5-1 なんだかんだで大団円
「月白、朝だよ。起きて」
名前を呼ぶ声に目を開ける。突然目の前に広がった真っ青な空。と思ったら、その空が綺麗な二つの三日月に変わる。
空、じゃない? えっ? 目? 人? まさか!
「天!」
「痛っ!」
慌てて起き上がった私と天のおでこがぶつかる。と、目の前でおでこを抑えるのは天ではなかった。天によく似た空色の目をした青年が、イテテ、と呟いている。
あたりを見回すと白い殺風景な部屋。あるのはベッドとたくさんの機械。よく見たら機械と私がいくつものコードで繋がっている。
起き上がった時に取れたのだろうか。いくつかのコードはぷらぷらと垂れさがっていた。
そうか。ここは王立研究院の研究室か。
この瞬間、私は烏羽にお願いしたことが失敗したことを悟った。誰にも知られず密かに回収して処分して欲しいと願ったけれど、結局は王立研究院に回収されてしまったのだ。これからモルモットとしての生活が始まるのだろう。
「おい! 天! 月白さんの機械からエラーが! って、えっ?」
部屋に飛び込んできた青年がその場で目を丸くして立ちすくむ。大きく見開かれたブルーグレーの目は私とは違って綺麗に澄み切っていて、銀色の髪に良く似合っている。
どこかで見た事のある気がしたけれど、それよりも青年の発した名前に耳を疑う。今、天って言った? 偶然?
「灰青、エラーじゃないよ」
灰青? あれ? どこかで聞いたような。
あっ、それって確か烏羽と一緒にいた少年?
えっ? でも目の前にいる二人の青年はどう見ても二十代半ばくらい。年齢が合わない。
「本当に再起動できたのかよ」
茫然とした顔のまま呟く灰青に天と呼ばれた青年が言い返す。
「再起動とか言わない! 起きたの!」
嘘でしょ。まさか。
「月白、時間がかかっちゃってごめんね。おはよう。体調はどう?」
「天なの?」
「うん」
「えっ? でも年が」
「月白はちょっとたくさん寝ていたんだよ」
「どういうこと?」
話が全く読めない。あの日、私は山小屋で活動停止したはず。それに何より。
「なんで天がいるの?」
もう二度と会えるはずなんてないのに。
私の言葉に天が真っすぐこちらを見つめて答える。その青は記憶の中の空色と全く同じで。
「絶対一人にしないって約束したでしょ? それに」
そう言って、天はがさごそと何かを取り出す。
「月白は俺のお嫁さんでしょ?」
柔らかくほほ笑む天の手の平にあったのは、かつてあんず亭に置いてきた銀色の髪飾りだった。




