000ギガトンほどだと言われているから、それの僅か14,000分の一ほどに過ぎないし、しかも、この衝突体が“地球そのもの”に出来たことと言えば、ユカタン半島の北の端に小さな窪みを造ったことぐらいである。
確かに。野蛮で愚かな――失礼――“あまり賢明でも文化的でもなかった”時代の地球人類の方々が、何かのはずみで全面核戦争に突入したとしても――もちろん当の地球人類やその他地球の動植物の方々は大変困ることになるかも知れないが――“地球そのもの”に取っては誤差のようなものでしかなく、ましてや“惑星の消滅”まではほど遠い。
では、その他にはどの様な可能性が考えられるだろうか?
エイモン印の『惑星破壊シフター』?
あれも“惑星破壊”とは名前だけで、実際には惑星表層を真っ平らにするだけで、こちらも“惑星の消滅”とはほど遠い。
ブラックホールに飲み込まれて消滅?
なるほど。確かに、シュワルツシルト半径の3倍より内側に入ってしまえば、どんな惑星もほぼ確実に“彼女”に引き込まれ消滅してしまうだろうが、“彼女”の周りを回る天体達も地球と太陽同様、ケプラー運動として安定、その軌道を外れることはほぼ無いので、その可能性もかなり低いと考えた方が良い。
え?アラ○ちゃんの『地球割り』?――あんな作り話と一緒にしないで欲しいなあ。
では、一番可能性の高い“惑星の消滅”とはどのようなものであろうか?
それは多分に、「彼ら/彼女らが所属する系の恒星に飲み込まれて消滅する」と云うものになるだろう。
例えば、これも読者の皆さまが分かり易いよう地球を例に上げてみると、皆さまの時代から大体75億年ほど後、皆さまの太陽は主系列星の段階を終え、赤色巨星の段階に入る。
この段階に入った太陽は、その大気を膨張させると、地球の公転軌道半径から火星のそれに相当する程のサイズになると考えられる。
そう。つまり太陽は、いま現在地球が公転軌道を取っている辺りにまで拡がって来て、水星や金星や地球をマルッと飲み込んでしまうワケで、これが、一番可能性の高い“惑星の最後”“惑星の消滅”となるワケである。
と。
ここまではよろしいだろうか?
よろしければ、ここで話はイル=ミト及びショワ=ウーの兄弟喧嘩、と云うか、そこに枉駕された父王イン=ビトも含めた家族喧嘩の舞台となっている惑星スレストへと戻らせて頂くが――、
『え?じゃあなに?そこの恒星が急に赤色巨星に変わったりしたってこと?』
と、そんな風に想われた方、こんな作者のこんなダラダラダラダラした説明をちゃんと読んで頂けているようで大変恐縮ではあるのだが、流石の作者も、そこまで現実無視の素っ頓狂なストーリーまでは作れない。(注1)
確かに。この第一惑星が、その所属する主系列星 (イラティオ3)に飲み込まれたのは事実ではあるが、これはこちらの恒星の方が急激な成長を遂げたとか軌道を変えたりしたとか云うワケではなく、どちらかと云うと、問題の兄弟喧嘩・家族喧嘩の影響で、こちらの惑星が軌道を変えた、と云うのが理由である。
(続く)
(注1)
ここ、ツッコんで頂いて良いところです。