《銀河漂流ウラシマン(ディレクターズカット版)》第伍話:終わり。と、始まり。
承前。
「で、まあそれから、そっから更に何千年、何億年、何百億年……と、宇宙の果て目指して旅を続ける太郎なんだけど――」
「それは……、ずっと同じ船で?」
「カメ族の自己修復機能を持った半有機宇宙船“カンムリ号”でね」
「彼女の名前だ……」
「そこも泣けるんだよ」
「ちょこちょこ感動させるよな」
「で、まあ、そんなこんなで。それからどのくらい時間が経過したのかも分からなくなった時、不思議な現象が宇宙を襲うことになるんだ」
「なに?」
「えーっと、『サイクリック宇宙論』って知ってる?」
「いや」
「いま、宇宙って膨張してるじゃん」
「そうなの?」
「ビッグバン後の宇宙って膨張し続けてるんだよ。で、その膨張があるところまで行くと今度は逆に収縮に転ずるの」
「“収縮”?」
「そう。つまり、それまでの時間は、いま僕らが経験している方向にだけ流れて行くんだけど、宇宙が収縮に転ずると時間も逆方向に流れ出しちゃうワケ」
「…………へ?」
「つまり。宇宙の歴史も逆戻りし出すんだよ。新たな帝国は亡んでは興るし、連邦も亡んでは興る。惑星たちも逆向きに自転・公転しながら小さな岩石や氷の粒になっちゃたりするし、太陽とかの恒星もただの水素やヘリウムの塊になりながらガス星雲の中に埋もれて行く。ダークマターは分解されて、最終的に残るのは原始の密度揺らぎだけ」
「…………太郎は?」
「死ねない身体で“それ”をずっと見続けるの」
「……怖くね?」
「怖いんだけど、こっからがこのお話の肝でさ。収縮し切った宇宙ってどうなると思う?」
「どうって……」
「隣にある別の宇宙と衝突するんだ。これがビッグバン」
「…………は?」
「そう。つまり、そこから今度は、再び正の方向へと時間が流れ出すワケ」
「じゃあ…………地球も?」
「そう。再び出現する」
「オリンピック前の状態で?」
「オリンピック前の状態で。で、今度は太郎が破壊を止める」
「じゃ、じゃあカンムリも?」
「もちろん。新たな地球で生き続けていて、新たな太郎と恋に落ちる」
「おお?!」
「で、不老不死の方の太郎がそれを遠くから見詰めるカットが入って、エンディングだよ」
「スゲーー!!」
「スゲーだろ?N※Kだぜ?」
「いやあ、知らなかったよ。まさか浦島太郎がこんなお話だったなんて――」
「だろ?…………あ!そっか、そういうことか!!」
「な、なに?いきなり」
「それでは、ここでクイズです」
「は?」
「“亀を助けたのは?”」
『銀河漂流ウラシマン(ディレクターズカット版)』……おしまい。
ブーッ。
ザワザワ、ザワザワ、
ザワザワ、ザワザワ、
ご鑑賞大変ありがとうございました。
これにて、樫山泰士制作『銀河漂流ウラシマン (ディレクターズカット版)』は終了となります。
引き続き、次話からは、いよいよ、皆さまお待ちかねの『時空の涯の物語』の本編公開と相成りますので、お座席の位置はそのままで、もうしばらくお待ち下さい。
ブーッ。
ザワザワ、ザワザワ、
ザワザワ、ザワザワ、
ザワザワ、ザワザワ、
ザワ――、
(続く)