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第四週:鉄床と槌(土曜日)

《木曜日。14時39分》


「あら?その子ってひょっとして“フェンチャーチ”?」


“ナゴ?”


「やっぱその石、あなたね、フェンチャーチ」


“ナァン?”


「あら?私が誰か分からない?確かにちょっと変わっちゃったけど――」


「ちょ、ちょっと待った」


「なによ?――あら、あなた黄色いわね。いつもの青い人は?」


「“青い人”?セイの兄さんのことか?」


「そうそう。確かそんな名前だったわね。――彼は?彼もまだ来てないの?」


「来てないもなにも、ずっと見てな――ってかちょっと待てよ。いきなり来て一体なんなんだよ?――ってか、オバさん誰だよ?」


「私は――って、ちょっと待って。あなたいま、私のこと“オバさん”って言った?」


「ひょっとしても何も、そう言ったけど?」


「はあ?」


「え?いや、地球人のことはよく分からないけどさ、さっきまでいた子たち (注1)と比べたら、あんた明らかにオバさんだからさ」


「は?!ちょっとNATZ。なによこの黄色のストィスバレー (注2)は?!」


『はい。光型知性体 《ジバレー》の方で――』


「ちょ、おいこら待て、このクソババア。言うにことかいて“ストィスバレー”だと?」


「“ストィスバレー”って呼ばれただけマシだと想いなさいよ、このワンバナッタのガヴュロベタ野郎 (注3)!!」


「ガヴュ……?なんだと?!」


「最初に“オバさん”って言ったのは、アンタでしょ?こんな若いレディを捕ま――」


 ピー。


「――なに?いまのスキャン光線」


『あ、失礼致しました。なにやら貴女に対するデュさんの呼び方と実際の貴女の年齢とのギャップが問題のようでしたので、改めて貴女の身体をスキャニングさせて頂きました。これに依りますと、貴女の実年齢は――』


「キャー!!やめてやめて!!」


『しかし、我々以外他に聞くひとも――』


「読んでる人には分かっちゃうでしょ?」


『――は?』


「うん?あ、ごめん。なんでもないわ (注4)」


『いずれにせよ、実際の年齢に相応しい呼び方を貴女は希望されているワケで――』


「だから、そこは別に年齢に関係ない呼び方にすれば良いだけでしょ?」


『なるほど。しかし、我々はまだ貴女のことをほとんど知らないわけでして、ミセス――』


「“ミス”よ」


『はい?』


「結婚はまだだから“ミセス”は早いわ。それにその“ミセス”とか“ミス”とかって呼び方もキライなのよね、私」


『なるほど。では、どの様にお呼びすれば?』


「そうね。いまはもう博士だから――って、ちょっと待って。あなた本当にNATZ?」


『はい。本来の名称とは異なりますが、最近その呼び名を頂きました』


「――最近?」


『はい?』


「ごめん。ここって西暦2019年4月24日の石神井公園よね?」


『いえ、西暦2019年4月25日14時47分の石神井公園です』


「あ!!」


『どうかされましたか?』


「ごめんなさい。これ、完全に私のミスだわ」


『と、言いますと?』


「えっと――、あ、ごめん。それも今はネタバレになっちゃうから…………そうね、未来で説明するわ」


『――なるほど』


「うん。じゃ、まあ、そんな感じで――」


 ポッ。 キュッ。 ヒュン。



(続く)

(注1)

 拙作『西方烈風、臥鳳蔵凰』で、彼らと共に旅をしていた地球人女性四名のこと。

 彼女たちのうち二名は高校生で、残りの二名は二十代半ばであったから…………うん。まあ、そうかも知れないけどさあ、でもねデュさん。世の中には言って良いことと悪いことってのがあるんだよ。


(注2)

 光型知性体を蔑んで言う時に使う言葉。使い方次第では戦争の引き金にもなり兼ねないので、使用には注意が必要。


(注3)

 “ワンバナッタ”も“ガヴュロベタ”も銀河全域で古くから使われている侮蔑語。こちらは特に種族を指定するものではないが、これらの言葉を使用したせいで実際に戦争状態に突入した例も多数――新書一冊が書けるほどには――あるので、公の場での使用は禁止されている。


(注4)

 このお話では、稀に“第四の壁”を破る人物が登場する (カシヤマ・F・ヤスシとか)。なので、この女性も同様の能力を持つようだが…………これ以上はネタバレにもなり兼ねないので、今回は省略する。

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