《銀河漂流ウラシマン(ディレクターズカット版)》第壱話:始まり。
ブー。
ザワザワ、ザワザワ、ザワザワザワザワ……。
えー、それでは、これより。本編開始に先立ちまして、樫山泰士制作の傑作短編 (自称)『銀河漂流ウラシマン(ディレクターズカット版)』の公開を開始させて頂きます。
こちらのお話は、全5話。文字数にして5200字ほどと大変読みやすいサイズとなっておりますので、まだご覧になられていないお客さま、または「前に読むのは読んだけど、どんなお話だったっけ?」と想われたお客さまは、この機会に是非、こちらの短編もお読み頂ければ幸いです。
それでは、本短編終了後、『時空の涯の物語』の公開と相成りますので、皆さまどうか、最後までごゆるりと作品をお楽しみ下さい。
ブーッ。
「じゃあさ、亀を助けたのは?」
「は?バカにしてんのか?――そりゃ、浦島太郎だよ」
「本当に?」
「歌にもあるじゃないか。“助けた亀に連れられて~~♪”って」
「って、みんなそう想ってるだろ?でもこれ、ちゃんとした歴史書にはそんな風には全然書かれてないんだ」
「歴史書?」
「まあ、そっちだと“浦嶋子”って名前になってるけどね。丹波国――今の京都辺りに住んでいた人らしい」
「それはなに?元ネタってこと?」
「まあ、そういうことだね」
「って言うか、元ネタあるんだ」
「僕が読んだのは『日本書紀』だったんだけど、それだと、亀は助けたんじゃなくて、釣りのついでに捕まえた事になってるんだ」
「釣りで?亀を?」
「まあ、食べられないこともないしね」
「いや、そうだけど…………助けるのとは真逆の話じゃない?」
「そう。だから『亀を助けたのは浦島太郎だ』って言うお前の答えは……?」
「あ、間違ってるのか」
「そう」
「あー、なるほ――え?いやでも、じゃあ、亀を助けたのは誰なんだよ?」
「へ?」
「お前の質問は『亀を助けたのは誰か?』だろう?誰も助けていないんだったら、そもそもの質問がおかしくないか?」
「え?…………あ、本当だ」
「まったく。クイズはもうちょっと考えてから出してくれよな」
「ごめん――」
「でもまあ、今の話ちょっと面白いよな。おとぎ話の別の側面が見えたって言うか」
「そうそう。しかもこの後さ、釣った亀が女に化けるんだぜ?」
「それは流石にウソだろ?」
「ウソじゃないって」
「亀が女になったら乙姫さまどうすんだよ」
「まあ、乙姫さま出て来ないし」
「は?」
「ってか、その亀女と結婚しちゃうし。太郎」
「へ?――ごめん。どこまでが本当の話?」
「だから全部本当だよ。歴史書通りだもん」
「じゃあなに?その亀女と結婚して終わりってこと?」
「いや、その後は蓬莱山って所に行って、仙人たちに会って来たらしいよ」
「あ、じゃあ一応、旅と言うか冒険的な事はするんだ」
「冒険的なって言うか……、更なる大冒険が太郎を待ってたりする」
「更なる大冒険?」
「そう。その亀女と一緒に宇宙を旅するの」
「……なんで?」
「ほら、カメ族ってさ、地球でも四番目に知性の高い生物だとされているじゃない?」
「……そうなの?」
「うん。イヌ、サル、キジ、カメ、カエル」
「人間は?」
「さあ?トップ10にはいないんじゃない」
「そうなの?!」
「らしいよ」
「それは……ちょっとショックかも」
「でもほら、イルカとかは歌も歌うし」
「いやまあ、頭が良いってのは聞くけどさ」
「で、まあ、そのカメ族の情報ネットワークに『地球破壊マデ後一時間デス』的な緊急破壊速報みたいなモノが流れて来た……って亀女が言うワケだよ」
「たびたびごめん」
「なに?」
「地球、破壊されるの?」
「うん。跡形も無く」
(続く)