第三週:光と予言(土曜日)
木曜日。14時09分。
ゴクゴクゴクゴク。
ゴクゴクゴクゴク。
ペロペロペロペロペロペロペロ…………ペロペロペロペロッ。……………………ゲップ。
“ナー。”
「あれ?もう飲んだんでちゅか?」
“ナゴ。”
「え?なに?お代わり?」
“ナン。”
「よっぽどお腹空いてたんだな……えーっと、これはカラだから…………“豆乳”?“低脂肪牛乳”?……ポッドの自動翻訳機能のおかげで字は読めんだけど、細かい違いまでは分かんないんだよな……えーっと?“牛乳”ってのがミルクなのは間違いないから……じゃあ、この“低脂肪牛乳”ってのを――」
“ナッ!”
「え?なになに?違うの?」
“ナッ!ナーナッ!ナゴ、ブルゴニャ!!”
「ごめん。なに言ってんのか分かんないんだけど……、なに?この“低脂肪牛乳”ってのはミルクではないの?」
“ナッ!”
「じゃあ、こっちの“豆乳”なら――」
“ナァ?”
「あ、違うのね。えーっと、それでは、こちらの“雪印メグ○ルク”では――」
“ナッ!!”
「ああ、はいはい。オッケーなのね。じゃあまあ、こちらで――」 (注1)
*
「よいしょっと。ただいま」
『お帰りなさいませ。ミルクはありましたか?』
「見てよ、この子のお腹。――いーっぱい食べまちたもんねーー」
“ゲプッ。”
『満足されたようで何よりです』
「あ、そだ、それでさ」
『はい?』
「このポッドの自動翻訳ってウル――じゃなかった。このネコちゃんには使えないの?」
『調べたことはありませんが、アーカイブにデータがあれば可能なはずです。お調べしましょうか?』
「うん、お願い。きっとバアさんのことだからデータ取ってると想うんだよな」
『少々お待ち下さい。――これで如何でしょうか?』
「お、早いね。――どでちゅかー?なにか話してみてくれまちゅかーー?」
“ナン?”
「あれ?――変わってなくない?」
“ウナ?フニャウニャ、ゴニャン?”
『おかしいですね。生息域が違うのでしょうか?――これではどうですか?』
“ナ?フニャン?……ンゴロナーゴ。”
「変わらねえな――」
『暫くお待ちください。アーカイブを詳しく調べてみま――』
ブブッ。グオッ。シュン。
『――はて?』
「どした?」
『また新たな訪問者がありました』
「このポッドに?」
『周囲に張っておいたフォースフィールドを無視して直接入られたようですが――』
「誰だろ?バアさんかな?」
『いえ、遺伝子の形からどうやら地球人のようですが――』
カッ、カッ、カッ、カッ、カッ。
「あん、もう、ここの階段ってこんな急だった?ヒールじゃ上手く歩けないじゃない」
『あちらの方のようですね』
「どうも久しぶりね、NATZ。“あの人”はまだ来てないの?お父さんとお母さん……もまだのようね。あら?その子ってひょっとして“フェンチャーチ”?」
(続く)
(注1)
猫好きの方からお叱りを受けてもアレなので一応の補足。
牛乳の中には乳糖と呼ばれる糖が多く含まれていますが、いわゆる“普通の猫”の体内には、この乳糖を分解するための酵素 (ラクターゼ)があまり含まれておりません。
そのため、猫によってはこの乳糖を上手く消化吸収出来ず、下痢を起こしてしまうこともままあります。
ですので、ネコちゃんにミルクを与える際は、水で薄めたり、ちょっとずつ飲ませたり、最近では猫用の牛乳なんてのもあるのでそれを与えたり、同じメグミ○クさんなら、乳糖80%カットの『アカ○ィ』とかを与えてあげるのが良いでしょう。
え?だったらこのネコちゃんは大丈夫なのかって?――まあ“普通の猫”ではないようですから、大丈夫だと想いますよ、はい。